マカロン様との再会
私は高等貴族学園に向かって走っていました。王都の中を走っていると、雑貨屋の前にピエンさんがいました。若くて逞しい男性と楽しそうに話しています。
「チョコー、そんなに慌ててどこに行くの?」
「大切な事に気付いたの。だからそれを今から大切な人に伝えに行くの。」
「へぇ〜、頑張ってね。」
ピエンさんが私に手を振る様子を横目で見ながら、私は先を急ぎました。
またしばらく行くと、アテナ商会の会長が見えました。
「チョコさん、お急ぎですか。また占い講習の件、頼みましたよ。」
「はーい。」
会長は、私の占い本を持ってるお客様と一緒に私に手を振ってくれてます。私は軽く手を振り返してから、先を急ぎました。
しばらく行くと、今度は私の侍女のマリーとモハメドさんが見えました。二人で仲良く公園のベンチに腰掛けて屋台の焼き肉の串刺しを食べています。マリーは私に気付いて声を掛けて来ました。
「お嬢様ー、そんなに急いでどこへ行くんですかー?」
「大切な人に会いに行くのー!」
「慌てて転ばないで下さいね〜。」
私は後ろを振り向かずに、片手だけあげてマリーに応えました。段々と疲れきたので、走るのをやめて歩き出すと、サトル君がいました。薬草のお店で、店主と店先で話してましたが、私に気付いて声をかけてくれました。
「あっ、チョコだ。僕、やっと植物の鑑定も出来るようになったんだよ。お陰で、色んな効能のある薬が作れるようになったんだ。」
「サトル君、おめでとう!」
「チョコのアドバイスのおかげだから、ありがとう。」
サトル君ともすぐに別れて、私は先を急ぎました。
もう、足がガタガタで少しだけ道沿いのベンチに腰掛けようとしたところ、モアさんとノア様に会いました。今度は私が先に声を掛けました。
「モアさん、ノア様、こんにちは。」
「チョコ、凄い汗よ。どうしてそんなに急いでるの。」
「大事な用があるの。」
私は、そう言ってモアさんに笑いかけました。こんなに疲れてるのに、私の心はとても晴れ晴れとしていていたのです。
「チョコさん、幸運を祈りますよ。」
相変わらず察しのいいノア様が、そう言って私に微笑み、モアさんを連れて去って行きました。
「チョコ、大事な用って何ー?」
後ろの方でモアさんの声が聞こえましが、立ち止まらずに私は先を進みました。
王都の中を走ったり、歩いたりしてとうとう高等貴族学園の近くまで来ました。すると、マイケル先生が立っていました。
「チョコさん、どちらへ?もう夕方ですよ。暗くなる前に寮へ帰って下さい。」
「先生、すみません。高等貴族学園へ大切な用事があるんです。すぐに戻りますので、どうか行かせて下さい。」
私は先生の目を真っ直ぐに見て訴えかけるように言いました。先生は、黙って私の両肩を持ち、くるっと私を高等貴族学園の方向へ向かせると、両手でポンッと背中を押してくれました。
「良いじゃないですか。行ってらっしゃい!」
先生は、そう言って私を見送ってくれました。
「暗くなる前に帰るんですよー!」
「はい。先生、ありがとうございます。」
私は先生にお礼を言って先へと進みました。そして、やっと高等貴族学園の門まで来ました。
ハァ、ハァ、ハァ、
私は息を整えると、ヨシ!と気合いを入れて高等貴族学園の門をくぐりました。すると、後ろから、私ではない誰かの苦しそうな息遣いが聞こえてきました。
ハァ、ハァ、ハァ、
気になって振り返ると、マカロン様がいました。汗だくで、足をガクガク震わせてました。
「‥マカロン様!私、マカロン様に会いに来たんです!って、大丈夫ですか?」
「ハァ、ハァ、うん、僕もそう、チョコに会いに行ったんだ。ハァ、ハァ、で、また戻って来たんだ。やっと、会えた。」
マカロン様はそう言うと、地面に座りこんでしまいました。背中をそらせて両足を伸ばし、空を仰ぎ見て、相変わらず息をきらしていました。
「まさか!私に会いにって‥私がいる学園に行ったんですか!それでまたここに戻って来たんですか!?」
「マカロン様、なんて無茶な!‥でも何で途中で会わなかったんでしょうね?」
「本当、何でかな。でも、やっと会えた。」
「はい。会いたかったです。」
私はそう言うと、マカロン様の顔をじっと見つめました。久しぶりに見るマカロン様の顔は、少し大人っぽく見えました。
あんまりじっと見たせいか、マカロン様は目を逸らしてしまいました。
「‥あまりじっと見ないで。」
「感動の再会にそれはあんまりです!もっとよく顔を見せて下さい!」
私はそう言ってマカロン様の隣に座り、両手でマカロン様の顔を掴み、私の方へ向けました。
「不敬罪になる?」
「‥ならない。」
「目を逸らしますか?」
「‥逸らさない。もう逃げない。これからは僕がチョコを追いかける。」
マカロン様は、そう言って私の手に自分の手を添えました。そして、本当に私から目を逸らさずに、私を見つめてきました。
学園の門の所で、座りこんで見つめ合う私達を、皆んなが不思議そうにチラチラッと見て行きます。
私達は、何だかとても可笑しくてずっと顔を見合わせて笑っていました。




