34話 ダンボール運びRTA
「なんか、今週中、孤児院の方で手伝いが欲しいらしいの。」
ある日の夕食中に、羽乃が唐突に切り出した。
……いやぁ、孤児院かぁ、行きたくねー
行きたくない理由は様々だが、一番は……
娘さんを僕にください事件を思い出すからだ。
うーん、黒歴史。
「それは僕も行くのか?」
「来たかったら、って話だよ」
よし!それなら行かん!
行かないよりの、行かないだ!
行かないからなー!!絶対に!
ーーーーーーーーーーー
「ありがとねー、来てもらっちゃって!羽乃ちゃん!頼くんもね!」
「……」
「困ったらいつでも呼んでください!助けに来ますから!ね?頼!」
「あ、あぁ」
孤児院の入口で、僕と羽乃を出迎えたのは、少し小太りのおばさんだった。
この人は、西条さんという人で、孤児院では母親的な立場の人だ。
んな、ことぁ、どうでもいいんだよ!
どうして、僕はここにいるんだ!?
今日は三者面談期間で、早帰りだったのだ。
それはいいとしよう。
問題はここからだ。
学校の帰りに、羽乃が寄りたい場所があると言ったので、特に何も考えずに着いてきたらいつの間にか、ここにいたのだ。
今日は涼しいから、羽乃に付き合ってやるかぁ、なんて思っていた過去の自分を恨む。
策士羽乃は健在だ。
……いや、今回はその策を防げた気がする。
僕が馬鹿だっただけだな……。
「久しぶりね、頼くん。」
「あ、はい。ご無沙汰しております」
ははは、なんて乾いた笑いが漏れそうな気分だが、西条さんはそんなことは、つゆ知らず僕に色々話しかけてくる。
その大半は、羽乃との関係の質問や、羽乃に優しくしてあげろ云々。
そんなこと言われなくても羽乃に、優しくしてるぜ!
とは、言いきれないので、ありがたいお言葉として受け取っておく。
相変わらず、西条さんの声は落ち着く声だ。
母親がいたら、こんな気分なのかもしれない。
「ところで、今日、山岸さんは?」
羽乃が西条さんに聞く。
確かに、あやつの顔を今日は見ていない。
僕の予想的には、僕たちが来たら、すぐに顔を見せると思っていたのだが……。
「あー、ご主人様なら、今日は棚木くんの所に行ってますよ。」
「棚木?」
僕はもちろん、羽乃も、棚木くんとやらを知らないようで、首を傾げる。
「ほら、三者面談期間でしょ?」
「ん?」
「棚木くんの三者面談に行ってるんですよ。」
「あ、あの西条さん?」
羽乃は少し、おずおずと低く手を挙げ、言う。
もしかしたら、羽乃からしたら知らない方がおかしい人の話を、しているのかもしれない。
ちなみに僕は、初めて聞いた名前だ。
「棚木くんって誰?」
「あら?知らないの?ここにいる、貴方たちと同い年の男の子よ。確か、同じ学校でしょ?」
「……」
少し背筋が凍るような気分だ。
これは羽乃も同じ感情だと思う。
というのも、僕の娘さんを僕にください発言は、この孤児院の子供たちはみんな知ってるのだ。
描写はしていなかったが、今も西条さんの後ろで健太(10歳)という少年が、娘さんを僕にくださいの歌(作詞作曲・健太くん)を歌っている。
僕が適当に無視していたら、調子に乗って、僕のあの黒歴史を真似をするようになったのだ。
ちょこちょこ、この孤児院にはお邪魔する機会があったのだが、回を経る事に、僕への煽りは増している。
まぁ、まだこんなの可愛いもんだ。
それはそうと、これがどう関係していくかと言うと、その棚木くんが、僕の痛い発言を学校の皆に言いふらす可能性があるということだ。
「待って……。確かに、私と同い年の男の子が一人いた気がする……」
「気がするんじゃなくて、いるのよ?」
羽乃の発言をボケと受け取ったのか、西条さんは笑いながらそれに返す。
顔面蒼白とは、今の羽乃みたいなことを言うのだろう。
いや、僕も同じか。
てか、羽乃知らなかったのかよ……。
まぁ、僕にしか興味無いもんねっ!
「男の子とか、頼以外興味無いから……」
あの……復唱やめてもろていいすか。
恥ずいんで……
頭を抱え込んでしまった羽乃にかわって、僕が質問する。
「ちなみになんですけど、僕と、その棚木くんってのは会ったことなくないですか?」
「あー、確かにそうかもね。棚木くんは基本的に部屋に篭ってるか、お友達と遊んでることが多いからね。」
……うん。ちょっと、厄介かも。
「まぁ、こんなところで立ち話もなんだから、中に入りな。」
「あ、はい。失礼します……」
……やめた。
余計なことを考えるのはやめよう。
孤児院で手伝って欲しい、ということを、さっさと終わらせて帰ろう!
「えっと、そろそろ手伝いとやらを……」
「あー、それならーーー」
どうやら、話は終わりそうだ。
さっさと終わらせて帰ろう!
ね?羽乃!
羽乃の方を向くと、僕の考えをを理解したのか、コクコクと頷いている。
「ダンボールを運んで欲しいの。」
「「任せてください!」」
例の棚木くんが帰ってくる前に、早く帰りたい僕たちの、ダンボール運びRTAが幕を上げた。
「ただいま、」
「あ!パパ!サキ兄!おかえり!」
「おかりなさい、ご主人様、棚木くん。」
そして、幕を下ろした。
そして、僕は絶句した。
西尾維新様とか時雨沢恵一様みたいな文を書きたいけど、毛色が違いすぎて話にならんw




