表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/143

2 脱出作戦を決行したら

 少しの時間の後、俺たちは配置についた。

 俺は檻の中から、思いっきり叫ぶ。


「俺を此処から出せっ! 俺は無関係だ! 俺を出さないのなら、俺の母国が黙ってないぞ! 俺を此処から速く出せっっ!」


 俺の渾身の怒鳴り声に、部屋の扉が開いた。入ってきたのは、トッポとマルコの二人組だ。俺は入ってきた二人に怒鳴った。


「おいっ! 俺を此処から出せ! さもないと、ただじゃすまないぞ!」


 二人は顔を見合わせた後、俺の方を見てにんまり笑った。


「へへ、そんな檻の中にいて、ただじゃすまないだって? どうすまないんだよ?」


 俺を小馬鹿にするように、二人は俺の檻の前へ来て笑う。俺は両手を上げた。


「ん? なんの真似だ、そりゃ」


 俺の向かいにある檻から、シイファとニャコが音もなく檻から出てくる。と、二人はトッポとマルコの二人に、背後から力封錠をかけた。


「――え、あ!」

「うわ、こ、これは?」


 二人は気づいたが、もう遅い。二人の首に、しっかりとリストレイナーがはまっている。俺は檻からゆっくりと出た。


「これでお前たちは無力化された訳だ」

「え? 檻から出てる? お前たち、どうやって?」

「次はあんたたちが入る番だかんね」


 ニャコはそう言うと、両手を前にいるトッポに向けた。トッポの身体がぐんと引かれ、背後の檻の中に入り込む。シイファが右手に持った杖を向けると、マルコの丸い身体が檻のなかに転がりこんだ。俺はすかさず前に出て、両手を檻の鍵穴に向ける。左右の手から出てきた光の鍵が、檻の鍵をかけた。


「あ、くそ! 此処から出せ!」


 トッポが檻を開けようとしても、完全に鍵がかかっている。


「キィの能力は、そんな事もできるんだねぇ」

「……お前たち、手も触れずにこいつらを閉じ込めたな」


 俺の言葉に、シイファが応える。


「同じように見えるかもしれないけど、原理は別。ニャコは霊力を念動力に使った。あたしは魔法の力場を使ったの。本来は魔法の詠唱が必要だけど、魔晶石に刻印された法式で詠唱なしに発動できるから、同じように見えたの」

「なるほどね。――ところで、お前たちに訊きたい」


 俺の声を聴いて、トッポとマルコが眼を見開いた。


「ヴォルガってのは、どんな男だ?」


 トッポとマルコは顔を見合わせると、トッポが口を開いた。


「ヴォルガ隊長は、厳しいところもあるけれど、平民出身のおいら達を一人前に扱ってくれる優しい隊長だ」

「他の警護隊は貴族出身者が多いから街で飯なんか喰わないが、ヴォルガ隊長は街の顔なじみで、みんなに好かれてるし頼られてる。おれっちたちは、ヴォルガ隊長の下だから働けるんだ」


 マルコが必死の表情で続けた。やはりな。


「そうか…いい男なんだな。――おい、シイファ」

「なに?」

「こいつらが声を上げないように見張っててくれ」

「じゃあ――重圧」 


 そう言うとシイファは杖を二人に向けた。と、途端に上から重しを乗せたように、二人が地面に這いつくばる。


「ギュウ……な、なんで――」

「おとなしくしててくれ。ニャコ、ヴォルガは今、何処だ?」

「変わらず控え室にいるけど」

「俺が今から行って、奴を制圧する。それが終わったら出てきてくれ」


 俺はそう言って部屋を出ようとした。と、ニャコが声を上げる。


「あ、ヴォルガがキィに近づいたら、知らせようか?」

「そんな事もできるのか?」

「念話もできるよ! なにせニャコは、特級巫女だからね!」


 得意げに胸を張るニャコに、もう突っ込む気もなくなっていた。


「…それで、どうしたらいいんだ?」

「ニャコの絆帯(リンク)を受け入れて」


 ニャコが人差し指を光らせて、俺の額へと触れる。その瞬間、何かが入った気がした。


「…これ、俺の心の中まで読まれるんじゃないのか?」

「ううん。念話できるだけ。リンクを切りたいときは、そっちから切れるし。じゃあ、呼びかけてみるね」


 その瞬間、俺の脳裏に声が響いた。


“聞こえる?”

“ああ、聞こえる。なるほど念話か”


 どうやら俺の心まで読まれることはなく、聞かせようと思う声だけを届けられるようだ。


「キィ、これ持って行って。もう、あなたにあげるから」


 シイファが、火球の指輪を差し出した。俺はそれを左手の小指にはめると、ドアを開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ