マイケル先生との個人面談
今日から三日間、学園は半日授業となり、午後からは担当の先生による個人面談会があります。
この期間は学園の学年末試験の勉強期間とも重なっており、面談のない日は皆んな勉強に集中する事になっています。
「チョコ、昨日はありがとう。マロンがとても喜んでたよ。」
「先輩、マロン王女は何か悩んでいらっしゃるのですか?」
「‥‥マロンは、将来隣国に嫁ぐ事が決まっているんだ。隣国からの要請だ。上二人の兄は自由に恋愛できるのに、なぜ自分は自由に恋愛が出来ないのかって、いつも両親と喧嘩をしているんだ。
マロンの事を、王女なのに我儘だと罵る者もいる。それにあの性格と言動だろ、マロンを理解してくれる人間がまわりに全くいないんだ。ひとりぼっちなんだよ。
国の為に犠牲になるというのに、周りはそれを当然のように言うのだからな。」
「‥‥マロン王女がそんなに苦しんでいたとは知りませんでした。明るく元気な印象でしたので。」
「チョコだから、心を許せたんだろうな。これからも時々は会ってやって欲しい。頼むよ。」
「はい、勿論です。」
「‥チョコ、僕は学年末試験と卒業パーティーが終わったら、中等貴族学園を卒業して高等貴族学園へ進む事になる。
学園内で、こうして気安くチョコと触れ合えるのもあと少しだ。お互いに寂しくなるな。」
マカロン先輩がそう言って、私の手を握りました。マカロン先輩の親指が‥握られた私の手の甲をしきりにさするので、くすぐったいのと恥ずかしいのとで、思わず悶えてしまいました。
マカロン先輩の顔を窺うと、ぼーっとしたまま私を見つめていました。
「マカロン先輩、手がくすぐったいです。」
「あっ、ごめん。何か色々ごめん。」
マカロン先輩はそう言って手を離すと、自分の手を見つめながらしばらく考えこんでいました。そして、
「手を繋ぐのも、未成年のうちはやめておこうか?」
いきなり手繋ぎの禁止を提案してきました。
「駄目です。手ぐらい繋ぎたいです。それぐらい私達の年齢なら普通の事ですよ。皆んな手を繋いでます。」
「手を繋ぐのは普通なの?僕のまわりでは普通のことではないけど。‥チョコは誰と手を繋いだの。」
「男の子だとグスタボ君ぐらいです。」
「‥‥グスタボ君以外とは手を繋いじゃ駄目だよ。」
『‥グスタボ君とならいいんですね。』
『彼は、チョコを異性として意識することがないからね。』
『確かにそうですね。』
「じゃあ、お互い試験を頑張ろう。」
マカロン先輩はそう言って、私の頭をポンポンしてから去って行きました。
さて、私は今日が個人面談の日なのです。
教室の前の廊下で待機していると、マイケル先生が呼びに来てくれました。
「チョコさん、どうぞ。」
そう言って、先生と向かい合う席へ座るよう促されました。
「チョコさんは、学園生活で困った事はないですか?」
マイケル先生に一対一で話せるチャンスなので、私は今まで誰にも話してなかった悩みを話してみました。
「‥先生。実は、私の共感能力ですが、相手に共感しすぎると、相手の人格や言動と感情に同調してしまうみたいです。
自分と他人の人格や感情の境目が分からなくなるのです。
そういうことが重なると、自分の本当の人格や感情、思考を見失ってしまいそうで怖くなります。」
私が話し終わると、マイケル先生は私の悩みを予め知っていたかのように、迷いなく答えてくれました。
「他人の気持ちや感情にそこまで共感できるのは、欠点ではないですよ。むしろ素晴らしい才能なんです。
ただ人によっては、相手の体の痛みが自分にもうつってしまう人、精神的に不安定な人に引きずられて自分も精神を病んでしまう人がいます。
チョコさんの話や、これまでの学園生活を見ている限りそういった心配は要らないと思います。
他人に感情を引きずられても、一時的なもので済んでいるようですね。半日もしないうちに戻ってるようなら大丈夫です。」
「先生に思いきって相談して良かったです。何だか安心しました。」
「あっそうそう、占い師をやってるんだよね。色んな人の悩みを聞いて共感出来るチョコさんにはピッタリの仕事だね。
‥‥きっと将来、国中の人達の悩みに寄り添える立派な王妃様にだってなれるかもしれませんね。」
マイケル先生が悪戯っ子のような笑顔で言いました。
「‥‥!」
「チョコさん、全ての経験が学びです。何が起きても恐れず進んで行って下さい。そうやってあなた達は成長していくのですから。」
マイケル先生はそう言い終えると、席をたって私を教室の扉まで誘導し、次の生徒を呼びました。
マイケル先生との面談会は、とても短い時間でしたが、私の心の中のモヤモヤは一気に晴れました。心なしか体まで軽くなったように感じました。
ただ、試験の事を考えると一気に気が沈んでしまいましたが‥‥。




