夏休み前〜すれ違い〜
先日マハム様とお茶をして以来、私は少しふわふわしていました。
「チョコ、チョコ聞いてるの?」
「‥あ、グスタボ君。何?」
「夏休みに生徒会で集まる日を決めてたんだけど、来週の週末に街の喫茶店で集まる事にしたの。チョコは、例の仕事休めそう?」
「あっ、うん。」
私はぼーっとしていて、今が生徒会の話し合いの場だという事をうっかり忘れていました。
「‥‥チョコ、最近何だかボーッとしてるけど大丈夫?‥色々悩みもあるだろうけど、まずは学園祭の準備に集中して。ほら、忙しくしている方が、色々考えなくて済むかもよ。それに学園祭が縁で、隣国の太鼓演者の方達との良い出会いがあるかもしれないし。ねぇ、エリナ。」
「‥そうね。太鼓演者の方達、とても筋肉質でワイルドで素敵でしたからね。異性としては魅力的です。でも、私達には少し大人過ぎませんか?」
「やぁねえ、歳の差なんてあればあるほど良いのよ。特に男性の歳上なんて最高じゃない?」
「グスタボ先輩、失礼ですよ。太鼓演者達、まだ10代なんですよ。大人びて見えてもまだ若いんです。‥‥ただ、太鼓演者達は結構な遊び人が多いんで、うっかり口説かれても、お付き合いするかどうかは慎重に考えた方が良いですよ。例えるなら、地球でいうイタリア人男性的な感じです。僕の国は男女問わず、恋愛に貪欲でガンガンアプローチするタイプが多い事で有名なんです。異性にリードして欲しい人には、ピッタリの相手なんですけどね。」
私は、パウエル君の話で隣国の人がイタリア人男性的と聞いて少しドキッとしました。確かに隣国のマハム様は、イタリア人男性的なタイプです。しかも、年齢の割に大人っぽいですし。
もし、私がマハム様とお付き合いしたら‥‥マハム様ならきっと頻繁にデートをしてくれるだろうし、いつも素敵な所へ連れて行ってくれて、連絡もまめにくれるだろうし、恋人としては申し分ない気がしました。
‥‥一方、マカロン様とは、デートどころか今は連絡もとってないですし、肝心のマカロン様はいつもジューン王女にばっかりピッタリくっついてますし‥‥。
私、本当にマカロン様の何が良かったのかしら。あんなに不器用で、人見知りで、マイナス思考で、真面目で、言葉足らずだし、つまらないし、時々しか積極的になってくれないし‥‥。
でも、それでもデートするならやっぱりマカロン様が良いと思えてしまうのです。どんなに変なデートでも、リードなんてしてもらえなくても、一緒にいたいのはやっぱりマカロン様なんです。
私、やっぱりマカロン様がいい。会えなくても、放っとかれても、マカロン様が他の女性といつも一緒にいても、マカロン様が浮気しないって信じてるし、私を好きって言ってくれたのは嘘じゃないって信じてる。
「エリナさん、マロンさん、私やっぱりマカロン様が好き。マカロン様に会いたい!」
私は生徒会の話し合いの最中なのに、思わず心の中の声が口に出てしまいました。
「‥青春ですね。良いじゃないですか。マロンの話では、チョコ先輩が「押して駄目ならひいてみろ」作戦をしてると聞きましたが、次は「ひいて駄目なら押してみろ」っていうのはどうでしょう?」
パウエル君が、そう言って私の背中を押してくれました。
「アハハッ。何それ、ひいて駄目なら押してみろ?そんなことわざ初めて聞いた。」
「ええ、今作りました。」
パウエル君と私の話を聞いてた皆んなが、私を見て口を揃えて言いました。
「チョコ、生徒会の話し合いはもういいから、マカロン王子に会いに行って。その気持ちをすぐ伝えてきて!」
「うん、皆んなありがとう。私、やっと分かった。やっぱりマカロン様が良い。モヤモヤしてないで、ジューン王女の事をもう一度はっきりさせてきます。そうしたら、きっと心がスッキリするし、学園祭の準備にも集中できます。だから、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
私はこうして学園から出て、マカロン様のいる高等貴族学園を目指して走りました。
コンコン、
「はーい。今開けます。‥ってチョコじゃないでしょうね。まさか、怖気付いて帰ってきたんじゃ‥‥。ってマカロン王子!」
なんと、チョコが生徒会室を出て外を走っている頃、生徒会室の扉をノックして入って来たのは、息を切らしたマカロン王子でした。
「ハァ、ハァ、あの、チョコは?今日ここにいるって聞いたんだけど。」
「‥‥チョコはマカロン王子のいる学園に向かって走って行きましたよ。」
なんと、チョコとマカロン王子は行き違いになっていました。
「分かった、ありがとう。行ってみるよ。」
そう言うと、マカロン王子はすぐに生徒会室を出て行きました。少し経ってから窓の外を見ると、一生懸命に走るマカロン王子の姿が見えました。
「‥青春ね。」
「全く、あの二人は不器用で似た者同士ね。お似合いよ。」
「お幸せに。」
生徒会室に残ったメンバー達は口々にそう言いながら、マカロン王子の走る後ろ姿をいつまでも見送っていました。




