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母上様、お元気ですね。

善得院に戻る為に今川館を出ると1人の男が門番と話し込んでいた。

足を止めしばらく見ていると男は項垂れて今川館から去ろうとしていたので声をかけた。


いきなり声をかけられた男は足を止めて振り向いた。


男は色黒で隻眼、身体中傷だらけて足が不自由だったがそんな男の特徴と被る人物を私は知っている。


今は【大林 勘助】か?後の【山本 勘助】だと思うのだが…

しかし勘助が今川に仕官しに来るのは1536年のはずだけど今は1534年で2年早い。


話を聞くと、やはり大林 勘助と名乗った。

どうやら今川家に仕官を願う為に紹介状を携えて今川館に訪れたが門番に胡散臭いと言われ、追い返された所だったそうだ。


ここで会ったのも何かの縁と話を聞くと諸国を放浪し、築城術、京流兵法を会得しているとの事だが長い間、放浪生活をしていた為に身形は整えていたが衣服がかなり痛んでいた。


普通は胡散臭いと思われるだろう…


因みに誰からの紹介状か尋ねたが勘助が養子に入った【大林 貞次】からの紹介状だった。


勘助が諸国を放浪している間に実子の無い貞次に実子が産まれた為、勘助は廃嫡され行き場を無くしてしまった為に貞次は紹介状を勘助に持たせ今川家に仕官するように送り出されたらしい…


貞次…せめて新しい衣服を用意してあげてよ。

しかも自分の紹介状があまり意味を持たない事わかってるでしょう。


勘助も紹介状があまり意味を持たない事をわかりつつ仕官しに来てるな…


まあ、せっかくのチャンスなのでさっそく勘助を勧誘する事にしよう。


私は今川 義元と名乗り、還俗したばかりでちょうど任された善得寺城と吉原城の拡張とその地域を統治をする予定なので優秀な人材は1人でも多く家臣としたいと勘助に私の家臣とならないかと問うた。


しばらく固まっていた勘助だが我に返り、家臣となる事を承諾してくれた。


松永 久秀と勘助、築城を得意とするものが2人になったので喜ばしい事だ。


九英承菊をはじめ皆、呆れた顔をしていたけど反対意見は無かったのですんなりと勘助を家臣に出来た。


早速、善得院に戻ろうとしたがいきなり私の首根っこを掴まれてしまった。


振り向くとそこには笑顔の私の母上である【寿桂尼】がいた。

何故か目は笑っていないが…


いきなり何だ?と私は首を傾げたのだが、母上はその行動に腹が立ったのか母上は掌底打ちを繰り出して私はくらう事になった。


何故か母上の掌底打ちは躱せないんだよな…


寿桂尼である母上は父親である今川 氏親の時代から今川家中で影響力が大きい、お屋形様が家督を継いだ頃は母上が今川家を仕切っておりお屋形様も健康になり、今は母上は裏方に徹して一応大人しくしている。


母上に捕まり母上の私室に私を含め、皆が通された。

勘助は自分は今、私の家臣となったばかりとこの場に相応しくない服装をしているからと辞退したが母上は私、そういうのは気にしないからと笑いながら勘助も招き入れた。


皆が座ったと同時に母上は私の顔を見て溜息をついた…


私の顔を見た瞬間に溜息って酷くない?

何、この扱い…


九英承菊も寿桂尼様のお気持ちもわかりますと私を見ながらやはり溜息をついている…


母上は九英承菊に語り出した。


この子は昔からそうなの…

私に文をこまめに出すんだけど滅多に顔を見せに来ないの…


側室の子供である三男の玄広恵探でさえ、わざわざ時間を作って顔を見せてくれるのに…


母上の説教と愚痴が続き、九英承菊もこことぞばかりに私を責めが始まる!!


私は心の中で寺で修行中に実家に頻繁に顔など出さないだろう!!

そもそも家督争いを防ぐ為に三男以降は全て仏門に入っているのに実家に顔を出したらダメでは?と思ってしまう。


お屋形様もほぼ健康体になり寝込まなくなり、実績を積み上げ、弟である私も使いこなせる自信があるのだろうな。


私が結果を残したら玄広恵探の兄上も還俗させて一門として今川を支えてもらうつもりだ。

お屋形様は私と玄広恵探の兄上に期待をしていると書状にも匂わせていた。


四男の象耳泉奘の兄上は仏門の素晴らしさをお屋形様にも説いているらしくお屋形様は象耳泉奘の兄上の還俗は完全に諦めているみたいだ…


玄広恵探の兄上も仏門にどっぷりとハマっている象耳泉奘の兄上と仏門に付いて話をしたが話しについていけないとドン引きしたと私に書状をよこす始末だ。


実は玄広恵探の兄上とも書状のやり取りをそこそこしていて仲は悪くない。

むしろ仲が良いかな?


二男の彦五郎の兄上以外は皆仲が良いな。

兄弟の中で彦五郎の兄上だけ浮いているな…


玄広恵探の兄上も彦五郎の兄上の評価は低い。

正直、彦五郎の兄上は私たちより立場的にも恵まれているのに努力もせずにただ氏輝の兄上を妬んでいる。

このままでは今川の家臣たちが割れて内乱を起こしてしまうか心配だと玄広恵探の兄上から書状が送られてきた事もある。


私の記憶では私と玄広恵探の兄上で家督争いをしてしまっているのだが…

玄広恵探の兄上は人が良いからこれからも仲良くして行きたいと素直に思ってしまう。


そんな事を考えている内に母上からの説教と愚痴は終わったので一安心だ。

母上は政治の話にならなければ可愛らしい人だが政治の話になると皆が怖れる人になる。


その後はお茶を飲みながらのんびりと過ごし、帰る間際に母上に氏輝、玄広恵探、象耳泉奘、氏豊たち兄弟争い事などせずに仲良くするのですよ。と言われてしまったのだが、聞き逃したのか彦五郎の名前が無かった…


聞き逃したんだよね…


ちなみに今川家で飲んでいるお茶は煎茶です。

気軽に飲めるので私が加工をしたのだが私の周りの者たちも気に入り今川家中に広まった飲み物だ。


人気が出て品薄状態なので私の領地でもお茶の栽培を始めたい。


善得院へと戻り今後の事を皆と相談したいとな…


じゃあ母上、また会いに来ますね。








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