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オーナーでした

黒い悪魔を倒すこと3104匹。

やっとダンジョンの最深部へと辿り着いた。


最推しが最新マップを持ってたんだけど、途中からアイツはきっとあそこにいる!という謎の勘を発揮させてマッピングされてない隠し通路を見つけてしまったから延々黒い悪魔を倒す羽目になってしまった。

とても疲れたが、途中MPポーションまで飲んでまでやってきたのだ。最推しに私の勇姿を是非とも刻み込んでいただきたい。


「ここがダンジョンボスの部屋だな。」

「ついに、ですわね。」


ボス。やっぱり大きい黒い悪魔なのかな。

いや、わりとさっきまでのも人間の子供ぐらいの大きさだったから恐怖だったんだけどさ。

今度は大人レベルの大きさだったら瞬殺するしかない。

長時間見てたら多分発狂する。


「よし……!行きますわ!」

「あぁ、頑張れよ。」

「はいっ!」


大きくて薔薇の花をモチーフとした紋章が書かれた扉をゆっくりと開ける。

虫系ならこう、目を細めてなるべく見ないように倒そう。


「……え?」

「あれがここのダンジョンボスだよ。」

「な、なんてこと、ですの。」


目の前のボスに思わず口が開いてしまう。

だって、だって!

ただのゴーレムなんだもん!

ボスだかなんだかどうでもいい!黒い悪魔の群れより、よっぽどゴーレム軍隊の方がマシだった!!!


「ミシェルは攻撃だと雷属性だから土ゴーレムとは相性悪そうだけど、工夫すれば大丈夫だ。」

「問題ありませんわ。」

「え?あぁ、弱点(ウィークポイント)を知ってるのか。流石だな。」

「いえ、知りませんわ。」

「ん?じゃあいったい……?」


「全力で殴りますわ!」


物理攻撃上昇、素早さ上昇、物理防御上昇。

殴り回復職(ヒーラー)、一度やってみたかったんだよねー。

いーっつも魔法だけだし。体動かしたら痩せるかもしれないし。ダンジョンダイエット!


「せいやぁぁぁぁっ!」

「……は?」


とりあえずお腹に一発と思って全力で殴ったら綺麗にまぁるく穴があいて、ゴーレムはサラサラと砂へなってしまった。

え?弱っ!!!

ダンジョンボスこんなに弱くていいの!?


「す、すごいな。回復職(ヒーラー)でこの威力……!」

「そ、そうですの?私は他の回復職(ヒーラー)を知りませんので、何とも言えないですわ。」

「他にこんな戦い方する回復職(ヒーラー)を俺は見たことない。」

「へ、へぇ。そうでしたか。」


え、この世界殴り回復職(ヒーラー)いないの!?元推しのインテリメガネは殴り回復職(ヒーラー)に近い立場だったはずなのに!

やっぱりあれ?見た目コケシになったからそういうのが関係してるのかな。

コケシのあの腕で殴ったらポキッと折れそうだもんね。


「ミシェル、ダンジョンクリアおめでとう。」

「あ、え、はい。ありがとうございます!」


最推しの今までで1番のキラッキラスマイルいただきましたぁぁぁ!

ヤバい、なにがってすべてがヤバい。

何だこの地上のすべての不細工(イケメン)要素を詰め込んだ人。

本当に私こんなに不細工(イケメン)とパーティ組んでいいの?モブとか悪役令嬢に暗殺されない?

というか、この笑顔に殺されない?尊死しない?


「じゃあ、あとはゴーレムの(コア)を回収して戻るか。ダンジョンの外に出るまで油断は禁物だからな。」

「了解ですわ!」


最推しに背中を押され(コア)を回収する。

いやぁ、さっきまでの黒い悪魔たちは倒せたものの近くに寄れず最推しに回収してもらってたんだよね。3104個もゴメンね。


「……あら?」

「どうした?」

「いえ、何でもありませんわ。」


わ、わ、私凄い!

3104個?3104(さいおし)!?

ふふん。愛がなせる技ですね、これは。


「それにしても(コア)は凄いですわね。宝石みたいに綺麗……。」


ゴーレムから取り出した(コア)はまるでトパーズのようで。

前世で売ったら莫大な金額になりそう。


「ゴーレムじゃあまり高値では売れないけど3日分ぐらいの生活費にはなるな。」

「これがそんなになるんですか。凄いですわ。」

「伯爵令嬢にはおやつ代にもならないかもだけど。」

「むぅ……私はそんなに贅沢者、で、は……あります、ね。」


だって食べても食べなくても見た目が変わらないんだもん。

そしたら美味しいものをお腹いっぱい食べたい。そう思うのは人間の性だと思う。


今日だってMP切れになるまで魔法を使ったのだから既に空腹だ。早くご飯食べたい。

ポーションで元気といえば元気だけどね。


でも、原理はよく分からないがこの世界ではポーションではなくても、食べ物や飲み物でMPもHPも多少回復する。

それに美味しいものを食べればMPやHPの最大値も上がるらしい。


だからこそ貴族は体力はともかく、ろくに魔法も使わないのに膨大なMPを保持してる者もいる。

まあ、使えないと魔力が暴発して死ぬから、美味しいものを食べたい者は自然と爵位は継がず騎士団や魔導師団、冒険者になる方が多いと聞いた。

爵位を継いだ、もしくは継がなきゃいけない者はどこかで発散するか、慎ましい食事となるのだ。


味付けもない草や甘くないデザート、モソモソとしたお肉。

一度だけ食べたあの味はできれば二度と味わいたくない。


「……ギルドにこの(コア)を買取ってもらったら、どこかにご飯でも行くか。」

「え?」

「あ、嫌なら良いんだ。ほら、せっかくパーティ結成したんだし、ダンジョンもクリアしたし、お、お祝いでも、だな……。」


最推しの尻窄みになる声。

でも私は聞き逃してない。

私は今デートに誘われた!

無論答えはイエスorはいの実質一択である。

病み期からのデレですよ。ただの可愛いかよ。


「……やっぱり、俺じゃあダメ、か。」

「はっ……!いいえ、行きますわ!今の間は嬉しくてつい、言葉を返すのを忘れてただけですもの!」

「無理、してないか?」

「いいえ、まったく!!!」


何たる不覚!最推しがきっとなけなしの勇気を振り絞ったお誘いにコンマ1秒で応えられないとは。

……修行だ。最推しが近くにいすぎて私は最推しを崇めることも、奉ることもしていなかった。奉納金だってまだ納めていない。

堕落した私を、私自身の手で根性叩き直さねば。


そうと決まれば、善は急げ。


「アレン様、でしたら私がこの街で1番お気に入りのお店でご飯にしましょう!お腹も空きましたし、ギルドに寄らないでいいですか?」

「俺はどこでもいいし、(コア)もミシェルのポーチだから荷物もない。ギルドには寄らなくてもいいが、本当に大丈夫か?(ブサイク)とだぞ。」

「もちろんですわ。」


ふぃー。今度はコンマ1秒即答対応。よし、いいぞ。昔の感覚を取り戻すのだ。

……前世はアニメのセリフやドラマCDに返してただけでただの痛い子だったけど、今は会話してるのか。凄い進化だ。

やはりここは神様にもお礼をしとくべきかな。

いきなり夢オチとかでしたとか言われたら私は世界を滅ぼす魔王になる自信しかないもの。

今度神殿に寄付でもしておきますか。


「そうかよ。……い、行くぞ。」

「はい!」


私より半歩分だけ前を歩く最推し。

顔は見えないけれど耳は真っ赤に染まってて、照れてるのが丸分かり。


あぁぁぁぁん!可愛い、可愛いよこの最推し!何、今日は可愛い日なの?明日はかっこいい日かな?

そして今この瞬間はデレ期なんだね!?病み期を乗り越えたんだね!!

できるならそのまま永遠にデレ期のちダンナ期になってくれていいんだよ、ばっちこい!


「アレン様?」

「……なに?」

「そっちじゃなくて、あっちですわ。」

「──っ、そういうのは先に言え!」

「言う前に歩き出したのはアレン様ですわ。」


ドジっ子属性追加ですか。なるほど。

不細工(イケメン)で、闇を背負ってて、強くて、照れ屋で、多分寂しがり屋で、ドジっ子。

んんん、私の最推しはこれだけ色々詰め込まれてる、凄い、素晴らしい!

もうこれはやはり私の今世のゴールは最推しとの結婚しかありえない。


「それで?ミシェルのお気に入りの店ってどこなんだ?」

「マンジェーズという所なのですがご存知ですか?」

「あ、あの1年先まで予約が埋まるマンジェーズか!?」

「えぇ、そうらしいですわね。」


値段設定はピンキリ。平民でも予約さえ取れればそれなりの食事は楽しめるマンジェーズ。

お忍びで王族が来てるらしいけどそこはよく知らない。


「そんな所に飛び入り、しかも不細工が入れるわけがないだろ!」

「誰が決めたんですの?」

「誰がって……客も店も嫌がるだろ。俺みたいなの。」


ああ、デレ期が終わってしまった。くそぅ。

でも最推し覚醒をした私に抜かりはない。

誰が最推しを悲しませるもんですか!


「なら問題ありませんわ。だってマンジェーズのオーナーは私ですもの。オーナー専用の入口も部屋もあるので、絶対にアレン様に嫌な思いはさせませんわ。」

「……は?」


逆にこれでされたら出禁とかクビにするから安心して欲しい。

私はあの店で一番偉い!例え暴君だと言われようと最推しを悲しませるならみんな有罪。


「作法も気にせず楽しくお食事にしましょう。そうですわね、この間父から貰った20年物のワインもありますし、冒険者向けのエールも置いてますし。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。」

「はい?」

「ミシェルはマンジェーズのオーナー?」

「ええ、7歳の時に父にお強請りして土地と建物を貰い、シェフや給仕係は私が一から育てましたわ。」


この世界日本食みたいな繊細な食事がなくて我慢できなかったからなんだけどね。

いやぁ、育てるのに1年かかったよ。

流石日本食奥が深い。そして調味料はあるくせに素材が違いすぎて失敗した料理は遠い目をしたくなるぐらい食べた。


「……ふはっ。ほ、ほんとミシェルは予想の斜め上をいくな!」

「そうでしょうか?」

「あぁ、スゲェやつだよ、ミシェルは。」


た、滾る。最推しの大笑い。か、カメラがないのが悔やまれる!!

これ!これですよ!最推しはこの笑顔が似合うのですよ!!

いや、待て。戦闘中の真剣な表情も捨て難いな。いやいや、待て待て。寝顔だって美しいよね?


「じゃあ、オーナーさん。案内頼んだぜ。」

「お任せ下さい!」


……よし、まずは記録装置とかないか調べよう。

最推しアルバムを作らなくちゃ!

・オーナーだった

日本食やB級グルメが食べたかったんです。

そしたら何か流行っちゃってビックリだよね!


・デレ期がすぐ終わる

ヒロイン(笑)が規格外過ぎて笑った。

すぐ病むのは仕方ない子である。


・マンジェーズ

おにぎりから懐石料理、B級グルメに郷土料理。日本のすべてが詰まってる。

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