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8話 頼と羽乃ちゃんか、珍しい組み合わせだな!

夢を見た。


大事なことなので、もう一度言っておこう。

夢を見た。


これは、夢だ。


くれぐれも、現実と重ねてみてはダメだ。


そうしたら、いよいよ僕は青春を謳歌することを諦めてしまう気がする。




僕に幸福にも彼女ができた。


可愛い笑い方に、無邪気な性格。


整った容姿に、誰が見ても文句無しというような性格。


極めつけは、その謙虚さ。


広い心で僕を抱擁し、慰める。


時に、彼女を僕が助け、時に僕が助けられる。


そんな、関係。


素晴らしく幸せで、最高の日々。


でも、何か足りない。



そんな、生活のあるデートの帰り。


夜景の見える展望台で僕達は、初めてのキスをーーーーー



と、思ったら彼女が倒れた。


最初は僕に寄りかかったのかと思ったが、そうでは無いらしい。


彼女は、全身の力が抜けていた。


どうしたの?と聞いても返答は無い。


そこで意識が、無いことに気付いた。


少し肩を揺らしていたが、ふと、手に違和感を感じた。


手を見て、震えた。


僕の手に鮮紅色のドロリとした液体が付いていた。


胸の中の彼女は、段々と体を冷たくする。


何が起こっているか分からず、ただ、ひたすら彼女に返答を求める。



そして、聞こえた。


答えたのは、彼女とは別の声。


何度も聞いた、少女の声。


僕が望んだ人とは違う、少女の声。



「迎えに来たよ?おにぃ〜ちゃんっ!」



僕の視線の先に赤く染まった包丁を持ち、服に返り血を浴びた羽乃がいた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ハッ?!」


目が覚める。


なんだか、凄い不快な夢を見た気がする。

不快というか、根源的恐怖を感じるような……。

息が切れる。


呼吸が苦しい。



「おっはー!起きた?」



羽乃が、部屋に入ってくる。


何故、お前は僕の部屋に平然と入る…。


それが、日常になってしまっていることに焦燥感を覚える。


今は、そんなことより、息が苦しい……。



「大丈夫?凄い辛そうだよ?」


「大丈夫だ。少し悪い夢を見ただけだ、」



熱計った方が良いって!とか、言いながら羽乃は、居間に走っていった。


何の夢を見たんだっけな……、思い出せる気がするが、脳が思い出すことを拒否しているので思い出せない。

というか、思い出さない。




結局、熱なんて無くて、いつも通り二人で家を出る。


義父さんが微笑ましいものを見るように僕達を見送っていた。


なんだろう、


この、相手の親に認められちゃったけど結婚する気は無いんだよなー感。



「ん、そういえばお兄ちゃんって、部活決めたん?」


「いいや、まだだ。」



僕にとって、常に山積みな問題の中で、羽乃の存在の次に頭を悩ませてるのが、部活決めだ。


結局、色んな部活の体験入部に行ったのだが、どれもこれもピンとくる物が無かったのだ。



「羽乃は、何か良い部活見つかったのか?」


「うーん、無いかなー……」


「そっか、」



まぁ、羽乃が良い部活を見つけたとて、その部活に入るとは思えないが、


おそらく、良い部活は見つけたが、言い出せないのだろう。


どうせ、良い部活を見つけても僕がその部活に入らなければ、羽乃は決してその部活に入ることは無い。


でも、僕は羽乃に好きな部活に入って欲しい!


その上で、僕に天才的な考えがある!



「羽乃が良い部活見つけたなら、その部活に一緒に入っても良いんだけどなぁ〜」



これぞ、羽乃に入りたい部活を強制的に吐かせて、僕はそこに羽乃が入ることを全力で後押し。


そして、僕はさりげなーく違う部活に入る!


名付けて!

……いや、別に名付けなくても良いか、なんか名付けると失敗する気がする。


まぁ、この作戦は完璧すぎるから、失敗なんてしないと思うが……ふふふ


さぁ!聞かせろ羽乃!


お前の入りたい部活を!



「ふーん、」



……。



え?


それだけ?


ふーん、で終わり?


僕の一世一代の大作戦を、ふーんで終わらせるのか?



「え?入りたい部活無いの?」


「……ん?うん、さっきから、そう言ってんじゃん、」



あ、これ本当に入りたい部活が無いやつだ。




そんな、いつものような会話をしながら、僕達は学校へ向かう。



僕達が通う学校までは、家から徒歩で約20分程。


家から近いという理由で選んだ学校だが、県内ではトップレベルの学力を誇る高校だ。


そりゃあ、部活と勉強に全力で取り組み、高校という青春の舞台を掴んだ訳よ……。


それなのに、それなのに……。


今思うと、僕が高校を決めてから、羽乃が同じ高校を志願すると言った時に、違和感を感じていれば、どうにかなったんじゃないかと思う。


でも、その時は羽乃とは、ほぼ喋らなかったから違和感なんて微塵も感じなかったんですけどね。はい。




学校に着いて、教室に向かう途中で、声をかけられた。



「ん?頼じゃん!」



いきなり名指しで呼ばれたから、誰かと思ったら友人の朋也だ。


同じ中学から、同じ高校に上がった唯一の友人だ。


そういえば、居たんだコイツ。


色々、忙しすぎて忘れてだぜ。


ちなみに、僕が「私、お兄ちゃんと結婚する」発言のときに、親にサインを貰う必要があった書類についてメッセージで聞いてきたのはコイツだ。


まぁ、同じクラスじゃないと、話さないもんな……。


ん?


同じクラスでも、女子とは話せないじゃないかって?


ハッハッハ、こりゃあ一本取られましたわ!



「ああ、久しぶり朋也」


「おお!おひさー!てか、頼と羽乃ちゃんか、珍しい組み合わせだな!」



通りかかった隣クラスの人間や、たまたま同じ教室に向かっていたクラスメイトが、驚愕した表情で、は?何言ってんのコイツ、みたいな顔で朋也を見る。



おぉ、そうか!


コイツは、僕と羽乃が、あまり関わっていない時の関係を知っている数少ない人物だ。


使える!


「お前ら兄妹なのに、話してる所見たことねぇから、仲良くないのかと思ってたわ!」



兄妹?なんて、疑問の声が後ろからした気がしたが、よく考えてみれば朋也を使えば,僕らが付き合ってなんかいないことを証明できるのでは?



「こんにちは、朋也さん!」


「お、おお。元気だね、こんにちは、羽乃ちゃん!」



若干、焦っているのか羽乃が、朋也に話しかける。


それに羽乃と話したことの無い朋也は、少したじろく。


なんせ、羽乃は可愛いからな、いきなり話しかけられたら誰でもたじろくものだ。



「いつも、ウチの頼がお世話になってます、」



は?別に僕は、朋也にお世話になった覚えは無いが?


むしろ、僕が朋也のお世話してるまである。

てか、お世話してるってなんだ?



「ああ!お世話してるぜ!」



は?


お前もなんで、その意味の分からない日本語を使うんだ?


これが、もしや俗に言う混沌(カオス)?!



「実はですね、ここだけの話。私と頼くんは、家族じゃないんですよ、」


「え?!そうなの?!」



なんで、コイツは、いちいち反応が五月蝿いんだ…。



「あ、正確には家族ではあるんですが…兄妹では無い、と言いますか。」


「なるほど!なるほど?ふんふん、なるほど?わからねぇ、」



おい、羽乃も紛らわしい事、言うな。


朋也の頭の中が、クエスチョンマークでいっぱいになっちゃうだろ!


ただでさえ、馬鹿で、奇跡的にこの学校に受かったような奴なのに!



「だから、あまり私達の関係については、言及しないで欲しいと言いますか、」


「なるほどな!お家の事情ってヤツだな?わかったぜ!任せな!」



何?


丸く収められただと?



「あ、そういえば!頼は、部活決めたんか?」



話が変わってしまった。


どうにか、さっきの話に戻して、誤解を……



「い、いいや、まだだが?そ、そんなことより……」


「バスケやんねーの?」


「ああ、やらないが…」


「そっか……入る部活なけりゃ、バスケ来いよ!」



そうだ。


コイツは、中学で同じバスケ部員だった。


そうだな、朋也の事を簡単に言うと、バスケバカって感じだな。



「じゃあな!」


「え、あ、ああ」



行ってしまった。


嵐のような奴という言葉は、朋也の為にある気がする。


どうしよう誤解を解かなくちゃ……



こんな長い間、羽乃の手のひらで転がされてたら、いよいよ僕は妹と結婚ルートしか道が無くなる。


どうにかしないと




なんて、思うが、何をしても変わらない気がしてならない。



「はぁ、」



ため息を吐く。


羽乃が、僕を見て少し微笑む。


やはり、策士だ。


僕と結婚する為に、全力で頭をフル回転させてる……。


微笑む羽乃を見て、少し呆気に取られる。


なんで、毎回羽乃を可愛いと思ってしまうのだろう。



僕は、もしかしたら心のどこかで羽乃と結婚することを認めてしまっているのかもしれない。


いや、そんなことない。


それを認めたら、いよいよ僕は……いよいよ、




ーーー僕は、どうなってしまうのだろう。




やめよう。


考えたって、無駄なことは世の中には沢山ある。


僕は、絶対に高校生活を謳歌してやる!


いいね、ブックマーク、しないと出られない部屋に君は監禁されました。◯◯しないと出られない部屋的な感じ。あ、ログインしてない君もログインして、ブクマしないとだよ??

(2023,7月9日、加筆修正済多分)

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