嫉妬の魔王
自称魔王こと、俺、勇者は困惑していた。
勇者として、幼いころから生きてきて、女性に対する欲求は枯れ果てたかと思っていた。
なのに、嫉妬の魔王のこちらを恨めしげに見る姿がどうにも心に刺さるのだ。
一目惚れという奴だろう。
それはともかく、向こうは完全に怒っているようである。
連盟の王子のマネをして、軽口をたたいたのが良くなかったのだろうか?
確かに、魔法使いと神官の視線が冷たく刺さった気がしたが…。
そんなことを考えていると、何故か嫉妬の魔王が俺のひざの上に座っていた。
嫉妬の魔王が首を傾げていた。
俺は、どうしていいかわからないので、そのままにしていた。
嫉妬の魔王が立ち上がる。
俺に何かしているようだったが、何かをレジストした感覚があるのみだった。
嫉妬の魔王はまたも予想外だったのか、あたふたしていた。
何となくそれが可愛らしく感じ、口元が緩むのを無理やり、王気でごまかす。
俺の放った王気が空を揺らし、いくつもの雷が地上に落ちる音がきこえる。
嫉妬の魔王は悔しそうに俺をにらみつけていた。
こういう時はどうすればいいんだっけか?
連盟にいた王子の話を思い出す。
「女の子を怒らせた時、どうすればいいと思う?」
「知りませんよ。」
「適当に謝っておけばいいのさ!」
あっはっはっはと笑う王子を見て、なぜか殴り倒したくなった。
さて、謝るか。
俺は、謝ろうとして、先ほどの
魔法使いと神官の冷たい視線を思い出す。
…。
王子を信じるか、仲間信じるか。
俺は、今まで一緒に戦ってきた仲間を信じることにした。
みんなの言葉を思い出す。
「相手は怒らせるだけ怒らせた方がいい。その方が隙が出来るからな。そんで、最後に一発でかいのを盗む。これが、俺のやり方だな。」
「集中して、相手を逃がさない。一挙手一投足を観察して、全て学ぶんです。自分はそれしかできないですから。」
「気づいた時には、何もできない。そんな状況に追い込むのが一番楽しいわ!私、好きな物は最後に食べる派だから。」
「…屈服。」
「そんなもんか?期待外れもいい所だな!」
俺は、馬鹿にしたように嫉妬の魔王を笑った。
嫉妬の魔王の視線に濃密な殺気がこもる。
嫉妬の魔王の王気が蛇のように絡みついてくるのがわかる。
兆発は効いているようだ。
一挙手一投足を見逃さずに嫉妬の魔王の気配を辿る。
俺の目の前に嫉妬の魔王が現れる。
嫉妬の魔王は空間移動のようなものが出来る可能性があるとふんでいたので、現れた嫉妬の魔王が何か動く前に両腕を掴んで、円卓に押さえつけた。
嫉妬の魔王は自分の反応速度をはるかに超えた速度で、押さえつけられたため混乱していたが、最早彼女には何もできない。
俺は勢いに任せ、嫉妬の魔王の王気を自分の王気で強引につかむ。
嫉妬の魔王は、キッと俺をにらむが関係ない。
抵抗するなら体の自由を奪うまで、俺は、王気を嫉妬の魔王の王気を押し戻し、体に直接俺の王気をねじ込んだ。
嫉妬の魔王はしばらく、俺の王気にあてられた後、気絶した。
俺は、少し罪悪感を感じ、仲間の方を見るとみな、満足そうにしていた。
多分間違っていなかったのだろう。