第4話:あきらめが肝心、何よりも
「いつになれば学校に行くというのじゃ」
「……行かないのはお前らのせいでもあるんだが」
「なぜじゃ?」
凛香は朝食の味噌汁を片手に俺の答えを待つ。どうも本当に分からないらしい。
「こんな怪しい連中が3人もいる状況で、唯一まともな俺が家を出るとどうなると思う?」
「それはそれは平和になる」
平和な脳みその持ち主だな。今でこれだけ無法地帯なんだ、俺が抜けたその日にはもう……
Chaos! 全てが混沌となり、完全無秩序な世界になるだろう。というか現状、家に友達一人連れてくることは不可能だ。
「おぬし、学び舎から男を欺く術を持った女人を」
「無理無理、一般人にこんなの見せれるか」
「わしは尻尾を隠せばよかろう」
「そう、凛香はまだどうにかなる。この謎のガキである……とりあえず、ぬらでいいだろ。こいつはえたいが知れんが、見た目は普通の少年といった感じだ」
「なら俺は「てめぇが問題なんだよ!」
ネコミミ? そこじゃねぇよ、俺の家におっさんがいることが問題だっていうことだよ。ほとんどのクラスの連中は、親父が家にいないこと知ってるからな。
「本当にミケには厳しいのうおぬし」
「当然だ」
「俺がお前の父親代わりに「ならなくていいから死んでくれ」
洒落にならねえよ、あと親父死んでないからな。今もどこかで仕事してるからな。
「いいかてめぇ! うちにいることはもういいが、常に帽子をかぶっていろ。じゃねぇと耳と尻尾切り落とすから」
「オーケー了解だ」
おっさん、改め居候のミケ。どこからか帽子を調達してきてかぶった。なぜ麦藁帽子をチョイス? いや似合うけどさ。そのいかついガタイに、いかつい顔、立派な眉毛に三食の短髪。白いシャツに短パン麦藁帽子。稲の収穫してこいよ。
ピョコン、というかわいくも鬱陶しい音とともに、麦藁帽子を耳がつらぬく。
「どんな耳!?」
「すまん、こいつを隠すのは無理だったぜ」
「はぁー、ミケはもういいよ。ただまぁそれだと飾りの耳に見えなくもないし、それ被っとけよ」
それでぬらはどこだ?
「おいぬらー」
「おぬしの横じゃ」
「うおっ! 影薄すぎ!」
「影が薄いのではない、その子の術じゃ」
「わざとやってんのかよ!」
とんだいたずら小僧だ。
「……ぬらりひょん」
「分かってたけどお前も妖怪か」
もう驚きがないな。
確かぬらりひょんは、人の家に勝手のお邪魔して、勝手に飯を食う妖怪だったかな。図鑑では頭が後ろに長かったけど、本物はそうでもないのか。
まぁこいつはぬらでいいだろ。
「ぬらは消えるの禁止」
「……分かった」
「しかしぬらりひょんってのも性質の悪い妖怪なんだな」
「……僕の術は……まだまだ未完成」
「完成したらどうなるんだよ……」
「……どれだけ込み合った会場でも……目当ての物まで一直線……割り込みし放題」
性質悪すぎだろ、というかどいつもこいつもなんか妙なところで現代人っぽいな。俺の気のせいか?
「もういいや。飯が冷める」
思うことは山ほどある。だが全部言ってると俺の寿命が尽きるので、あきらめて受け入れてしまうことにしよう。これ以上ほんと誰も来るなよ?
という俺の願いは通じたようで、これからしばらくの間、俺の部屋で新たな超常現象は起きないで、人外の居候3人と、俺と母さんの5人での共同生活が続くことになる。