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26話 愛言葉


「こんにちは、山岸さん。」


「ああ、こんにちは頼君。どうしたんだい?私は君と話すことは無いと思っていたが、」



……。


貴方先日、詳しいことは後日話すとか言ってましたよね?

なのに、話すことは無いですって?

やっぱり、端からこの男に、僕と話す気なんて無かったんだ、

だから、僕を訪ねなかったのか。



「ええ、薄々気付いてはいました。」


「……そうかい?ならーーー」


「でも、」



山岸が、僕の言葉を遮るように、言ったのを、また僕が山岸の言葉を遮るように話し始める。

まだ、話は終わっちゃいねーんだ!

それと、今になって帰れって言われたとしても、もう引けないところまで来てんだ!



「僕は羽乃がいない生活が耐えられない。」



見方を変えれば、愛の告白にも取れる僕の言葉に、山岸の眉がピクリと動く。

うお、怖ぇ。

いや、何度も言うが、僕は引けないところまで来てるんだ、



「この数日間、僕は羽乃がいない生活を送った。でも、何をするのにも気持ちが落ち着かないんだ!」


「……、」



無言で僕の言葉を聞く、山岸は何かを見定めるように僕を見据える。



「だから、羽乃と暮らしたいと?」


「ああ、」


「では、君たちが仮に一緒に住んだとして、金銭面などの保護者はどうするんだい?」



分かっていたさ。

この質問が来ることは。

先日と同じ質問だ。

分かっていたけど、解決策なんて見つかりやしない。

僕のような子供が1人でがどうにかできる問題でない。

でも、



「それは、働ける時になったら援助してくれた人にお金を返そうと考えています。」


「君1人で?」


「はい。」



無謀で、考え無しの穴だらけの策だってことは理解している。

そもそも、質問の意図はそこではなくて、その援助してくれる人をどうするんだ、という事を言っているのだと思う。

でも、覚悟を見せなくちゃ何も変わらない。



「そうか、」


「……?」



え、言及しない?

どゆことだ?

誰に援助してもらうつもりなんだね?みたいな感じて聞かれる流れじゃないのか?

……待て、これはチャンスだ。

これ以上言及されないためにも、話題転換しなくては!



「だから、僕には羽乃が必要なんです!」


「ほう、」



……え、

ほう、って何?

何に納得したの?

適当に取り繕って紡いだ言葉に、何か納得されたんだが?


でも、どうせだからこのままの勢いで、行かなくちゃ。


でも、ここで山岸さんは口を開く。



「では、頼君。」


「は、はい!」


「君は羽乃の事をどう思ってるんだ?」



聞かれるとは思っていた。

案の定としか言いようがない。


実際、それは来る途中にも考えた。

そして、心の隅で今の会話中も考えていた。


『僕は羽乃のことをどう思ってるんだ?』


愛してる、というのは事実だ。

では、それはどういう意味で?


ここで、仮に嘘をついて、一人の女性として愛してる、と言えば話をどうにかできるのだろうか?

出来るかもしれない。


いや、それは果たして嘘なのだろうか?


僕が羽乃を家族として愛してるのは事実だ。

では、一人の女性としては?

僕は羽乃を愛してるいるのだろうか?


一人の女性として、愛してる。

それは、どんな意味だろうか?


朝起きて、初めに考える人のことだろうか?

ふと気付くと考えてしまっている人のことだろうか?

無意識に思い出してしまう人のことだろうか?

居ないと落ち着かない人のことだろうか?

いつかは、いつでも隣に寄り添ってくれると信じられる人のことだろうか?



いつだったか、僕は羽乃が起こしに来なかった日を不思議に感じた。

兄妹としての感情だとしたら、あの時の言葉にできない不安はなんだったのだろうか?


常に隣に羽乃がいた。

だからだと思っていた。

羽乃が居なくなってから、気が付くと無意識に羽乃の事を考えていた。

それは、日常に異変が起きたからだと思い込んでいた。


いつか、いつかは僕の隣に寄り添ってくれる人はいるのだろうか、と考えたら。

その時、僕には誰が浮かぶだろうか?



あぁ、分かってるさ。

僕にそんな相手は、羽乃しかいない。

羽乃がいなくちゃ、もう僕は成り立たない。

もうそういう段階まで来てしまってるんだ。

説明しようとして説明できる感情では無い。


なんでこんなにも悩んで悩んでも、出す答えは決まらないのだろうか。



「どうなんだ?羽乃をどう思ってるんだ?」


「……愛しています。」


「それはーー」


「どういう意味かは分かりません。でも、考えてみたら、この感情が妹に向ける感情では無いことは確かです。」


「……、」


「どう表せばいいかは、まとまりません。でも、でも僕には羽乃いなくちゃいけないんです!」



ああ、そうだ。

だから、僕は言う。

少し尚早な気もするが、ここで言わなくちゃ終わってしまう。

出し惜しみなんてしてられない。


それは、まるでテンプレのような言葉。

でも、テンプレであっても乗せる思いはテンプレでは無い。

今度は主人公なんて気取らない。

一人の男として。

唐草頼として。



「娘さんを僕にください!」



言ってしまった。



「ふぇ、」



何か、可愛らしい漏れた息のような声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

この空間に可愛らしい声を出す、可愛い子なんていない。


こんな言葉、義妹の親に言うやつが歴史上に存在しただろうか。


僕はしっかりと、山岸さんの目を見る。

彼は無言で僕を見て、



「それを聞けたなら満足だ。」



そう言った。


その頬は緩んでおり、まるで満足のいく結果になったかのような表情だ。


ここまでされたら、僕も少しは理解した。


はぁ、嵌められたな。


なんというか、こうやって考えてみると微かに微笑む奴が脳裏に浮かぶ。





これで、満足だろ?



父さん。


愛言葉はⅣが好きです。読んでくれて39!!

愛言葉Ⅳで検索!!

(2023,7月12日、加筆修正済)

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