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32話 インスタントコーヒー

新学年が始まって、最初の休日。


いつものように、特にすることなんてない僕は、勉強なんかもする気にならず、リビングのソファでスマホを見ながらくつろいでいた。



お昼を過ぎた頃だろうか、突然インターホンが鳴る。


来訪者には思い当たる節がある、考えると思わずため息が出る。


すっかり暖かくなったが、来訪者を見た僕の背筋を冷たい風が通り過ぎる。




インターホン越しに見ただけだから、今なら居留守を使える!

ふはは、俺の勝ちだ!対あり!



「だれー?……あ!」



背後にいつの間にかいた、羽乃がインターホンを後ろから覗き込んでくる。


来訪者を確認してから、直ぐに玄関の方にパタパタとかけていく。


…………あのぉ、僕のいない時に、、、来てもらっても?




「お邪魔するよ。」


「こんにちは!山岸さん!」




来訪者こと、山岸は玄関で迎えた羽乃と、その少し後ろにいた僕の顔を交互に見たあと、何か満足そうに頷いた。



……なんなんすか?

この人。



昔の僕と山岸の関係を知ってる人からしたら、想像も出来ないだろうが、今の山岸は前とはちょっと違った意味でヤバい。



昔はなんかお堅い感じで何を考えてるか想像もできない感じだったが、今は……




「やぁ、仲良くしてたかい?」


「うん!」




どうヤバいかって?



……思考が羽乃より羽乃なのだ。



どういうこと?と思った人に説明しよう。

いや、説明するより、山岸の発言を直接聞いてもらった方がわかりやすい気がする。



「ところで、学校はどうなんだ?羽乃から目を離さないで生活してるかい?羽乃の未来の夫としてだなーーー」



以下略。

完全に、面倒くさい系後方父親面腕組みおじさんと化している。



ことある事に何かに口出ししてきて、酷い時には、「私の目の前でキスくらいして見せろ」とわけわかめな要求してきたりという無茶苦茶具合だ。


ちなみに、これは山岸の前で結局キスする羽目になった。今でも黒歴史だ。思い出すだけで、3回くらい屋上から飛び降りたくなる。




それに加えて、このような無茶苦茶さが、羽乃からしたら願ったり叶ったりのため余計面倒くさいのだ。

あと、羽乃と山岸の思考回路が、とてつもなく近いのだ。


なんなら、羽乃の考え=山岸の考えの二乗×2πって感じ(?)




「それがさぁ、山岸さん!(らい)ったら、私と同じ文理選択にした過ぎて、先読みしすぎて私と違う方になっちゃったんだよ?」


「ん?どゆことだ?ということは、同じクラスどころか……」


「うん、もう受ける授業も違うの……」


「うなっ!?」



何がうなっ!?だよ…音街かよ…



僕は、そのツッコミどころ満載の2人の会話を無視して、お湯を沸かしてコーヒーを入れる。



コーヒーってのはインスタントでも結構、味がしっかりしてるのが多くて、僕は好きなのだが、山岸はどうも口に合わないらしく、わざわざ自分でコーヒーを作るためのフィルタやらなんやらを買って、僕の家に置いている。



てか、毎週のように家に来る山岸だが、暇なのだろうか。


そもそも、僕と羽乃の関係を応援してるなら、週末こそ2人きりにするべきだろう。



僕は淹れ終わったコーヒーを持って、リビングへ行く。

山岸の前にコーヒーを出す。




「それは、ホントなのかい!?」


「……なにがですか?」




さっきの話から話題は変わっていたようで、いきなり僕は山岸に同意を求められた。


だが、聞いていないからには答えることはできない。




「頼からお昼ご飯を誘ったというのは!?」




あー、そのことか…



ちらり、と羽乃の方を見ると、なんだか誇らしげに小さな胸を張っている。

まぁ、可愛いから一切イラつきはしないが、なんだかなんとも言えない気分だ。




「ええ、まあ。僕から誘いましたよ」


「……くっ、」




僕の同意を確認すると、山岸は涙をこらえるようにハンカチで目頭を抑え始める。



ん?なんなのコイツ?


どこの視点から見てんの?


いや、コイツとか言っちゃったよ、生活費用とか支えてくれてる人にコイツとか言っちゃいましたよ。




「僕は良いことを聞けたし、そろそろ帰るよ、」


「え?もう帰るの?」




羽乃が寂しそうに言う。


羽乃の場合は本当に悲しいのだろう。


僕はさっさと帰ってくれた方が嬉しいのだが、明らかにいつもより帰る宣言が早い。



何かあったのだろうか。




「いや、今日はもともと、そんなに長居するつもりがなかったんだ。コーヒー淹れて貰ったのに申し訳ないな、自分で飲んでくれ。」


「あ、はい。」




そう言って、山岸は立ち上がり、帰って行った。




「ちょっと寄っただけ、って感じ?」




羽乃が首を小さく傾げる。


なんか僕の意見でしかないが、山岸は自分の気が済んだら帰っている気がする。

キスの時もそうだが、僕が羽乃の頬にキスしたら、満足したように、用事を思い出したと言って帰って行ってしまった。


あの後の空気の地獄さと言ったら、他に例を見ないほど、辛い雰囲気だったんだぞ……。




僕は、山岸が飲まなかったコーヒーを一口、すする。





うーん、やっぱりインスタントと対して変わらないな……。



何かありそうで何も無い、一日の中のほんの一コマ。

何か意味がありそうで、でも何も無さそうで、こうして日常は今日も過ぎていく。


実は僕、アレルギー多くて、コーヒーも飲めないんすよねー

好きなんすけどねー味自体は。

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