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20話 理解出来ない、

目を覚ましたら白い天井が最初に目に入った。


僕は何をしているんだ?


義父さんの訃報を聞いて、病院に駆けつけたら、僕が病院で寝ている?



少し重い体を無理やり起こして、周りを見渡す。


若干、簡易的に用意されたような倉庫のような一室。


僕はそこのベッドに寝かされていた。


義父さんの死に対してか、病院の雰囲気と懐かしくて不快な電子音に対してか、僕は少しの間気を失っていたらしい。



……少しの間、だよな?




「えっと、大丈夫?」



勘違いしないで欲しいのだが、これは僕の発言だ。


よく考えれば、大丈夫か聞かれるのは僕の方な気もするが……。



目を覚ました時から気になっていたのだが、面倒だったので言わなかったが、僕のベッドの横で泣きじゃくる少女が一人。


言わずもがな、羽乃さんである。



「ぜんじぇん、だいじょぶじゃないし!」



怒っておられました。泣いておられました。


まぁ、そりゃそうか。


僕以外に家族として愛した義父さんが死んで、残った唯一の家族である僕が倒れて、平静を保てる方が凄い。



「えっと、ごめん。」



取り敢えず謝る。


正直、羽乃には悪いことをしたと思う。


だから、誠心誠意ーーー



「うえええええん!」



そんな事を考えていると、凄い勢いで羽乃が僕に抱きついてきた。


まるで子供のように、可愛い顔の跡形も無いような顔で。



引き剥がす気にもならないのは事実だ。


ウザったいというよりは、羽乃を一人にしてしまった罪悪感の方が強いから。


流石に、僕の方からも手を回して羽乃の頭を撫でる。




「ごめんな、」


「ゆるさないし……」




少し経ったら、落ち着いたのか羽乃は言った。




「ふふ、お兄ちゃんに頭撫でて貰っちゃった!」




いつもの調子に戻ったようで何よりだ。



「そうか、良かったな。」


「……何その反応、もっと恥ずかしそうにしないの?」


「いや、まぁ今回は本当に迷惑かけたからな。」




僕は、思い出した。


全てを。


亡くなった母のこと。


羽乃と義父さんとの仮初の家族関係。



それを今更思い出して、感情が揺さぶられる訳では無い。


無理やり押さえつけていた感情が今になって呼び起こされたことによる反動でしかないのだから、母の死に対して今も何かを思う訳では無い。


いや、反動だからこそ母について思うことは沢山あるのだが、今更思い出しても仕方ないというのが本音だ。


実際、僕を長い年月育てたのは義父さんだし、母さんの顔も朧げにしか覚えちゃいない。


でも、理解出来たことはいくつか有った。



一つは、なんで羽乃が知ってる事を、僕は知らないということがあったかだ。


恐らく、僕は昔の記憶を無理やり押さえつけて思い出さないようにしていたのだと思う。


だから、羽乃にとっては僕は本当の兄妹ではないということが分かってるいたのだろう。



それを踏まえて、もう一つは、羽乃が僕に寄せる思いの正体だ。


いや、勿論恋とか愛みたいな感情であることに変わりは無いのだけど、羽乃は初めから僕のことを兄妹だなんて見ていなかったってことだ。


だから、僕が羽乃を見る視点とは違う感覚で羽乃は僕を見る。


そうやって、辻褄が綺麗にあう。




「……なんか美味しい物でも食べて帰るか、」


「うん!」



病院でいくつかの手続きを終えて、外に出て羽乃に言う。


そうすると、元気の良い返事が返ってきた。


羽乃と並んで、ゆっくり歩く。





ふと、思った。


僕の記憶が戻ったということは、羽乃を本当の兄妹として感じていた今までの僕は居ないということだ。


じゃあ、僕は羽乃をどうやって見るんだ?


恋愛対象として見るのか?


家族として見るのか?


羽乃がそうであったように、僕も今までの事を振り返ると羽乃を妹として見ることは出来ない気がする。




「何食べたい?」


「うーん、牛すじかな?」


「……は?牛すじなんてどこで売ってんだよ?」


「おでん屋さんとか?」


「どこにあんだよ?」


「え、はて?……」




いいや、妹だ。


羽乃は、妹でしかない。


恋愛対象にはならないし、僕にとって羽乃は家族だ。


例え、そうやって心の奥底で思えなくても僕は思っていこう。



ん?そういえば、羽乃も義父さんの子供じゃないんだよな?



ふと、心にモヤが掛かる。



そういえば、病院に向かってる時、羽乃は僕に何か言いたそうにしてたような気が……。



ちょうど、病院の敷地を出る。




「そういえばさ、羽乃。」


「ん?」


「……嫌だったら言わなくてもいいんだけど、羽乃の両親ってどうしてるの?」




一応、嫌だったら言わなくても良い、とワンクッション置いたつもりだった。


でも、羽乃の顔はみるみるうちに青ざめていく。


まるで、すっかり忘れていた何かを思い出したように。


いや、実際忘れていたのだろう。





風が何かを伝えようと、木の葉を連れて僕たちに語りかける。


でも、もう遅かった。




敷地の外の歩道に横付けされた黒塗りの車から、男が降りてくる。


いかにも紳士的なスーツ姿に、少し目のつり上がった強面の男。


そして彼は言った。




「迎えに来たよ、羽乃。」


「……っ!」




何がなんだか分からない。


頭の整理が追いつかない。


どこかで見たことある男かもしれない、と頭の中を、思い出したばっかりの記憶を辿る。


でも、分からない。


義父さんの知人か?


だとしたら、なんで羽乃だけに迎えに来たと言うんだ?


しかも、羽乃はコイツの事を知っているようだ。




「……誰だ?」




僕は咄嗟に羽乃の前に出て、そう言っていた。


後先考えずに行動すると痛い目見るのはよく分かってる。


でも、本能的に僕はコイツに羽乃を渡してはいけない気がしてならなかった。




「君は……頼君か、大きくなったね。」


「だれだ、と聞いてるんだ。」


「あぁ、すまないね。私はーー」




次の瞬間、全てが狂った。


本当に何も分からなくなった。


どうしたら、そういう結末になるのか?


本当にこれで物語は終わりなのかもしれない。




「ーー羽乃の父親さ。」




頭を殴られるような衝撃が僕を包んだ。



ひさしぶりブリに投稿します。遅れてすみません。


(2023,7月10日、加筆修正済)

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[一言] お久しぶりです。待ってました!
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