表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/143

第十一話 謎の教団の糸口を掴んだら  1 隊員たちに総出で感謝されたら

 俺は四番隊の詰所を訪れていた。


「五番隊のキィ・ディモンだ。隊長たちはいるか?」


 俺は若い男に訊ねた。と、男は血相を変えて、俺に答える。


「ディモン殿! 今、隊長たちは在中です。お通り下さい!」


 若い隊員はそう言うなり、詰所の中に飛び込む。と、男は大声を上げた。


「ディモン殿がおこしだ! 全員、整列!」


 男の呼び声で、詰所の廊下の左右に隊員たちがずらりと並ぶ。四番隊は女性率が高いのが特徴だ。…は、いいが、何だ?

 最初に会った若い男が、俺に向かって直立不動の姿勢をとる。


「一班班長、ラッド・レルースです! 隊員を代表して、キィ・ディモン殿に感謝の意をお伝えします! セレス隊長、チルル副隊長を助けていただき、ありがとうございました!」


「「「「「ありがとうございました!」」」」」


 響き渡る隊員たちの声に、俺は驚いた。


「……セレスとチルルを助けたのは、俺じゃない。ニャコだぞ」

「それも承知の上です! 加えて、今回の作戦はディモン殿の助力なくしては成功しなかったものと理解しております! ありがとうございました!」


「「「「「ありがとうございました!」」」」」


 なんて真面目な奴らだ。警察学校の新入生を想い出す。

 俺は隊員たちに言った。


「判った。だが…ディモン『殿』はよしてくれ。ディモンでいい」

「承知致しました!」


 ラッドがそう言った後に、向うからチルルの姿が現れた。


「ディモンさん、ようこそなのデス」


 俺はチルルに導かれて、居間へと移動した。


   *


「チルル、その後、体調はどうだ?」


 席について、俺はチルルに訊ねた。チルルは苦笑しながら答える。


「もう平気デス。…というか、作戦の前後のことは何も覚えてないので、心配される理由が実は判ってないのデス」


 そう言いながら、チルルは甘いチョコレートケーキと紅茶を俺の前の差し出した。


「けど、ディモンさんたちに助けられた事は聞いてるのデス。とっても感謝してるのデス」

「あの時、チルルはテラー博士に胸から顔の半分ほどの霊体を斬り裂かれた。記憶がないのは、それが原因なのか?」


「霊体を傷つけると、一部の記憶が無くなることがあるのデス。わたしの場合は、ブラック・ボアに突入する計画をたてところまでは覚えてるのデスが、それ以降の記憶がありません。あと、今までの過去のことなどは全部覚えてるので平気デス」

「そうか。それならいいが」


 チルルはにっこり笑った後に、少し目を伏せた。


「むしろ心配なのは、セレス隊長の方なのデス」

「一応、人身売買組織ブラック・ボアを壊滅させたことで、褒章を貰ったじゃないか」


 俺がそう言うと、チルルは首を振った。


「セレス隊長は責任感が強い方なので、王子やわたしを危険な目に合わせたことを気にしてます。それに、王子が組織の主犯格と睨んでいたガリーシャ候を逃がしてしまいました。そして……信頼していた部下に裏切られて、隊長は落ち込んでるのデス」

「隊長思いだな、チルルは」


 俺がそう言うと、チルルは少し笑った。


「そもそもデスが……、セレス隊長の家、『黒の覇賢』ノワール家は、奴隷経済で財をなした家だったのデス」

「そうなのか?」


 俺は少し驚いた。チルルが話を続ける。


「先代のセバスチャン・ノワールがそういう人だったのデスが、セレス隊長はそういう父親のやり方に、ずっと不満を持っていた。そして政略結婚をさせられそうになるのを防ぐため、わざと見た目を悪くしたのデス」


 あのボサ髪眼鏡は、そういう理由があったのか。


「そうやって過ごしてきたのデスが、先代が急病で亡くなりました。家を継いだセレス隊長は、すぐに奴隷たちを解放しました。けど、それだけでは元奴隷たちが生活に困る事を知り、鉱山で再雇用する形で元奴隷たちの生活を支援したのデス。働く環境を整え、安全面にも気を使い、その事で逆に鉱山は生産性が上がった。それを評価したのがレムルス王子でした」


 レムルス王子か――慧眼すぎるだろ。


「王子はセレス隊長の手腕を評価すると同時に、奴隷制を廃止に持っていくために警護隊の四番隊を新設したのデス。元はヴォルガ隊が四番隊だったのデスが、家柄の格を考慮してセレス隊が四番隊とう事になりました。それが五年前のことで、ボウは設立当時からの隊員だったのデス」


「それが眼玉の組織からの二重スパイだったわけか……」

「ディモンさんは、眼玉の組織のことを御存じなのデスか?」


 俺は首を振った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ