夢で出会ったその男。
善得院に戻り、夜のお勤めと夜の鍛錬を終えた後に眠りについた。
疲れたので今後の事は明日、話し合う事にした。
その日、夢の中で1人の男と対話していた。
眠りから覚めた後にはその男の顔と名前は思い出せなかったが他の事はハッキリと覚えている。
男はまず私に困った事が有ったら俺にいつでも相談して良いと笑いながら話していた。
相談したいと強く願ったら夢で会えるからその時に相談に乗ろうと…
俺の記憶はお前の記憶の中に有るがわからない事があった時は俺が簡単な事なら調べて伝えるから任せろと。
その後に男は私に謝ってきた。
幼少の頃から頻繁に俺が身体の主導権を握っていたからこの時代では異端と思われる行動を多々起こして来たので皆からの視線を冷たく感じる事もあるだろうと…
後は俺の精神に引っ張られて考え方が俺よりになっておりお前の考えはこの時代の考え方とはズレているから気をつけろとの忠告を受けた。
そんな夢だった…
確かに今の私の考え方は現代的な考えだろう…
夢の中の男の記憶の為にこんな考え方をする様になったのだろうな。
夢の男は簡単な事なら調べると言っていたけどそっちにはネットがあるのか?
夢男の言う通りにわからない事は色々と調べてもらう事にしよう。
領地の石高も開墾して増やしたいし、収穫高も増やしたい。
飢饉の時の為に蕎麦や芋などの栽培もしたい。
さつまいもは唐芋として明国の船員が食べているのを見たと松山 重治と松永 久秀が言っていたので多分入手出来るだろう。
本当なら日本に入って来て広まるのは1600年頃のはずだからかなり早くなるな。
金儲けでは三河国に木綿を栽培している地域があるから木綿を入手したい。
出来れば一緒に栽培している人物も一緒に来てくれれば良いけれど。
後はお茶の栽培かな?
農機具など道具の開発など色々やりたい事があるけど正直、製造方法などわからないから夢男に今度聞いてみよう。
そんな事を考えながら朝のお勤めへ…
私は還俗して今川 義元になったのだから朝のお勤めはもうしなくて良いのでは?
そう疑問に思った私はさっそく九英承菊に聞いてみるが返答は無かった…
私の居城となる善得寺城はほぼ私が修行している善得寺だから今後も続くんだろうな。
その後、いつも通りに朝のお勤めの後に朝の修練をこなして朝食をとった。
今後の事を話し合う為に私、九英承菊、柳生 家厳、松永 久秀、松山重治、世鬼 政棟、大林 勘助の7人が集まった。
善得寺城と吉原城を管理するには人手が足りないのでまずは人材の確保と人材の育成を進めなくてはならない。
まずは農業改革をして領地を安定させなければならない。
農家の負担を軽減させる為に道具の改良から始めなければならないか…
そうなると鍛治職人が必要となるか。
今川双頭家老の三浦 氏員殿と朝比奈 泰能殿から多少なら人材や職人は手配出来ると思うから相談して下さいと言われたので鍛治職人に関しては相談する事に決まった。
何をするにも銭が掛かるので商人も紹介してもらおう。
勘助は放浪の旅で知り合った刀鍛冶職人がいるので交渉次第で来てくれるかもしれないと言うので交渉を頼んだ。
重治には堺で唐芋を入手する手配を頼んだ。
吉原城の近くにある田子の浦湊の整備をして交易を始めたい。
湊がせっかく有るので水軍を設立したいので九英承菊の母親が水軍を持つ、興津家出身なので興津家から水軍の人間を何人か来てもらえるように交渉出来ないか九英承菊に問うた所、多分大丈夫でしょうと九英承菊が交渉してくれる事になった。
お屋形様は駿河国東部の安定を望んでいるので今川家と敵対している甲斐国の武田家にも対応しないとならない。
相模国の北条家とは同盟を締結しているので大丈夫だが油断は禁物だな。
私の記憶では北条が駿河国の東部である富士川以東の河東に攻め込む【河東一乱】が起こり、今川家は一時的に富士川以東を失う事になった。
まあ、原因は北条家に考慮しないで武田家と同盟を締結した結果だけど…
武田家が駿河国にちょっかいを出さない様に信濃国から圧力をかける様にする外交もしなければならないので信濃国国人の一族の力を借りれるように交渉する事になった。
駿河国の井川の信濃国諏訪氏の一族である【諏訪助九郎】の娘と妻に迎え諏訪を名乗った【諏訪 信真】と信濃国海野氏の支族である安部七騎の【海野 泰頼】信濃国小笠原氏の一族である高天神小笠原氏の【小笠原 長高】の3人だがここで今川双頭家老を頼りにする事になった。
この件は私が個人で実行するよりも今川家として実行した方が良いだろう。
諜報活動については武田家には【三ツ者】北条家には【風魔忍軍】が有り、今川家はそれに対応しなければならないが私には政棟がいる。
今は政棟を中心に世鬼忍軍を編成しておりもう動き始めている。
今はまだ忍び働きが出来る者は15人ぐらいだそうだがこれから伝手を頼り人数を増やしていくそうだ。
話し合いも終わり時間も早いので今川館に行く事にした。
今川館に着くと氏員殿と泰能殿がお屋形様と話し合いをしていたので大人しく待っていると大広間に通された。
今回は7人とも大広間に通された。
待っていると足音が聞こえて来たので頭を下げてお屋形様を迎えるとお屋形様の声がかかり皆が頭を上げる。
お屋形様の両側に氏員殿と泰能殿が控えている。
さっそく相談を始める。
鍛治職人の手配、商人の紹介、田子の浦湊の整備の許可と資金の提供、水軍設立の許可を順番に相談していく。
田子の浦湊の資金の提供は保留だか他は了承された。
水軍の将はどうするのかと尋ねられたので九英承菊が興津氏と交渉すると伝えた。
後は武田家対策を伝えたが信真、泰頼、長高に私に協力する様に伝えるとの事だった…
今川家主導で実行した方が良いのではと伝えたがお屋形様は暫く考えた結果、田子の浦湊の整備資金を出す事にするのでその代償として武田対策を頑張れと告げられた。
承諾するとすぐにお屋形様は3人に使者を出しだ。
他にはもう良いのか?と問われたので出来れば三男以下の人材が数人欲しいと伝えた。
用意が出来たら使者を送ると告げられ報告は終わった。
最後にお屋形様は私を支える者たちを見て、安心して私を任せられる者たちだと褒めてくれたので私には勿体ない者ばかりですと答えた。
お屋形様は満足そうに満面の笑みを浮かべながら退室していった。
帰りにしっかりと母上の所に顔を出したよ。
さあ、善得院に戻ろう。