次々と面倒事がやってきました
メインキャラおひとり様追加。
眠い。めっちゃ眠い。死ぬほど眠い。
おかしい。10代は徹夜しても問題ないはずなのに。
やっぱりあれかな。最推しが執着型になったからかな。それ以外にも多々あったけど。
ヤンデレルートを攻略してるみたいで恐怖1割ワクワク9割な今日この頃。
でも大変だったんだよ。
食事を何とか乗り切り明日ギルドで待ち合わせしようとしたら……。
「ミシェルと一緒がいい。」
じゃあ社員寮兼私の住まいに泊まるかと提案すれば、すぐさま荷物を宿屋から持ち込んで来た。鞄一つだけだったけど。
社員寮の案内をすれば、質問は絶えず全てに答えた段階でちょっと疲れた。
最推しの願いは全て叶えたいけれど、ほら、私前世持ちじゃん?
生活基準といえば日本なわけで、この世界のは耐えられなかったから色々やらかしてるんですよ。
まずは鍵だ。社員寮は私が任意した者以外入れない仕組みになっている。
次にトイレ。土に埋めるとか下水処理の整っていない地下水路に流すとか耐えられなかったのだ。
あれ、匂いあがってくるんだもん。
お風呂もジャクジー付きの広々設計だし、キッチンはIH風に仕上げた。
あとは自動調節型冷暖房に、センサー型照明。お湯も冷水も出る水道や自動お掃除ロボット擬きだ。
全部魔石と呼ばれる魔法付与を行われたもので賄ってある。
魔石自体高額だけど、そこは令嬢なもので親のお金を使わせてもらった。繁盛してから返したけどね。
これだけでも規格外と言われるほどだが、普通の家ではここからが問題だ。
魔石は魔力を注がなければただの石ころと変わらないのだ。しかも膨大な魔力が必要となる。
でも考えて欲しい。ここはマンジェーズ。
美味しい賄い付き。試作料理は四六時中誰かが作っている。
MPやHPの最大値は食事で上がる。つまり、だ。
店内含めマンジェーズの従業員で魔力が事足りるのだ。助かるわー。
こんなんだからあれよね。常時引き抜きの話が耐えないのよね。
1人でも引き抜いたら魔力を注ぐために莫大なお金をかけてる普通の貴族は大喜びすることだろう。
王族も魔力の多いものは手の内に囲みたいのか、ひっきりなしに声がかかるらしい。誰一人応じたことがないけどね。
王族だから命令すればいいとか思うかもしれないけど、うちの従業員は何か忠誠心がヤバい。
一度命令を受けた子がその場で包丁を使って腕を切り落としたのだ。
もう何も言えなかったよね。うん。
すぐさま私の治癒魔法でくっつけたけどさ。
王族が顔を青くして帰ったあと、あっけらかんと痛いっスーって言ったあのアホはとりあえず殴っておいた。メンヘラ怖い。
そんなスキャンダル話しまでして、最推しにとりあえず空き部屋へ案内したのだが、その部屋は使われることはなかった。
「ミシェルの仕事の邪魔しないからもう少しだけ話し、しないか。」
話してる段階で私は仕事が進む気がしないとは言えなかった。仕事も大したことやってないしいいよーと、軽いノリで返したのが間違いだったわ 。
「誰だ、お前っ!!!」
「お前こそ。」
「僕はミシェル様に忠実な下僕!クリシーだ!」
そう、アホなメンヘラ従業員の乱入である。コイツも同担拒否勢だった。
「はっ、醜い顔でミシェル様に近づくとはこの不届き者めっ!」
「お前も俺に負けず劣らずだと思うが。」
「ぐぅっ……!だがミシェル様は僕の顔は嫌いじゃないって言った!」
あー、そーね。メンヘラだって知らなかったときはね。鑑賞には持ってこいの顔なのよね。
中性的で儚げな顔。見てる分にはヨダレものだ。
メンヘラは苦手だけど。
「ミシェル様ぁ、コイツ誰っスかぁ。まさか浮気ッスかー?」
「クリシー貴方と付き合った記憶はないですけど?」
「またまたぁ、照れちゃうなんて可愛いっスねー!」
「断じて違う。」
「あれっスか、お仕置されたいタイプっスか?」
「うん、黙ろうか。」
クリシーと話すとツッコミどころが多すぎて令嬢喋りはどこかへ行ってしまう。
メンヘラでもいいけど私の話しを聞いていただきたい。
「……ミシェル。俺が黙らせる。」
「え?ちょ、ちょっとお待ちに。」
「あ?やんのか?よし、表出ろお前っ!」
この後、裏庭が半壊しました、まる。
大剣を振るう最推し、素早さ重視の従業員。
鑑定スキル持ちの通りすがり従業員Bからは剣士とシーフの戦いですねー、うわー、というお声をいただきました。
遠い目をしないで止めていただきたかった。
高レベルな戦いすぎて誰も近づかなかったよね。
「~~っ、いい加減にしなさいっ!!!」
私がブチ切れるまでは。
「み、ミシェル様!?」
「あ、危ないだろ!」
大剣と短剣がぶつかり合う瞬間に間に入り結界魔法で2人をはじき飛ばしました、はい。
だってこのままだと社員寮まで崩壊しかねないし、やむを得ずやりましたよ。
「喧嘩も良いですけど、この庭どう責任をとるおつもりで?クリシー?アレン様?」
「うぅ……僕の貯金使ってくださいっス。」
「……俺も、ちゃんと支払う。」
「はぁ……誰かに被害の出ない場所でするか、被害の出ない物で戦ってくださる?」
「はいっス!」
「分かった。」
結局は何故か戦いは«ミシェル(様)のいい所を何個言えるか選手権»になり、会場が私の部屋なので数時間は謎の羞恥プレイだった。
「ミシェル様はな!声が綺麗だ!優しいし、女神様と言っても過言ではない!」
「あぁ、分かるな。だが陽の光を浴びたときは天使のような美しさもある。」
「……お前、中々分かってるじゃんか。」
「……お前もな。」
「……僕はクリシー。まあ、そうだな。仲良くしてやってもいいぞ!」
「……アレンだ。」
そしてなんか意気投合してるし。
いや、目の保養だよ!?不細工と不細工が拳をコツンと突き合わせて笑ってるんだから。
これがアオハルか!男のアオハルかっ!!って叫びたいぐらいだったよ。
でも、でもね。意気投合したときには既に朝日が昇ってたんだよ。
精神的に疲れました。
最推しも従業員も何か初めての男友達というか、喧嘩友達というか、好敵手というか、そんなんを手に入れたから嬉しかったんだろうね。
私には向けられたことのない、いたずらっ子のような笑顔は朝日より眩しかった。
「ミシェル様?眠いんスか?」
「大丈夫か?」
「え、えぇ。大丈夫ですわ。」
なんだろね、これ。今は昼近く。ギルドへ向かってるんだけどさ。
まさに両手に花。右を向けばカッコイイ最推し。左を向けば美しい従業員。
え、なに、私いつの間に逆ハーレムルート選択したんだろ?
私最推しルートしか選択してないよ?バグかな?
従業員には手を出す気はサラサラないけどね。
それにクリシーは獣人だから、この世界のどこかに番がいるはずなのだ。
因みに私ではないことは本人から聞いたから分かっている。
番じゃないのに一緒にいたいんスよー、と言われたのは記憶に新しい。
「それで?何でクリシーも着いてきているの?仕事は?」
「んー?僕の大切なミシェル様が怪我をしないようにサポートするっス!今朝ミシェル様のご両親には許可をもらって護衛ってことになったっス!」
「なに勝手なことをしているのですか。」
「えー?でも僕ちゃあんとアレンのあのこと黙ってたっスよ?」
ああ、お膝抱っこ案件か。
それは偉い。偉いけど。私を飛び越えて話しを進めるのはやめて。
獣人だから身体能力も高いし、番じゃないって分かってるから両親も従業員には甘いのだ。例え見た目がどうであろうと。
「はぁ……無茶だけはしないでちょうだい。」
「了解っス!」
「大丈夫だ。クリシーに何かあっても俺がミシェルを守るから。」
「おい、アレン!僕がミシェル様を守るんだよ!!」
「安心して突っ込んで行けばいい。」
「お前が突っ込んでいけ!前衛だろ!」
「ミシェルを守るのは俺だ。」
「バーカバーカ!僕はミシェル様のご両親の依頼だ!だからミシェル様を守るのは僕だっ!」
「依頼なんざなくても守れる。」
……この喧嘩いつまで続くんだろ。
早くギルド行って換金したいんだけど。
「もう置いていきましょうか。」
最推しも楽しそうだし。
ササッと行って換金して依頼書漁ってた方が有意義なような。
でもその後今より面倒なことになるような。
「あらら。性悪が下僕を増やしてるよー。」
前言撤回。今も面倒なことになってるわー。
・逆ハーレムルート進行中
神に誓って望んでやったことではないと供述しております。
・右側のお花
割と喧嘩は楽しかったと供述。機会があれば再戦を希望しているとのことで反省の色は見えない。
・左側のお花
いつかあの面ボコボコにしてやると供述しており、やはり反省の色は見えない。
・通りすがりの鑑定士
二度とあんな場面の立ち会いは拒否しますと供述。実は聖女のこと見たから知ってるけど黙ってるお人好し。
・やってきた面倒事
多分みんな予想はついてるあの方々。