革命一日目〜お城へ〜
マイケル先生と私は学園の門に向かいました。マイケル先生が持っていた白旗を革命軍に渡すと、その白旗は門の上の方に掲げられました。門はいつの間にか鎖でしっかり縛られており、〝封鎖″の看板がつけられていました。
「こうしておけば、暴動軍は学園には攻め込んでこないでしょう。あとは、僕らが門のところで見張ってます。安心して下さい。」
「頼むよ。さあチョコさん、街の方へ行きますよ。商店街の様子を確認したいですし。」
先生はそう言うと、急ぎ足で街の広場の方角へ向かいました。
商店街に着くと、どの店もすでに閉まっていました。扉に木板が打ちつけられており、人気が全くないので、街はまるでゴーストタウンのようでした。そんな街の中を、革命軍の人達が何人かで見回りをしています。
「商店街の人達は?」
「落ち着くまで外へ出ないように言ってあります。あと、食べ物屋や洋服屋、宝石店は看板も外に出さないように言っておいたので、よっぽど暴動軍に狙われるような事はないと思います。
‥‥暴動軍は、「正義」を旗印とし、じわじわと王都に向かってきています。王都までの道中にあるお店が、暴動軍に襲われて商品を全て奪われてしまったようです。ここの商店街も危ないですので、僕らが残って対応します。」
「ありがとう。それで王都の貴族達はどうなつた?」
「不正が明らかな貴族は、革命軍が捕らえています。弾劾裁判を行う為に、お城へ向かっています。」
「お城‥‥。お城で裁判を行うんだね。」
「はい。暴動軍がお城を目指して進んでいるようなので、革命軍はお城に先回りして王族の身の安全を確保する予定です。」
「分かった、ありがとう。‥チョコさん、お城へ向かうよ。」
「はい。急ぎましょう。」
私は〝お城″と聞いて居ても立っても居られなくなりました。
『マカロン様、暴動軍はお城を目指しています。暴動軍が来る前に、革命軍が先回りしてマカロン様達を守ってくれるはずです。どうかご無事で!』
私は届くか分からない心の声をマカロン様に送りました。
マイケル先生と急いでお城へ向かう中、お城が見えてきたところで、人々の激しく騒ぐ声が聞こえてきました。
ワーワーワー!ワーワーワー!!
「王様、出て来い!お前達は用無しだ!お城から出て来い!殺してやる!」
ワーワーワー!ワーワーワー!!
「王様を出せー!」
出せ、出せ、出せ、出せ!ワーワー
なんと暴動軍がすでにお城まで攻めてきていました。城内へ雪崩れ込んできそうな勢いの暴動軍を、革命軍が懸命に盾で抑えています。革命軍が、暴動軍に向かって叫びます。
「王族を殺してどうするんだ!王族を殺したら全てが解決するのか?お前たちは「正義」をかざして国を崩壊させたいのか!」
「煩いぞ!お前たち革命軍はどっちの味方だ?」
革命軍と暴動軍がぶつかり合う中、マイケル先生と私は暴動軍と合流しました。
「国が崩れたら、また俺達で作ればいいんだ!」
そうだ、そうだ!そうだ、そうだ!
暴動軍はどんどんヒートアップしてきました。そんな中、マイケル先生が暴動軍に向けて大声で呼びかけました。
「お前達は貴族と王族を殺すと言うのか?後は自分達で国をつくる?お前達が具体的にどう国を運営するというんだ?他国との交流は出来るのか?世界情勢は分かっているのか?諸外国は、お前達の治める国などすぐに攻め滅ぼすぞ。‥それでもお前達は、自分達が国を運営していけると言えるのか!」
「‥‥えっ?‥あなたは‥マイケル先生じゃないですか。どうしてここに?‥あなたは‥まさか私達の敵じゃないですよね?」
「‥敵だとか味方だとか、そんな物は最初からないんだ。目を覚ませ!お前達は命がけでここまで来て、本当は何をしたかったのか思い出せ!」
「‥‥。」
暴動軍の中には、マイケル先生の教え子達がたくさんいたようです。マイケル先生に叱られて少し落ち着いた様子をみせました。
それでもまだ緊張状態が解けない中、王太子様とマーガレット様が二階のバルコニーに出てきました。暴動軍に真っ直ぐ向き合って立っています。
暴動軍は、この二人が出てくるや否や、今度はお二人に向かい罵詈雑言を浴びせ始めました。彼らはもう不敬罪どころか色々な罪を犯してきました。なので、もうどうせ死刑は免れないのだからとばかりに、今度は地面に落ちてる小石を拾っては、二階にいる王太子様とマーガレット様に向けて投げ始めました。
王太子様!マーガレット様!!
私は‥暴動軍から投げられる大量の小石を体中に浴びながらも、堂々と立ち続けるお二人を見て、悔しさとやるせ無さでいっぱいになりました。あのお二人が一体何をしたというのでしょう‥‥。
マーガレット様は、本当は王太子様の前に立って盾となり、王太子様を飛んでくる小石から守りたいでしょうに‥‥今は護衛ではなく婚約者、いえ后として隣に立っているからなのでしょう‥‥。王太子様の前に出る事なく、二人して並んで立ち、罵詈雑言と小石の攻撃に耐えています。
「やい、不細工な后だなぁ、男女かよ!無駄にでかい体しやがって!」
「王太子だとか后だとかいらないんだよ!死ねよ!」
暴動軍の暴言と小石の攻撃は全く緩みません。
革命軍の盾を超えて、小石がお二人のところへ飛んでいくので、革命軍も小石を防ぎようがないようでした。
小石が何個かマーガレット様の額に当たったのでしょう。マーガレット様は、額から血を流しています。
それでも逃げたりせず、微動だにしないマーガレット様に、いつしか暴動軍の中にも小石攻撃をやめて、我に返る者も出始めました。ですが、まだまだ全体としては攻撃は続きました。
私は段々と腹が立ち、思わず暴動軍に向かって叫んでいました。
「あなた達は、いつまでその石を投げ続けるんですか?このお二人は、あなた達に対して逃げもせず、真っ直ぐ向き合って立っているのですよ!何故あなた達も真剣に向き合おうとしないのですか!
これが、あなた達が命がけではるばるここまで来てしたかった事なのですか!」
暴動軍は、一瞬シーンとしたものの、また騒ぎ始めました。
「誰だ、お前は。関係ない奴は引っ込んでろ。とやかく言うなら、お前も殺すぞ!」
「そうだ、そうだ!だって、こいつらを殺さないと俺達は死刑になるんだ。死刑は嫌だ!生きてやる!」
そうだ、そうだ!王族も貴族も敵だ!殺してやる!
ああ、もう駄目です。彼ら暴動軍は本来の目的を忘れて投げやりになっています。
私の目の前で、マーガレット様の目に大きな石が当たり、マーガレット様はとうとう倒れてしまいました。王太子様は、マーガレット様を抱きかかえながらも、懸命に我々の方を向いて立ち続けています。
マイケル先生も私も革命軍も、もう何も言えなくなってしまいました。だって彼ら暴動軍には、私達が何を言っても響かないようでしたから‥‥。私達は途方に暮れてしまいました。
暴動軍は、私達の予想以上に過激化していたのです。




