30話 依存
「あー!もうっ!」
羽乃が包丁を振り下ろすと共に、真っ赤なトマトが黄色の液体をぶちまけながら、2つに割れる。
トマトって、フロムゲーの敵キャラで出てきても違和感なさそう……なんて思いながら羽乃が思いのままに料理するのを僕はリビングから椅子に座り、見ていた。
学校初日は無事(?)に終わり、少し時間的には早いが我が家は夕食の準備だ。
いつものようにキッチンに立った羽乃は、いつもとは違い、殺気立っている。
普段から少しでも羽乃を手伝おうと心がけている僕は、いつもの通り、手伝おうか?と紳士的に聞いたのだが、今日は「大丈夫だ。問題ない。」と断られた。
いつもは雑用でもなんでも、結構頼まれがちだが、羽乃が何もしなくていいと言うなら、僕にできることはない。
うーん、日本の縮図……。
しばらく経つと、一度キリが着いたのか羽乃が僕の目の前に来た。
そして、言う。
「これは家族会議だよっ!!」
「……なにを会議するんだよ…」
予想はつくが、一応聞いてみる。
「なんで頼が文系に行ったのかって話だよ?」
「てか、羽乃こそ国語得意なんだから文系だと思ったんだけどな……」
朝は将来のためとかなんとか、と言った。
勿論それも1つの理由だが、羽乃が来る方を予想して文系にしたというのも本音だ。
「だって!頼って数学しかやってるイメージ無かったし!」
「いや、それは数学が出来ないから、多くの時間を費やしてたってだけなんだが、」
「そっ!んっ!なっ!」
羽乃は、そのまま卒倒してしまいそうな勢いで上を向き、言った。
なんか可愛い。
「てか、ホントに学校では関わりが無くなりそうだな。」
僕が言うと、羽乃はぐりんと首を回し、僕の方を凝視する。
羽乃の目には心做しか涙が浮かんでいるように見える。
それ見ると途端に、自分の先程の発言を取り消したくなってきた。
羽乃の目は、なんでそんなこと言うの?みたいな目で訴えかけてくる。
「ご、ごめん。なんか、ごめんなさい。」
「……いいよ、ホントのことだし、、」
羽乃がこんなに落ち込んでいるのは、父さんが死んだ時以来な気がする。
いやっ、重!
僕と会えなくなる訳でもないのに、重大なことと捉えすぎでしょ……。
「今日も、休み時間に頼に会って、その余韻で残りの時間を過ごそうと思ったのに……」
うん。休み時間の度に来たね。
わざわざ、離れた教室から。
「……私、頼がいないと生きていけない気がするの!」
「……ナチュラルに結構やばいよ、その発言。」
僕の呟きは、羽乃の耳に届いたはずだが、華麗にスルーされた。
「……まぁ、毎時間休み時間の度に来てたら忙しくなるだろうから……」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「……えっと、昼ご飯は一緒に食べるとか?」
「えっ!?いいの!?」
「ん、ああ…」
これは同じクラスだった時もしていたが、勝手に羽乃が来ていただけだ。
僕から誘うというだけで、羽乃からしたら別物なのだろう。
それを聞いた羽乃はホクホクした顔で、キッチンに戻っていった。
こうして僕の貴重な昼休みは、無くなったのでした。
と言いたいところだが、僕も羽乃が居ないのは少し寂しく思っていたところだ。
丁度、良かったと言えば、丁度良かった。
でも、たぶんこのままじゃ良くないという感情は、薄々、僕の心の中でモヤを残して渦巻いてる。
羽乃は見ての通りだが、僕も羽乃に依存しすぎている傾向がある。
その悪い例が、今日の羽乃だ。
でも、それでも、僕は今日も今日とて、そんなことは考えないように、羽乃との生活を謳歌する。
僕には、羽乃が僕から離れていくことが想像できない。
そういう点では、羽乃より僕の方が危ない状態なのかもしれない。
久しぶりの執筆だったので設定ガバいかも。違和感があったら、是非誤字報告とかしてくら(だ)さい。
てか、なんだかんだ二ヶ月ぶりとか。




