29話 友達を作る話
『友達』
高校に入ってからというもの、僕にそういう類の知り合いができることは無かった。
と、いうのも、僕には常に羽乃が付き纏い、空気を読んでか、嫉妬心か、周りの男子は僕に話しかけてくることは少なかった。
最初こそ、僕に興味津々だった陽キャ達も、僕がテキトーにあしらう内に、消えていった。
まぁ、羽乃もあんまり友達作ってるイメージなかったし、気にならなかったのだが……
「唐草頼です。1年の時は3組でした、是非友達になってください。」
僕がそう言って、頭を下げると、パラパラと拍手が鳴る。
うーん、微妙な歯ごたえ……
中学の時は友人を少しでも多く作って、なるべく一人にならないように、仲間を作って安心しようとしていたのだが……
羽乃に付き纏われてからというもの、意外にも独りを好むようになってしまって、友達を求めなくなってしまった。
まぁ、羽乃が側にいてくれたから、寂しく感じなかったというのもある。
でも、2年は僕と羽乃の思い違いで、なんと文理選択で違うクラスになってしまった。
僕も羽乃も浮かれていたのだろう。2人で常に居られることが当たり前になっていた。
だから、羽乃も僕も互いの気持ちをわかった気になって、選択した。
そう考えると、うーむ、なんとも…恥ずかしい、
まぁ、もう仕方ないことだ。
僕は新たなクラスで新たな生活を送らなきゃならない!
羽乃に頼ってばかりじゃ、僕の名前も廃れるしね……頼だけに、、ハハ…
自己紹介は全員終わったようで、休み時間になる。
僕は大方、話しかける人の目星は付けておいた。
最初は誰にでも優しくしてくれそうな人に積極的に話しかけよう!
ということで、僕はトイレに向かってるであろうある男の背中を追う。
背中を追うってのは、ストーカーではない!
これは僕が、このクラスで生き抜くために付けた知恵なのだ!僕以外の誰にも邪魔は出来ない!
教室を出ようとする彼に追いつけるように早足でトイレの方向に先回りする。
そして、たまたま会った感を演出!
我ながら完璧すぎる、コミュ力強者!!
「えっと、よろしく。」
「ん?ああ!よろしくな!えっと……」
「唐草頼だ。」
「ん!すまんな、すぐに名前を覚えられないもんで…よろしくな!頼!」
「うん。よろしく……えっと、そっちの名前は…」
僕はここで敢えて、相手の名前を知らないふりをする。
勿論、彼なら困った反応をされることは無いと分かっていたから話しかけたし、勿論名前も知っている。
だが、知っているとキモがられる可能性も無きにしも非ず。
「ん、俺は長嶋雄一郎だ、よろしくな!!」
星と自演乙がついてしまいそうだ。
対青木で、2R目でKOした伝説な感じ。
ちょっと、茶髪っぽい髪の毛に、少しつり目で整った顔立ち。なんともイケメンだ。憎らしいほどに。
「あぁ、よろしく、雄一郎!」
一通り、挨拶を終えたら、そのまま一緒にトイレまで着いていき、用をたす。
挨拶だけしてトイレに行かずに帰ったら、いよいよ何かの目的があるようにしか見えない。というか、キモい!
そして、軽く1年の時の出来事なんかを世間話的な感じで話しながら教室に帰る。
廊下を歩いていると、声がかけられる。
僕ではなく、雄一郎に。
「あ!雄一!」
「ん、瑠花。」
おっと、、自演乙君?間違えた、雄一郎君?
君にはどうやらガールなフレンドがいるらしい。
良いではないか!良いではないか!
しかも、愛称?的な感じで呼ばれちゃって!もー!良いではないか!
雄一郎に、瑠花と呼ばれたその少女は嬉しそうに駆け寄る。
ポニーテールに少しつり目の少女だ。羽乃程では無いが、なかなか可愛い。
「彼女さん?」
「ん、まぁ、一応な!」
は、屈託の無い笑顔ではにかみながら肯定した。
……なんか、負けた感が凄い。
いや、まぁ負けていてくれた方が嬉しいけどね……。
てか、一応ってなんだよ。まるで、キープ彼女みたいな言い方しおって、
「俺は先に行くよ、」
「ん、ああ!」
僕は、彼と彼女の時間を、僕が潰すということが無いように、早足で教室に戻る。
ふと、少し他の友達も作らなくてはと思い、自己紹介で目星を付けていた人を振り返る。
すると、何かにぶつかった。
考え事をしていたから前を見ていなかった。
「ご、ごめん!」
すみません、とは言わずに、ごめん、と咄嗟に口から出たのは、なんというか本能的に相手が彼女だと理解したからだろう。
するりと僕の腰に腕が回され、ぎゅうっと締め付けられる。
まぁ、女子の力なんて痛くもないので、やめてくれとは思わない。
ただ、まぁ驚きはした。
「な、何してるの羽乃?」
言わずもがな、羽乃である。
「てか、教室離れてるよね?来たの?」
「うん!」
なんというか、やはり羽乃は大人っぽいのに、子供っぽい。
「腕、離してくれない?」
「ううん、嫌。」
えー、嫌なの?
うーん、嫌なのかぁ……
まぁ、それなら……
「いや!そうはならんやろ!」
「どしたの?」
「い、いや……なんでもない、」
周りの視線が痛い。
いや、元々同じクラスだった人は、またか…みたいな目で見てるけど、知らない人からの目線が痛い。
「取り敢えず、腕を離して下さい。」
「仕方ないなぁ、取り敢えず、私の頼を皆にアピール出来たから、いっか!」
「私の頼て……」
なんというか、まぁこれから彼女を作る予定とかは無いから、良いけど……
やはり、羽乃に絡まれているのを見られるのは恥ずかしいな。
「ん!もう行かないと!」
「はよ、行け。遅刻するな、」
「うん!じゃね!」
「ああ、」
なんというか、嵐みたいだったな……
はぁ、
僕は足早に、懐疑の視線と、嫉妬の眼差しから逃れるべく、教室に戻る。
「えー、私狙ってたのに……」
と廊下の端で声がした……。
まぁ、ジェンダーなんとかの時代だ。
女性同士でも恋人関係になりたい人もいるのだろう。
うん。そうだ。決して僕を狙っていたなんてことは無いだろう。
どうやら、羽乃には女性でさえも恋心を覚えるほどの可愛さがあるらしい。
そのとーり!
席に着くと、すぐに雄一郎が正面立った。
「な、なあ!さっきのは頼の彼女さんか!?」
「……いや、うーん、」
なんて答えるのが良いんだ?
……まぁ、適当なのは、
「……一応、」
「そっかー!いいじゃねえか!イケメンに美少女!お似合いだぜ!」
……あの、お似合いでは無いかと、
羽乃の可愛いさに見合う男なんてこの世には……、、いない!!
まぁ言い返さないけどね……
言い返しても話は発展しないので、
もっと、意味のある話をしなくては!
もっと、こう生産的で産生的な!
チャイムが鳴った。
「おっと、じゃっ!また、次の休み時間!」
そう言って、雄一郎は去っていった。
そういえば、雄一郎と彼女さん、なんか顔似てたなぁ……
よくある話で、血が繋がってないはずなのに、旦那と妻の顔が異様に似てることがあるみたいな話を聞いたことがある。
てか、『一応』って……
…………ん?
いや、まさ…か?ね?
友達って『達』って付くから複数形だよね……。だから、友が一人しかいない君は友『達』がいるとは言えないからね!!【ソースはガイル】




