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第一話

「奥様!元気な女の子ですよ!」


分娩室に助産師の声とともに赤ん坊の声が響いた。

スタンフォード公爵家 長女 アレミアの誕生だ。


スタンフォード公爵家とは古くからレイファ王国に忠誠を誓っておりその祖先は初代騎士団団長である。それから何代にも渡り騎士団団長または、官僚たちを送り出してきた由緒正しい家。


「お父様!退いてください!私の可愛い妹を見せてください!」


「アルフレードお兄様ずるいです!僕にも!」


「テオ!邪魔をしないでくれ!!」


元気な長男と次男が、僕が先だと言わんばかりに争い三男は静かにその様子を見守っている。争いを横目に抜け出した四男は母親の影に隠れながら……


「お母様、可愛いね……僕の妹……」


とベッドの柵に手を置き微笑んでいた。


「こら!お前たち。父様が先だ!どいたどいた!シルヴィアありがとう……好きだ……愛してるよ……」


「もう、あなたったら子供たちのいる前で。」


現当主である、ロルカ・スタンフォードは昔からの風習を嫌いスタンフォード家は自由で自分のやりたいことを追求すべきだ。と子供たちに教えたため息子たちは自分の家柄を気にせずに伸び伸びと成長した。長男アルフレードは博学才穎で次男テオドールは剣術の神童と呼び声が高く、三男オルクスは医学に関心を抱いており常に研究室にこもり四男マルシュロは文学に心奪われ将来は小説家を志望している。そんな個性豊かな息子たちのもとに新たな命が家族入りした。名前をアレミアと。レイファ王国の伝説の中にいる幸せを運ぶ渡り鳥の中の一羽の名前をアレミアと言う。草木、大地を潤しとても純白な体と長い尾はそれはそれはとても綺麗で、透き通った青い瞳をしていたと言われている。色んな人と出会い、色んな経験をして美しい女性になってほしいと言う意味から名付けられた。ちなみに名付け親はマルシュロである。


「よし!テオ!お父様が退いたから見れるぞ!」


「はい!お兄様!」


「せーので見るぞ!」


「「せーの!!」」


「ふっふ、ふぎゃー」


「こらこらアルもテオも大きな声を出すからアレミアがびっくりしてしまいましたよ。」


「「ごめんなさい、お母様」」


「お母様、僕、アレミアにいい子いい子したい」


マルシュロがそう声をかけるとシルヴィアは、アレミアを抱き上げマルシュロに近づけた。手を伸ばしアレミアの頭に指先が触れた瞬間マルシュロの体に雷が落ちた。


「(僕が、絶対に守る……例えお兄様たちが相手でも)」


「マルシュロ、、?あまり深く考えすぎないでね」


「僕、もう帰っていい?」


「オルクスは、いい子いい子しないの?」


「お母様、子供は甘やかし過ぎると頭脳の低迷と判断能力の低下それに……」


「わかったわ、わかったわ。でも、オルクス。赤ん坊の時期はとても短いのよ。もしかしたらもう撫でさせてもらえないかもしれないのよ?」


「する……」


「素直じゃないわね。ほら、」


「はっ……」


「オルクス兄様も気付いたの?アレミアは可愛いってことに。」


「うん。」


「あなたたち、それ以上撫でたらアレミアの髪が生えなくなってしまいますよ」


「それは、、大変だ!!」


「撫ですぎは毒……」


「オルクスもマルシュロも力を入れてるからだろ?」


「アルフレードお兄様、賢い!」


「テオ、当たり前だろ!」


「アルフレード、あまり調子に乗りすぎるんじゃありませんよ?」


「はい、お母様…………」


「俺はそれくらい自分に自信を持っている方が良いけどな」


「お父様!」


アルフレードはロルカの足に抱きつきロルカはされるがままに息子を許した。

それからの17年間は、兄たちに甘やかされ逆に過保護すぎる兄たちを心配になりアレミアは勉学に哲学に剣術に馬術と兄たちを助けられるような人間になることを決意し教育係の侍女や講師からこれでもかっと言うほど質問をし授業を入れた。


そして、アレミアの体の奥底に眠っていた魔物が目を覚ますことになった。


アレミアが授業中に倒れたのだ。


講師は、急いで医者を呼び 公爵家専属の医者の素早い対応によりアレミアの容態は安定した。原因はストレスや疲労で生まれ持っていた病の症状が悪化したというものだった。この日を境に剣術や馬術は禁止され授業も週に三日と決められてしまった。


「アレミア、また外を眺めているのですか?」


「お母様」


アレミアの部屋にシルヴィアが入って来た。

白を基調としたシンプルな部屋である。勉強机にはポイントをまとめられたノートやアルフレードが遠征した帰りにお土産として買ってきてくれた馬の置物にマルシュロのデビュー作の小説が置いてある。


「私はね、こうなるという可能性を捨てきれなかった。私の家がねこの病気を持っているのよ。強い子に産んであげられなくてごめんなさい」


「お母様も患っているのですよね?」


「ええ。私はお医者様からは微量と言われているけどいつ立てなくなるか分からない油断を許さない状態ね」


「お兄様たちは、、お父様の血を強く引いたのね」


「そうかもね。」


アレミアは、自分の母親のせいにはできなかった。

いや、したくなかった。遺伝だからと簡単に言えるがそれはただの言い訳で逃げなのだ。負けたくない。


「夜会にも行けないのよね」


「そうね。アルフレードが安心していたわ。あなたが元気でも行かせる気なんてさらさら無いみたいだから」


「過保護のバカお兄様」


「なんだって私の可愛い妹よ」


アレミアの部屋の扉の前に背中を預けアルフレードが両腕を組んで立っていた。


「今、オルクスがお前のために薬を作っているから」


「オルクスお兄様が、、」


「だから安心して眠っていろ。体を休めることが第一だ。それと母上、父上が探していましたよ。」


「それは、行かなければね。アレミア、また来るわね」


「はい。お母様」


シルヴィアが部屋を出ていくとシルヴィアの座っていた椅子にアルフレードが腰掛けた。


「早く元気になれよ。私もテオドールもオルクスもマルシュロも父上も母上も心配しているんだからな。」


「はい。ごめんなさい」


「謝らせたくて言っているのではない。一人で悩むなと言うことを伝えたいだけだ。私たちは家族だ。一生味方だ。苦しいなら助けを呼べ。辛いなら言葉をぶつけたっていい。」


「アルフレードお兄様……」


「長居してすまなかった。また、顔を出す。」


アルフレードはアレミアの頭を一撫でしてから部屋から出て行った。


少し気恥しくなり布団で顔を隠した。


「(誰にも見られていないけれど年頃の女の子にあれは反則ではないですか!?お兄様!!)」


翌日…………


コンコンッ


扉をノックされ「はーい」と答えると白衣を纏ったオルクスが水の入ったコップとともに果物やスープが乗っているトレイを持っていた。


「アレミア、痛いところや辛いところはあるか」


「少し喉が痛いです」


「部屋の乾燥もあるかもしれないな、わかった。

まず、スープや果実をお腹の中に入れて欲しい。」


ベッドの側にあるサイドテーブルにトレイを乗せオルクスが薬の支度を始めている間にアレミアはスープや果物を食べ始めた。


「食欲はあるんだな」


「はい、無理をして食べているのではありませんよ!食べたいから食べているのであって……」


「そこまで言わなくても分かる。嘘をついていないぐらい。」


「オルクス兄様、迷惑をかけてごめんなさい。そして、ありがとうございます」


「別に。はい、薬。一日三錠。間隔は6時間前後。」


「わかりました」


アレミアはコップを手に取り薬を飲み始めた。

口に入れたとき少し苦味を感じたが、匂いが残るほどではなく飲み込んでしまえば案外、あっさりしているものだった。オルクスは24歳にして国家医療施設医療研究長を務めている。普段は医療施設の自分の部屋にいるのだが、わざわざアレミアのために帰ってきてくれていたのだ。アレミアの病はまだ研究途中のものでオルクスは幼い頃からこの病の研究をしている。


「(一時的でも症状が治ってくれると良いんだが。)」


オルクスはアレミアが薬を飲み終えたあと、また夕食のときに来ると言ったあと入れ違いでテオドールとマルシュロが部屋を訪れた。廊下から何やらオルクスの声が聞こえたが二人の兄には聞こえなかったようだ。


「大丈夫かいって大丈夫そうだね、アレミア。」


「テオドールお兄様、マルシュロお兄様。」


「ね、アレミア。お兄様が本を読んであげようか」


マルシュロはベッドの柵に手を置きそこに顎を乗せ上目づかいになるようにアレミアを見上げた。


「はい!テオドールお兄様もいかがですか」


「俺はお前の様子を見に来ただけだ。元気ならそれでいい。何かあったら呼んでくれ。またな。」


「ではでは、どの本が良いかな?これはね……」


オルクスが部屋をあとにしたあとマルシュロはいくつかの本をバッグから取り出しアレミアに見せる。

アレミアは目を輝かせて一冊一冊丁寧に説明をするマルシュロを話を聞いていたら眠気が回ってきてついには寝てしまった。


「でね、そのあとに…って寝ちゃった。おやすみアレミア。」


マルシュロはイチオシの本を枕元に置いて静かに部屋の扉を閉めたのであった。


「どうだった?」


「オルクス、居たんだね」


「まぁな。アレミアはお前に一番懐いているからなだからお前の前なら弱ってるとこ見せてくれると思ったんだが、そうもいかなかったようだな」


「今は、ぐっすり眠っているよ。」


「20歳までもつかどうか不安だがな。」


「え、」


「母上から聞いた話だと症状が出た者は5年以内に死亡している。原因は心臓麻痺や心不全。毒性の強い遺伝型の病だ。俺たちは毒性が、少ないため発症を免れているが。けど何かがおかしいんだ。」


「何が?おかしいんだ?」


「昔から俺たち貴族は毒を少量飲み耐性をつけるが、アレミアには飲ませていなかったはずだ。なのに。ストレスだけが原因だと思えない。今すぐに侍女や執事に確認を取りたい。」


「わかった。アルフレードやテオドールにも伝えておく」


マルシュロは廊下を早足で歩いていく中、オルクスは

不穏な空気を感じていた。


「きっと毒を仕込んだ人間がこの中にいる。ただの風邪で終わるようなものなのに少し脈が早い。そして喉の腫れが一部ではなく咽頭全体に広がっている。」


オルクスは植物性の毒をアレミアが口にしたと考えた。静かに誰かが時間をかけて……。


「オルクス?」


「テオドール……」


「君の読みは合ってると思う。さっき厨房に行ってゴミ箱から白い粉が付いた袋を見つけたんだ。これはスズランの毒で合ってるよね?僕らの領地内にある毒性を持つ花はスズランしか無いからね。厳重に管理させていたはずなんだけど。」


「ごめんなさい。俺の監視が届いていなくて」


「本当に困った弟だよ。でも、弟の失敗を成功に導くのが兄貴の仕事だろ?僕に任せてくれ。」


「テオドール」


「お兄様と呼んでくれてもいいんだよ?」


「いや、テオドールはテオドールだから」


「アルフレードが余程怖いのだな」


「それはもう」


「まぁ、分かるよ。」


テオドールはそう言うとアルフレードにはこの話は届くと思うがなんとか言っておくよと手を振って去っていった。


…………………………………………………………………………

ここまで読んでいただきありがとうございます!

不定期更新になりますが、よろしくお願い致します。


キャラクター詳細


アレミア・スタンフォード 17歳

アルフレード・スタンフォード 27歳

テオドール・スタンフォード 24歳

オルクス・スタンフォード 22歳

マルシュロ・スタンフォード 21歳


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