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2話 知ってるか?双子は同じクラスになれないんだ!……ん?


「えっと、羽乃さん?なんで、僕の腕を掴んでるの?」


「お気になさらず!」


「いや、少し周りの目線がですね……」


「お気になさらず!」



流石に諦めて、全てのストレスを吐き出すかのように溜息を吐く。


実際に溜息を吐いたところで、ストレスなんて逃げていってはくれないと分かってる。


でも、溜息を吐かないとやってられないのだ。



高校生になって初めての登校で、まさか義妹に腕を取られて歩くなんて誰が予想しただろう。



いつかは、可愛い彼女を作って(はべ)らせて歩くのを想像したりしたものだが。


そんな男子中学生の頃の妄想は儚く散った。




僕こと、藤崎頼には妹が居た。


いや、旧名が藤崎頼。


今の名前は唐草頼。


まさか、義父さんも結託して僕と羽乃の結婚を後押しするとは思ってもいなかった。


手続きが大変なはずなのに、姓を戻してまで後押しをするんだ、何か裏があるとしか思えない。


状況は極めて最悪。



てか、羽乃はルックスは良いのだから男なんて漁るほど居るだろうに。


どうせついでだ、この際だから、正直に言おう。


僕の妹…いや、義妹の藤崎羽乃は可愛い。


顔の形は整っていて、ボブカットにサラサラの髪の毛、大きなくりっとした目に大きすぎない凹凸。

周りの女子と比べても常軌を逸する可愛さを持っている。


言ってしまえば、僕には釣り合わないのだ。


妹でなければ、惚れていたかもしれない。


そう、妹でなければだ。


あくまで、血縁関係は切れても妹は妹で変わりは無い。


だから、実の妹に恋愛感情を抱こうなんて思わない。


僕は、純粋な甘酸っぱい青春を謳歌したいんだ。

そう。純粋な……


高校になって、同じクラスで隣の席になった女子と仲良くなって……。

最後には、恋人としてイチャイチャと……、


なのに、なのに……なんで、こんな状況になっているんだ!


てか、そもそも何故僕に?


僕とて、自分で言うのもおかしな話だがルックスは良い方だとは思う。


羽乃とは釣り合わないとは言ったが、それは羽乃の可愛さが異常なだけで、僕にもそれなりの自信はある。


中学の時も、話したことの無い人に告白されたことは、両手で足りるか分からないほどあった。


でも、わざわざ兄である僕と血縁関係を切ってまで、僕と結婚したいのだろうか?


それ以前に、生まれてこの方、僕は羽乃に何かをしてあげたことは無い。

漫画とかだったら、実は小さい頃に羽乃を助けたことがあって、その時に惚れて……みたいな、展開が用意されているのだと思うが、本当に思い当たる節は無い。


毎日、必要最低限の会話だけだったし、話さない日だって少なくなかった。


ん?何故、過去形で言ったかって?


それは、『私、お兄ちゃんと結婚する!』発言からやけに羽乃が、僕に関わるようになったからだ。


毎日、僕の部屋に入り浸り、隙あらば僕の懐に潜り込む。


いくら、妹でも可愛いのだから流石に精神的に自然を保てない。


僕とて、普通の男子高校生ということだ。


家族では無いと考えると余計に、家族以外に感じる感情が生まれそうになる。


その度に羽乃をひっぺがして、部屋の外に放り出す。


そんな毎日は、非常に疲れる。


もう、家を飛び出して橋の下でいいから住む場所を変えたい…、ってのは言いすぎな気もするが、家を変えたいのは事実だ。



「そろそろ、学校近いしさ?そろそろ、腕を離してくれると……」


「ん?そっか……ん!そうだね!」



羽乃は、何かを思いついたように腕に回していた手を離す。

なんでだろう、凄く嫌な予感がするのは…。

なんというか、素直すぎるのだ。

いつもだったら、意地でも僕の腕を離さないであろうに。


直ぐに離してくれたのは、ありがたいが、何か裏があるとしか思えない。



まぁ、学校では別れられるから良いとするか。


なんでクラスも決まっていないのに、そんなことが断言出来るかって?


なぜなら、双子は同じクラスになれないからだ!

僕WIN!!


ん?双子?

待てよ、僕達は双子じゃない……。


いや、まさか。


流石に7クラスあるのに同じクラスになるなんて……ありえ、無い!


7分の1なんて、割合換算で一生に事故で死傷する確率より低いんだぞ?

いや、今の例えは意味が分からないな。

それほど、僕は動揺しているんだ、理解してくれ。



満を持して、僕と羽乃は、各々の思いを抱えクラス分けの名簿を見る。



僕は、絶句した。

羽乃は、当然だと言わんばかりに、僕を見て微笑む。



おいおい、おかしいだろ。


これには、絶対裏がある。


受験した時には、双子だった者同士を同じクラスになるんて普通はしない!



そして、裏があると思う理由は、もうひとつある。


彼女にとっては一世一代のクラス分けだというのに、まるで緊張した雰囲気が無かった。


むしろ、落ち着いてるまであった。


受験発表の時に、不意にも僕をドキドキさせた緊張した顔は、どこへ行った!


……今のは聞かなかったことにしてくれ、時系列的に実の妹に発情していることになってしまう。

それはありえない。



「やったー!同じクラスだね!」


「おい!そんな大声で言わなくても!」



羽乃の大声に反応して、周りの視線が僕らに集まる。


直後、再び羽乃が僕の腕を取った。


なるほど、確かに、今になって腕を掴んだ方が皆の印象には深く刻まれる。


策士だ……。



「ほら!行こっ!」


「あ、あぁ……」



神の悪戯か、誰かの策略か。


こうして、最悪の形で僕の高校生活はスタートしたのだった。


家庭の崩壊を望むわけでは無いが、いきなり義妹が出来たりしないかな……

(2023,7月8日、加筆修正済)

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