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蛇足1 押してダメだから引いてみた

「ねぇ、頼?」


僕の目の前に。

僕の視界を彼女だけが染める。


押し倒された僕は抵抗できる筈も無く、虚しく心の中で嘆く。



「ねぇ、頼?」


「……何?」



彼女の体温だけが、僕を暖かくする。

それに対するように、冬の冷たい空気に晒された布団の冷たさが僕の背中を冷やす。


彼女の顔が吐息が掛かるほどに近づく。



「好き。」


「……あぁ、知ってる。」


「頼はさ。私のこと、好き?」


「……ああ。好きだ。」




僕がそう言うと、彼女は僕の口にキスをする。

子供のものとは違う深くて、甘い……。



「んっ、」


そして、僕と羽乃は深い快楽へとーーー








「いや!なんでやねんっ!!」




僕は布団から飛び起きる。

飛び起きる、と言うのは比喩ではない。

僕の上に乗っかった彼女を引き剥がすために起き上がったのだ。


そしたら、目が覚めた。

そしたら、僕の上には誰もいなかった。

そういうオチ。



酷い夢を見た気がする。


なんというか、マウストゥーマウスな感じの夢だ。



「どうしたの?」



ベッドの傍らに羽乃がいた。


いや、君さ。なんで当たり前かのように僕の部屋にいるの?


いや、僕の部屋だよね?ここ。


僕、いまさっきまで寝てたんだよ?

何してんの?



まさか、卑猥な事を……


いや、羽乃に限ってそんな事はしないだろう。

変な夢を見たせいだ。




「何してんの?」


「大丈夫?変な夢見た?」



僕の質問には一切答える様子は無い。

なんなら、質問してきた。



「……あぁ、変な夢だ。」


「ふーん、随分嬉しそうな顔して寝てると思ったら、いきなり起き上がって叫ぶんだもん。びっくりしちゃったよ。」


「……うれしそう?」


「うん。嬉しそう、というか幸せそうな感じ?」


「……待て。それ以上は言わなくて良い。」


「ん?分かった。」




ふと、時計を見る。

8時半を指していた。


一瞬、学校に行かなくてはと思うが、直ぐに休日だと思い立って気が抜ける。



「今日は、土曜だろ?起こしに来たのか?」


「いや、別に。」


「……いや、じゃあなんで部屋にいるの?」


「いや、別に。」


「……えぇ、」




怖いんですけどぉ。

さっきの変な夢の所為で余計に怖い。


夢ってのは怖いね。

なんでも出来ちゃうけど、何も出来ない感じが最高に怖い。




例の「娘さんを僕にください事件」から、早2ヶ月が経過した。

季節はすっかり秋だ。


山岸さんと羽乃を巡って話した内容は、今すぐにでも記憶から抹消したい黒歴史ランキングダントツの1位だ。


あれから何か変わったかというと、意外にも特に変わったことは無い。

まぁ、強いて言うなら羽乃がしおらしくなって可愛く見えてきた、気がするというところくらいだ。



「えっと、朝ごはん出来てるからね。」



そう言って羽乃は部屋を出ていった。



……。

え、何?

それだけ?

怖い怖い怖い、なんなの?


いや、しおらしくなったとは言ったけど。

今の様子よりは陽気だよ!?


陽気?……いや、なんて言えば良いんだ?

まぁ、いつもとは明らかに様子が違うよ!




まぁ、何か企んでるんだろう。

僕はスマホの電源をつけ通知を確認してから下の階に下りて朝食を食べる。


そうして、朝食を食べ終えたら部屋に戻り課題を進め、昼食を食べ、ゲームして、夕食を食べて、風呂に入って、少し勉強して、布団に着いた。

うん。ベットに横になった。



……いや!

おかしい!


こんな平和な日がいままでにあっただろうか!?

感動して涙が出てきた。

高校生になって初めて、自由に土曜を過ごした気がする!


楽しい!

……物足りないんじゃないかって?


いやいやいやいや、全然そんなことない!いや、ホントにマジで。


……うん、本当に。



ここで僕の心の一部は気付いていたのだろう。

圧倒的な羽乃不足だと。


でも、そんな気持ち押さえつけて僕は一人ベットで眠る。

意識は深く、深く、深淵へと……。



あれ、もしかして俺なんかしたっけ?




ーーーーーーーー


遡ること頼が起きる2時間前。


暇を持て余した私は、頼の部屋に行きたい気持ちを抑えてGo〇gle先生に恋愛相談していた。


その結果辿り着いたのは『押してダメなら引いてみろ作戦』。


初め見た時は、馬鹿じゃないの?と思った。

だって、頼を引いて接したらいよいよ私から離れてしまう気がする。


でも、よく考えてみたらメリットもある気がする。

これで、頼が私が居ないと生きていけないと思ってくれれば、願ったり叶ったりだ。


そう思ってくれなかったとしても、それはそれで私がもっと頑張らなくてはいけない証拠になる。



そうと決まれば、私は彼の部屋に急いだ。

頼が起きるまで顔を見ておこうと。



なんだか、いつもより彼の顔は幸せそうに見えた。

いや、幸せそうな気がするんだよなぁ。


何かの夢を見ているのだろうか?

んー、気になる!

でも、今日は引かないと。


なんて考えてると、頼がいきなり叫んで飛び起きた。


え、何?

ビックリしたんだけど。


まぁ、楽しい夢がいきなり悪夢になることなんてよく有るからなぁ……。


夢ってのは何にでもなれるけど、何かになることは出来ないから。



これで、お兄ちゃんの顔も今日は見納めかもしれないと思うと、目頭が熱くなる。

でも、我慢しなくちゃ!


少し会話を交わしたあと、私は自室に戻る。

それから、極力彼とは話さないまま、一日が終わった。



私はベットで布団に潜りながら思う。


やっぱり、今のままじゃダメなんだ、と。

変えなくちゃ!

お兄ちゃんの気持ちを。頼の気持ちを。

私に全振りさせないと!



そうして、私の意識は深い底へ底へと……



ーーー落ちる前にドアがノックされた。



「え、」




思わず声が漏れる。



「な、なに?」


「あのさ、入っていいか?」



お兄ちゃんだ。

なんだか、話しかけられたことが変な事じゃないのに、普通のことなのに、とてつもなく嬉しく感じる。



「うん!」






なんとなく、今のままでもいいのかななんて思ってしまう私がいた。

だって、どうやら頼は以外にも私のことを気にかけてくれてるみたいだ。

夢オチってどう思います?僕は嫌いです。


ちなみにこの話に続きは無いのですが、頼が「俺なんかしたっけ……」とフェルンの機嫌に左右されるシュタルクの如く、羽乃の部屋に行き、羽乃は「やっぱり頼ってば!!あてぃしのこと好きすギィ!!」となって特に何もなくハピエンド。。。。。。


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