私とピエン
ピエンと大きなおじさんの顔は対峙したまま、何の変化もありませんでした。痺れを切らした私は、ピエンの首根っこを捕まえて、大きなおじさんの口に放り込みました。
「嫌、嫌!やめて!チョコ、怖い!」
「大丈夫、私も行くから。」
そう言って、二人でおじさんの口の中へ入りました。すると、ピエンのお父さんの部屋に着きました。
「ピエン、お前学校はどうした?それにこの女は誰だ。俺の仕事の邪魔をするな!」
私はピエンの手を掴み、反対の手でおじさんを平手打ちしました。
「貴様、どこの家のやつだ!ただじゃ済まさんぞ!」
私はムカついたので、もう一発叩いてやりました。
「この!捕まえてやる。」
そう言って、怒って追いかけてきたおじさんですが、太って重そうな身体をゆさゆさ揺らして、息も絶え絶えでした。
「お父様〜こっちよ。早く追いかけてきて。」
ピエンも楽しそうに笑って走っていました。
側から見ると、親子が仲良く遊んでいるように見えるのでしょう。護衛の人も使用人も皆んなニコニコして見ていました。
「私、学園やめる!もうお母さんの所に帰るの、お父さん、さようなら〜。」
ピエンがそう言って、私の手を引いて走ります。
いつの間にか、大きなおじさんの顔も、黒いオーラも消えていました。
私達は、手を繋いで走って学園へ戻りました。
ハァハァハァ。
「ピエン、あんた足が早いのよ!ゆっくり走りなさいよ!」
「チョコがどんくさいのよ!」
「ピエン、あんた本当に学園やめるの?お母さんの所に帰るの?」
「逆に、私って何で今まで我慢して学園に行ってたのかしら?学園より町にいた方が自由で楽しかったのに。それに、男の子達も逞しくて優しくて最高なのよ!」
「お母さんびっくりするんじゃない?」
「お母さんは、私がいつか逃げ帰ってくる事を分かっていると思うの。だから大丈夫。」
私達はそう言って、座る所を探しながらブックカフェに入りました。
ブックカフェは‥‥ノア先輩のお店でした。ノア先輩が私達のもとへメニュー表を持ってやって来ました。
「いらっしゃいませ。お飲みものはどれになさいますか。」
「私はこのお勧めの紅茶でお願いします。」
私が注文を頼むと、ピエンも同じものを頼みました。
「フフ、チョコも猫被ってたのね。チョコがあんなにイカれてるって知ってたら、私もチョコを好きになれたのかな。」
「えっ、やめてよ。ピエンになんか好かれたくないし。可愛いのを鼻にかけてて、性格悪いし。それに、猫は被ってないよ。あの時は多分、前世のグレてた頃の私が出ちゃったのかも。」
私達は顔を見合わせて笑っていました。ピエンはスッキリした顔をしていました。
「あっ、忘れてた!私青空市場の人達の売上表と代金の一部を貰うんだった。あと、皆んな心配してるよね?どうしよう。」
私が頭を抱えて困っている姿を見て、ピエンは残念なものを見るような顔をしています。
「ねぇ、チョコ。あんた私の所へ遊びに来なよ。」
「えっ、ピエンの家ってどこ?」
「別に私の家じゃなくても、街の屋台のある公園とかで待ち合わせても良いし。」
「私に会いたいの?」
「うん。」
「あっ、でもピエンってば、私にまだ謝ってないじゃん。結構酷い事されたんですけど。」
「ごめんなさい。」
「じゃあ、もう許す。私に会いたくなったら、占い処の人に言付けしてよ。」
そう言って私達は紅茶を飲んでわかれました。
その後、私は慌てて青空市場の売上表と代金の一部を回収し、片付けを終えました。
そして、おそるおそる生徒会の運営本部へ向かいました。
「あの‥‥お騒がせして済みません。あれから大丈夫でした?」
マカロン先輩とグスタボ君、ソード先輩、エリナさんが私を見るなり、走り寄って来ました。
「チョコ、大丈夫?黒いものに飲まれて消えちゃったから心配してたんだよ。」
グスタボ君がら私を抱きしめて、号泣してしまいました。
マカロン先輩やソード先輩、エリナさんが言うには、あの後ピエンさんのクラスの女子達は、先生に虐めの事を正直に話し、空に向かってずっとピエンさんに対する懺悔をしていたそうです。
よっぽど、あの時の事が怖かったようです。
ショーも何とかやり遂げ、青空市場も大盛況だったようです。
そして、ブックカフェはたくさんのお客様に来て頂けたようです。ただ、お客様達は誰も本は読んでおらず、ノア先輩だけが堂々と本を読んでいたそうです。ブックカフェが混んできた時には、なんとモアさんがお手伝いを申し出てくれて色々手伝ってくれていたんだそうです。
「あっ、夕日が綺麗。」
エリナさんがそう言うと、ソード先輩は満足そうに笑って言いました。
「ねっ、皆んなでみる夕日って良いよな。」
こうして皆んなで沈む夕日を見ながら学園祭は終わりました。




