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第2話:狐娘の策

 冷静に考えると、困ったもんだなぁ。

 普通の居候の5倍は厄介な居候だぜこいつ。まぁ人間の姿なだけましか、尻尾は2本生えてるけどな。


 「えっと、凛香だったっけ?」


 「いきなり呼び捨てはどうかと思うがの」


 「凛香ちゃん」


 「馴れ馴れしい」


 「凛香さん、いや待て。お前居候だし」


 「おぬしこそ自分の置かれた状況をよく考えてみろ。こうして一夜を過ごした時点で、すぐにでもロリコンのおぬしを社会的に殺すことができるぞ」


 そうなんだ。なんだかんだ一日が終わって、今はこの鬱陶しい狐が俺の膝を枕にして現れた翌日の朝ということになる。

 こいつは態度がでかく、性格が捻じ曲がっている上に、いつでも俺を殺せるという、非常に困った居候なのだ。その上俺をロリコン扱いする。

 どっちかというと年上が好みだってのに。


 「まぁまぁそれはいいとして、お前の親はどっかにいるのか?」


 「わしの母上は、天上界で神職についておられる」


 「神職というと、神様ということか?」


 「まぁそうなる。九尾の狐は最高位の妖孤じゃからな。その力は神と同等といっても良いほどじゃ」


 親が神様っつーのはどういう感じなんだろうな。俺には縁がない話だ。


 「親父さんは?」


 「ただの下界の人間じゃ。母上が下界をぶらついていたところ、襲ってきた人間だと聞いたが、どういうわけかそいつと一発やったそうじゃ」


 「まぁ伝わったけど、何でそういう言い方なんだよ……」


 お前何時代の人間だ? いや人間じゃないのか。

 でも親父が人間なら、娘であるこいつにも半分は人間の血が流れているということだろうな。


 「疑問なのじゃが、おぬしは学び舎には行かぬのか?」


 「いいんだよそれは。とにかく居候の相手をするほうが大事だ」


 「それは違う気もするがのぅ」


 違わないって、学校とかいく意味ないし。つかなんでロリコンを知ってるやつが、学校のことを学び舎っていうんだよ。


 「じゃあ本題だけど、お前は何をしたいの?」


 「立派な妖孤は人を欺くことからじゃ。人間の男をだませなくて、九尾の狐にはなれんのじゃ」


 お前の母さんは、人間の男にうまいこと騙されたんじゃないの? 勢いで一発やってしまったんじゃねーの?

 まぁそれはいいとして、男を騙す術。それがこの女っ気のないただの高校生である藤純弥との生活で身につくとは到底思えないのだがな。


 「おぬしの周りに、そういうことに長けた女人はおらんのか?」


 「そうなるのか。いないでもないけど、クラスのやつだ」


 「連れて来てもらえるかのう?」


 「無理だ」


 「草食系っていうやつじゃのう……」


 俺にクラスの女子を家まで連れてくる技量と度胸は備わっていない。

 彼女いない暦と、年齢がまったく同じ男子高校生をなめるなよ。


 「う、うるせぇな! ちょっと哀れみの目で見てんじゃねぇ」


 「世も末じゃの。こんな度胸のないちんけな男が一家の長男とはのぅ」


 「ガツガツ行くやつはこれからの時代無理なんだよ」


 「わしの父上などは、人目も気にせず強引に母上に迫ったと聞くがのう」


 多分だけど、そいつは男らしいのでも肉食系でもなくて、犯罪者だと思う。


 「まぁ致し方ないか。チキンはいつまでもチキンじゃ」


 「このやろ……好き勝手言ってくれるな」


 「わしが学び屋に行くというのはどうかの?」


 「お前はどう見ても中学1年か……下手すれば小学生だぜ?」


 「若々しいと?」


 「若すぎだぺたんこぐふぉぉ!」


 何がおきた? 景色がゆがむ。そして時間がゆっくりになり、再生される俺の過去。

 おぉ、去年死んだおじいちゃんが、こっちを見て笑っている。


 ガツン! とすごい音。多分机の角で頭打った。


 「イテェ!」


 「言葉に気をつけるのじゃな。少女の心は繊細なのじゃ」


 乱暴にふっ飛ばしやがってなにが繊細だ。

 この国で高校生一人を吹っ飛ばせる輩を、少女なんて言わねーよ。

 別に余計なことしなくても、あと5年もすれば黙っていればあほな男はふらふらついてくると思うけどなぁ。ま、黙っていればだがな。


 また景色が……

 

 「イテェ! なんでだ!?」


 「いま失礼なことを考えていたじゃろう」


 なんつー勘の鋭い……


 「それでじゃ、どうすればいいと思う?」


 「今のままじゃ騙せるのはせいぜい変態ロリコンやろうくらいだ」


 「おぬしを騙してものぅ」


 「いや、うるさいから。言っとくけど俺年上好きだし」


 「と、いうと?」


 「25くらいかなぁ……いや別に30代でも……じゃねぇよ! 話しそれてるから」


 何を話してんだよ俺は。


 「……おぬしのその妙な性癖を直すためにも、へたれを直して度胸をつけるためにも、もちろんわしのためにもおぬしに一肌脱いでもらうしかあるまい」


 「やれやれ、俺の裸をご所望か?」


 「いや、おぬしにそんなもの求めておらん」


 そんなもの言うな!

 それよか妙な性癖ってまだロリコン疑惑晴れねぇのかよ。まぁへたれはいいだろう、事実だし……


 「……冗談じゃ」


 それはどの辺りからどの辺りまでが冗談という意味だ?


 「まぁ自分の事でもある。わしも自分なりに考えてみよう。だからおぬしにも協力してもらえると助かるのじゃが」


 「……どうした? まともなことを言うじゃないか」


 「お願いできるかの?」


 「しかたねぇな、やってみよう」


 「言ったな? 先日おぬしは男に二言はないと言ったはずじゃ。是が非でも連れてきてもらうぞ」


 ぐはぁ……

 やられた、これから男を騙そうって言ってたやつに、いきなり騙された。しかもまだ小娘サイズのぺたん……ではなく幼い狐ごときに。

 まさかこれがツンデレか? 突然頼られるというハプニングに動揺していたのか俺はっ!


 そういえば俺はさっきこんなことを言ってしまったはずだ。

 

 『今のままじゃ騙せるのはせいぜい変態ロリコンやろうくらいだ』


 やっちまったよ……

 つか明日どうしよう。あんなやつ家に連れてこれるかなぁ……

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