最推しを誘ってみた
私が前世で愛したアニメの世界へ今どき流行りな転生を決め込みました。しかも伯爵家ご令嬢として。
神託を受け、聖女というステータスをいただき、よし、私勝ち組ぃぃぃ!と喜んだものの初めて見た鏡の前で絶望した。
頭を床に打ち付けたの前世で推しが死んだとき以来だよ。
でも!分かる!?この気持ち!!
キャラがみんなイケメンで腐女子やら腐男子を大量生産したアニメの世界なのに!
「私はただの白ブタやん。」
やんやんややーん。
違う、現実逃避をしている場合じゃない。
そしてこれでピンと来た人は私と前世の地元は同じだ。
「え、聖女こんなブスなの?世界の終わりでしょ。これ。こんな顔で世界救う手助けすんの?いや、荒れるわ。大炎上事件だよ?どうするの、誰が鎮火するの?誰も助けてくれないよぉぉぉ!」
聖女ポジとか将来的に神殿務めじゃん?
冒険者である推したちの治療とかできるかもじゃん?
ワンチャン推したちのパーティ誘われたら即決案件じゃん?
せっかく親に内緒で推したちと同じ時代に生まれたと調べあげたのに。それなのに。
「何このゴブリンとかオークみたいな顔と体。ぶっっっっさいくぅぅぅ!子供なのに可愛くない。気持ち悪い。無理。吐ける。成長したら美女?いや、この骨格は無理な気がする。てか無理でしょ?仮に美女に成長しても黒歴史過ぎるわ、この顔!!」
両親も侍女も執事もみんな私のこと可愛いとか言うからさ。
信じたじゃん。だって子供だもん。
裏切られた。
もうお嫁いけない。
寧ろいきたくてもこの顔じゃ無理でしょ。
お金にものを言わせて愛のない結婚しかできないんだ。
「絶望的過ぎる……。神様、私はなにか前世でやらかしたのでしょうか。朝から晩まで働き、高給取りと呼ばれ、稼いだお金はすべて推したちに使ったからでしょうか。あれですか、募金したらもう少し変わったのですか。ボランティアしたら満足でしたか!?くっそぅ!どうせ私は推し以外は興味無い女でしたよーっだ!だってオタクだもん!!悪うございました!これでいいか、このクソ神様ぁぁぁぁ!」
……と、日々神様に文句を言って幼少期を過ごした訳ですが、ごめん。神様。本気で謝る。スライディング土下座華麗にやります。
「ひぃっ……。ちょ、冒険者アレンだ。い、行くぞ。」
「うわっ、最悪。アイツが来るなら朝イチで依頼受注するべきだったな。」
「Sランクパーティ青の狼見れるのは良いけど、アイツ不細工過ぎて見てらんねぇよなぁ。」
成長するにつれ謎の告白を受け続け、財産目当てだろコノヤロウとやさぐれてたけど、薄々気づいてた。でも信じたくなかった。
「美醜逆転世界……。そして迫害される最推し。」
通常の推したちはこの世界に習って見事に黒ブタと白ブタとコケシだけど、最推しだけは前世と変わらぬイケメン!
これは、あれだね?
私のターン!!!
今なら秒でレベル上げしてSランク冒険者なれるくらいのアドレナリンが出てる!
ドラゴン、たおす、わたし!
おっと、知能が3歳児になってた。
落ち着け、落ち着くんだ、私。
今日は冒険者登録をしに来たんだ。
自分磨きの旅をすると両親に頼み込んで、冒険者デビューをするって決めたんだ。
そしたらどこかにいるであろう、せめてフツメンの人と結婚するんだって思ってたんだ。
美醜逆転世界なら私も最推しアレン様に近寄っても許されるかもしれない。
でも、流石にいきなりナンパする度胸もないし……。
目の保養をしたら冒険者登録して、Sランク冒険者に教えてもらうという口実で声をかけよう!
よし、これなら怪しくない!いける!
「チッ……アレン。お前なんで着いてくるんだよ。」
「ちゃんと均等に配分しますから、宿に戻ってていいですよ?」
「だよなー。アレンいると女の子逃げちゃうしー。」
……元推したちよ。今なんと言った。
私は耳が悪くなったのか。え、回復魔法かけるべき?
「……そんなこと言ってまた配分しない気だろ。お前ら。」
「んなことあるかよ。っつーか、多少金額減って嫌なら抜ければ?お前いない方が状況に併せて臨時パーティ組みやすいし。」
「それもそうですね。この間は誰もアレンのせいでパーティに入ってくれなくてダンジョン攻略に時間がかかりましたし。」
「え、アレン抜けんの!?やりぃ!そしたらこの間の女剣士ちゃんとか誘っていいー?」
伯爵令嬢らしく、とか。
最推しに変な目で見られたら、とか。
そんなことどうでもいい。
元推したち。
お前ら流石に人としてアウトだ。
ドスドスと音を立てて青の狼へと近づく。
元推したちが目をキラキラさせて私を見てるが、もう君らの名前すら忘れたわ。
いらない記憶は抹消します。
「ヒューッ!超かわい子ちゃんじゃーん。」
「う、美しい……。」
「やぁ、俺たちに何か用かな。お嬢さん。」
うん、ほんと黙って?
「貴方たちに興味はありませんわ。私、アレン様にお話がありますの。」
令嬢らしい笑顔で断り、最推しと向き合う。
うわ!肌綺麗!そして知ってたけどイケメン!
お鼻ちっちゃい!完璧な肉体美!
え、ほんとこの人なんであんな不細工言われてるの!?美しすぎて僻みだと言われた方が納得できるんですけど!
「あの。」
「えっ!お、俺ですか?」
「はい。冒険者アレン様であってらっしゃいますか?」
「あ、え、えぇ。俺がアレン、ですけど。」
「まあ!良かったわ。あの……差し出がましいとは思うのですが、良かったら私とパーティを組んでいただけません?」
「……は?」
キョトン顔いただきましたぁぁぁ!
可愛い!そしてイケメン!
え、ここギルドだよね!?天国じゃないよね!?
「聞こえませんでしたか?私は冒険者登録をしに来たのですが、初心者ですし、Sランク冒険者のアレン様がいらしたので色々教えていただきたかったのです。」
「あ、あぁ。お、俺で良かったら……。」
「はいはーい、すとーっぷ!Sランク冒険者を探してるなら僕らが教えてあげるよー。」
「そうですね、アレンより私たちの方が貴女のためになりますしね。」
「おー。じゃあ、行こっか。お嬢さん。」
おい、ほんとまじ黙れ。
アレン様の声が聞こえないでしょうが!
「結界魔法。」
「なっ……!」
「私は教えてもらうなら嫌味を言う方より、言われても耐えれる優しい殿方の方が好みですわ。」
ニコリとブスマイルを向ける。
結界魔法覚えてて良かった!
黒ブタに腕掴まれたら見た目だけじゃなく鳴き声まで私もブタになるとこだった!ぴぎぃー!
「ということで、アレン様。お願いできますか?」
「……よろしくな。」
はぁぁん。カッコイイ。
目がちょっと潤みながらも、嬉しそうな笑顔。
ご飯100杯食べれる!
結界魔法を解けば、アレン様が手を前に出したので咄嗟に掴んで握手。
その間もずっと笑顔を向けられてて、私の方が恥ずかしくなった。
ファンサしゅごい。前世から惚れてるけど惚れ直した。
「じゃあ、まずは冒険者登録でいい、のかな?」
「はいっ!よろしくお願いします!」
最推しは私が守ってみせます!
・美女なゴブリン
必殺技はブスマイルである。
伯爵令嬢なので猫かぶりはお上手。
・最推し不細工
いつも配分半分は持ってかれてる可哀想な方。
性格は歪んでないけどヒロインの知ってる彼より寂しがり屋かもしれない。
・元推したち
美醜逆転効果か。性格が悪い方へと変わった方々。
本来はチャラ男と腹黒と寡黙。
……あれ?元もそんなによくない?