先輩達のいない生徒会室にて
中等貴族学園の卒業パーティーが終わると、三年生は完全に学園がら卒業してしまい、学園内の食堂も、図書室もとても閑散としていました。静かになった学園の中を歩きながら、私とエリナさん、グスタボ君の三人で生徒会室へと向かいました。
今日は私達三人が、リーダーとなって行う初の生徒会活動の日です。
手際良くエリナさんが指示を出してくれるので、私達は新しい年度の資料の作成や準備をあっという間に終える事ができました。
あとは、私達から新しい生徒会役員への引き継ぎ用の記録作りです。私達は、テーブルで手書きで記録を残していきました。
私達は、先輩達からてきとうな指示しかもらえなかったので、新しい生徒会メンバーには、ちゃんとした生徒会役員要項や、引き継ぎの記録を渡そうと思ったのです。
私はすぐに集中力が切れてしまったので、目線をノートから逸らし、生徒会室の中を見渡してみました。
すると、生徒会室の入口の扉に紙が貼ってあるのを見つけました。何か書いてあります。先輩達が、私達が役割り決めに困らないようにメモを残してくれてたようです。
「会長エリナさん、副会長グスタボ君、書記チョコさん、会計マロンさん、パウエル君‥‥って書いてある。これって次の生徒会の役割を決めた紙かな?」
私が張り紙を読み上げながら独り言を言っていると、二人も反応しました。
「マロンさん、パウエル君‥‥ってうちの国の王女と隣国の王子様じゃない!?」
エリナさんはびっくりした様子でした。王女と王子と聞いて、グスタボ君は何だかニヤリとしました。
「マロン王女にパウエル王子ねぇ、二人婚約者同士だったりして。」
私はグスタボ君から目を逸らして、キョロキョロして知らんぷりを決め込みました。
「アッハハ、チョコってば知らんぷりが下手ねぇ。ヘェ〜、何だか楽しくなりそうね。」
グスタボ君がそう言ってますますニヤリとしました。グスタボ君、恋話好きだからなぁ。
私もパウエル王子がマロン王女と一緒に生徒会へ入って、二人が仲良くなってくれたら良いなぁとは思っていました。それにしても、マカロン様がパウエル王子を生徒会に誘ったのかな‥‥?
私が考え事をしてると、エリナさんが話しかけてきました。
「チョコ、パウエル王子がこっちの学園に入学するなら、姉のジューン王女が高等貴族学園の方へ入るんじゃないの?あの王女、狙った獲物は逃さないタイプだから、マカロン王子があぶないわね。特にマカロン王子はジューン王女の好みのタイプだから。」
「あら、チョコってば、ピエンさんの次はジューン王女と闘うの?‥だとしたら、今度の相手は手強そうね。」
エリナさんやグスタボ君の言葉を聞いて、私は少し不安になりました。やっぱり卒業パーティーでジューン王女が私を睨んできたのは、見間違いではなかったようです。
私はマカロン様と同じ学園にはいないけど、ジューン王女とマカロン様は同じ学園にいる‥‥私の見えない所で二人が仲良くなったらどうしよう。私はモヤモヤした気持ちになりました。
「まぁ、うじうじしててもしょうがないし、二人の試練だと思って頑張ってみたら?それに障害があった方が恋愛はうまく行くのよ。きっと良い方へ向かうわよ。あんまり心配なら、タロットカードで占ってみれば良いし。」
「あっ、そうか。」
私はグスタボ君に言われて、すぐにカードを鞄から取り出して占ってみました。
私はクロスをテーブルに敷き、カードをシャッフルして纏めます。そして一枚だけ取り出して、クロスへ置きました。ワンオラクル、一枚だけのカードで占う方法です。今日の運勢や天気を占う時の、一番簡単な占いのスプレッドです。私は今後の私とマカロン様の近い運勢を天気を占うぐらいの軽い気持ちで占いたかったので、これにしました。
「戦車」のカードの逆位置。恋愛面では、喧嘩や思いの暴走、恋のライバルに負けるかもしれない、との結果が出ました。
「チョコ、どうだった?」
エリナさんが心配そうに声をかけてくれました。
「うーん、どうしよう。最初からもっとちゃんとしたスプレッドで占えば良かった。」
「だから、どんな結果が出たの?」
「喧嘩や想いの暴走に注意しなきゃいけないんだって。ライバルに負けるかも、だって。」
「でも、それって近い未来の話よね。ずっと先の未来の話じゃないんだから、気にしなくていいわよ。それに、具体的な事は占ってないんでしょ?大丈夫よ。」
グスタボ君が慰めてくれました。
私も占い師をやってて、色んなアドバイスをお客様にしてきたけど、こんな時、私がお客様だったら、占い師の私は何て言って慰めてくれたかしら?
自分の気持ちを制御して、想いを暴走させないように気をつけて下さいね。特に相手を責めるような喧嘩は駄目ですよ、って言うだろうな。
「うん、大丈夫。マカロン様を信じて、私も悪い妄想にとらわれて変に暴走しないように気をつける。」
「そうね。それでいいと思うわ。」
グスタボ君が優しく私の頭を撫でてくれました。もう片方の手でエリナさんも頭を撫でてもらってました。
エリナさんも、私もグスタボ君の手から出る癒しの力のおかげで、頭の中がスッキリしました。心のモヤモヤも晴れた気がしました。
「さっ、引き継ぎの記録を早く終わらせて帰りましょうね。」
エリナさんに言われて、私達はまた記録に戻りました。結局終わったのは夕方になってしまいましたが‥‥。
あとは、入学式を待つのみです。




