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15話 パンナコッタ

少し前に部活について熱く語った気がする。


気がするというか、実際に熱く語ったのだが。


あんなに語っておいて、僕はまだ部活を決められないでいた。


明後日に迫る入部届の締切日を目の前にして少し悪寒がする。




「あ、雨だ。」




下駄箱から靴を取っている最中に、少し早く外に出ていた羽乃が言った。




「え、傘無いかも……」




そんな呟きが漏れる。


傘を探すべくカバンの中を覗く。




「あ!それならーーーー」


「あ、有ったわ、」




いや、雨なんて久しぶりだから、常備の折り畳み傘の存在を忘れていたぜ、


僕の声に被って、同時に羽乃が何かを言った気がした。




「ん?どうした?」


「……えっと、傘忘れちゃったかも、」




少し安堵の表情で羽乃が、呟く。


なんで、安心してんだ?


僕がいるからか……。


いや、しかし僕は傘を一本しか、



でも、珍しいこともあるんだな。


毎朝、テレビは付いてるから天気予報は確認してるものだと思い込んでいたが、そういう訳では無いらしい。


まぁ、朝は羽乃は忙しいだろうしな……。




「入れてよ!」


「あ?」



折り畳み傘って狭いよ?


いや、そうじゃなくて、恥ずかしいんだけど。




「頼の傘に入れてよ!」




言い直さなくても聞こえてますよ。




「えっと、僕の傘に?」


「うん!」




はぁ、なるほど厄介だ。


どうしよう。


羽乃に傘を渡して、僕は家まで走るか?


いや、それにしては雨が強すぎる……。


風邪も引くかもだしなぁ、



でも、相合傘は……嫌だなぁ、




「何してんの?早く行こっ!」


「あ、はい。」




羽乃の係の仕事を手伝っていたお陰で、運良く生徒の帰宅ラッシュは、避けられたから、人目に晒される危険は無いからいっか……。


そう、心に言い聞かせて傘を広げる。



すぐに、羽乃が僕に寄り添うように傘に入ってくる。



え、やっぱり狭くね?


なんか、良い匂いするし…なんなの?同じ洗剤の筈なのに…、



「んふふ、」




えっと、えらく上機嫌ですね、羽乃さん。


ちょっと、くっつきすぎでは?


肩がぶつかって、窮屈なんですけど?



まぁ、狭いから仕方ないか……。


濡れて風邪をひいたら元も子もないからな、


そんな事を思いながら、いつもの通学路を歩く。



腕を掴まれて登校はした事あるが、傘をさしてくっついている状態というのは、なんとも新鮮というか……。



そんな事を考えながら歩いていたら、羽乃が口を開いた。




「ん、そういえば部活は?」




僕は、咄嗟に足を止めてしまう。


うーん、雨の音で聞こえなかったフリをしていたいけど……。


この距離じゃ、誤魔化せん……。


それと、誤魔化してる余裕なんて無いし……。




「どうしよう、」


「決まってないのね?」


「ああ、」




羽乃がどうこうとかの問題というより、良い部活が見つからないということが問題なのだ。




「どうしたものか、」




呟く。


羽乃にも案は無いようで、二人の間に沈黙が流れる。


こんな時に策士羽乃を発動して欲しいんだが……。




「あ!頼じゃん!」




ふと、静かな雰囲気に場違いな声が響く。


いや、例えるなら学習塾の自習室でロックバンドがライブする感じ。

……はて、自分で出しておいて例えがよくわからん。




「やぁ、朋也。」


「あ、」




友人の朋也だ。


すると、僕を見て、彼はすぐに踵を返す。


足早に去っていく。




「おっと、お邪魔しました!」




そんな事を言いながら。


なんだ?コイツ、



すると、今度はまた方向転換をして、朋也は意を決したように僕の方へ戻ってくる。




「いや!聞いてないぞ!」




は?


何をやってるんだコイツは?


いよいよ、バグったか?


いや、もともと正常ではないか、




「は?何が?」




僕の呆れたような質問に、朋也は眉を寄せて言う。




「お前だけ抜け駆けなんて、ズルいぞ!」




は?


抜け駆け?


どういうことだ?


待って、本当に意味がわからない。




「隣の女の子は誰だ!相合傘なんてズルいぞ!」




あ、そういうことね。


コイツ、僕と傘に入ってる奴のことを、羽乃だと思っていないらしい。




「こんにちは、佐々木さん。」


「お、え、あ、」




羽乃も状況を理解したのだろう、伏せ気味だった顔を上げて、朋也に挨拶する。


すると、今度は本当に朋也がバグった。


直ぐにスポーツマン持ち前の立ち直りの速さでバグを修正して、声を上げる。


いや、スポーツマン関係無いか……。




「はぁ、なんだよ、羽乃ちゃんか!頼に彼女が出来たのかと思っただろ!」




少し羽乃のオーラが変わった気がした。


あんま、下手なこと言うなよ……、まるで僕と羽乃は、カップルでは無いって言ってるようなもんじゃないか、


いや、まぁ実際そうなんだけど。




「ん!そういや、頼!」


「なんだ?」





なんというか、話の展開が速い奴だな、




「部活決めたか?」


「う、」


「やっぱりな!俺の勘は当たるんだ!俺に名案があるぞ!」




嫌な予感がする。


いつでも、嫌な予感ってのは当たるんだ。


あの時もそうだった。



「バスケ部に体験来いよ!」




ほら、やっぱり。


そんなことだと、思ったよ。



「入んなくたって良いんだよ!」


「嫌だ。」


「そう言わずに!」


「…嫌だ。」


「アットホームだから!」


「……。まぁ、体験だけなら……、」



はぁ、体験だけして帰れば良いか……、


なんていうか、コイツには押されると断れないな……。


それとも、僕は押しに弱いのか?




「おお!約束だからな!明日体育館来いよ!」


「…わかったよ、」




それだけ言って、嵐のように朋也は去っていった。



なんてこった。

パンナコッタ。


ふと、思ったがパンナコッタって美味いよな。

知ってるか?パンナコッタ。

食べたこと無かったら食べてみるといいぞ!



現実逃避をしながら、懐かしい味を思い出す。

何してんだ、僕は。



面倒臭いことになったな、


明日、部活決めないとなのに、バスケ部に行ったら決められないじゃないか。


そしたら、帰宅部だな。




「はぁ、帰るか。」


「うん!」




おい、何でお前は機嫌が良いんだ。



僕が最高潮に沈んでいるのに、



羽乃の呟きが聞こえた。




「お兄ちゃんは、押しに弱い。」




おっと、聞こえてますよー?

同じ傘の中でゼロ距離ですよー?


はぁ、

もう、嫌だ……。






いつの間にか、雨は止んでいた。




でも、家に着くまで、羽乃が傘を閉じさせてくれることは無かったのであった。



イイネとか、感想とか待ってます!

あ、あと誤字の報告もしてくれた人がいて、感謝してます!

(2023,7月10日、加筆修正済)

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