Another Story
部屋着に着替えて、ついでにお昼ご飯も食べて準備はバッチリ。まずは、便箋と一緒に置いてあった説明書を手に取った。
『Another Story
それは、あなたのもうひとつの人生です。
現実ではできない事、現実ではありえない事もこの世界ではすることが出来るのです。
あなたの本当の願いをここで叶えましょう。』
そんな書き出しで始まるたった数ページの説明書。
気がつけば必死になって読み込んでいた。
諦めていた夢が叶うかもしれない。
例え舞台が違っても、同じ景色を見れるかもしれない。
そう思うと居てもたってもいられなくなった。
(ほんとに、姉さんは僕のことよく分かってるよね)
普段はあんな姉だが、たまに姉らしい事をしてくるから困るのだ。
隅々まで説明書を読んでから、ゲーム機と思われるヘルメットを手に取った。
「どこからどう見てもヘルメットなのに、これでゲームが出来るとは、科学の発展はすごいな」
付属の部品含め、慣れない設置作業に手間取ったけどようやく起動できる状態にはなった。
これでやっと、きゃらくり?(キャラクタークリエイトの略だという事は晩ご飯の時に姉さんから聞いた)ができる。
ヘルメット(VR機と言うらしいけど、分かりやすいからヘルメットでいいと思う)を被って、布団に横になった。
初めての事に、少しの緊張とそれ以上の期待が胸をドキドキさせる。
ヘルメットの横に着いている電源ボタンを押し込んだら、いよいよゲームの始まりだ。
(僕の願いは、叶うだろうか)
意識が遠のく
音が消える
深い眠りについたように
静かに
深く
潜り込んで……
『ハロハロー!!!
ようこそなの!Another Storyへ!
ミーは案内用AIなの!よろしくなの!
さてさてー、サービス開始は明日から!
という事で今は残念ながら自分のキャラクターを作ることしか出来ないなの!
それでも大丈夫?なの!』
………………………なの?
「ちょっと落ち着きたいので時間をもらってもいい?…なの?」
『っ!?!?
おっけーなのよー!!!』
落ち着け自分、落ち着くんだ!
ついつられて『なの』をつけてしまったけれども!落ち着かないと。
まずはゆっくり振り返ってみよう、うん。
最初に、ヘルメットの電源をつけると意識がなくなった感じがした。まぁ、あれは想定内だしその内慣れると思うから大丈夫。
よし次
目を覚ます?と目の前にちっちゃいウサギ…
ちっちゃいウサギ……?
喋るウサギ……?
というか、なんで『なの』……?
なにそれそんな生き物いたの?案内用AI?AIって事は生きてないの?機械?あ、違うの?人工知能?意味は確かコンピュータを使って、学習・推論・判断など人間の知能のはたらきを人工的に実現したもの。ふむふむ。とりあえず、生きてないのね。で、あのテンション。僕の姉さんにも勝るとも劣らないテンションの生き物?(もう生き物でいいよね)が存在するとは。恐ろしいな、Another Story。あと、何気にテンション高い二足歩行のリアルふわもこウサギはシュールだということを学んだよ。
はぁ、ようするに
「えっと、君は僕のお手伝いをしてくれるって認識でいいのかな?」
『いぇーすなの!』
「じゃあ、そのきゃらくたー?を作りたいんだけど教えてくれる?」
『んんーー!
その慣れてない舌っ足らずな言い方!めっちゃ好き!!!……ゴホン
キャラクター!作ろう!すぐに!!なの!!!』
「ぅ、うん。そうだね」
何か、AIの筈なのに凄く人間くさいというか、変なウサギ。というか、そこはかとなく姉さんを感じる言動にもしや姉さんが中に入っているのではと疑ってしまう僕なのでした。
案内用AIはとりあえず人型以外にしようと思ったんですけど、無難に妖精みたいにするか、クマかトラかで迷ってたんですけど、やっぱり可愛いのでウサギにしました!!ふわもこなのは願望です(`-ω-´)✧




