夜会会場から逃げてしまいました
私の頭の中では、先程マカロン様とジューン王女が一緒にいた場面が何度も蘇り、とても嫌な気持ちになりました。
二人は特に抱き合っていたわけでもないのに、ただ一緒にいただけなのに、何故こうも私は嫌な気持ちになるんでしよう。
私はこんな自分が嫌になりました。泣きたくないのに、涙も出てきてしまいました。
グスタボ君とエリナさんにも見つからないように、どこかへ行って、溢れてきた涙を早く拭わなければなりません。
でもどうして、こんなにも涙が溢れてくるのでしょう‥‥。
私とマカロン様、つい昨日も魔道具を通じて仲良くお話をしていたのに。
マカロン様とジューン王女が一緒にいるあんな場面、見たくなかったです。
私はいつしか早歩きになっていました。
「わっ、危ない!」
私は前方からやって来た男性にぶつかってしまいました。
「ごめんなさい。良く前を見てなかったです。本当にすみま‥‥。」
「君、泣いてるの?」
そう言って、ぶつかった男性が私にハンカチを差し出してくれました。見たことのない男性です。
「ありがとうございます。あの‥‥。」
私は彼の名前を聞こうとして、自分も名乗っていなかった事に気付きました。
「あっ、すみません。私、チョコ・シリアルと申します。ぶつかってしまいすみません。それに、ハンカチをありがとうございます。」
「いえ、大丈夫です。‥僕は隣国で父が外交官をしています。マハム・シビエラです。宜しくお願いします。」
「こちらこそ宜しくお願いします。」
私にハンカチを渡してくれたマハム・シビエラ様は、褐色の肌に彫りの深い顔立ち、艶やかな黒髪がウェーブした美少年でした。
歳は私と同じか一つ上くらいでしょうか。私は彼にしばらく見惚れていました。少し首を傾げながら微笑む彼は、とても色っぽい雰囲気がありました。私は何となく目のやり場に困り、目を逸らしてしまいました。気付けば、とめるのにあれほど苦労した涙も止まっていました。
「あの、夜会をどうぞお楽しみ下さい。私は大丈夫ですので。」
「‥君はどうするの?」
「一緒に来た友人達に声をかけてから、もう帰ろうと思います。」
「送らせてくれないか。」
「えっ、本当に一人で大丈夫ですので、これで失礼しますね。」
私は、隣国の方に迷惑はかけられない為、急いで会場に戻り、グスタボ君とエリナさんに声をかけました。
「エリナさん、グスタボ君、私お腹壊しちゃったみたい。もう先に帰るね。ごめんなさい。」
「えっ、チョコ‥。」
「待ちなさい、嘘なんでしょ。何かあったんじゃ‥。」
エリナさんとグスタボ君が何か言っていたのに、私は聞こえない振りをして、先に帰りました。
そして、その夜は魔道具の通信機の電源を切りました。
私は、エリナさんとグスタボ君に嘘をついた事と、魔道具の電源を切った事に、とても罪悪感を感じたまま、眠りにつきました。




