学園祭のファッションショー
私が急いでファッションショーの控え室に入ると、先に控え室に入っていた女子やグスタボ君がびっくりした顔でこっちを見ています。
「チョコ、何があったの!ちょっとこっちに来なさい。」
グスタボ君が控え室を出て、舞台裏で事情を聞いてきました。私は先程のピエンさんの一件を全て話しました。
グスタボ君は、私の頬を両手で包むと、手のひらから暖かい何かを出して私の頬の痛みをとってくれました。
「気持ちいい。前からグスタボ君の手には何か感じていたんだけど、手から何か出てるよね。」
「チョコの頬の赤みも消えたわよ。あっ、そうか。まだ誰にも言ってないんだけど、私ね浄化や治癒が出来るみたいなの。最近気付いたのよ。
サトルやチョコを慰めたり癒したい時に、手を握ってあげてると自分でも何かが出てるのが分かったの。サトルに能力鑑定してもらったら、やっぱり浄化や治癒が出来る〝聖魔法”が備わっていたの。」
「サトル君、能力鑑定できるの?凄い。」
「それにしてもまだまだ油断できないわね。チョコ、くれぐれも気を付けてよ。」
「ええ、分かった。」
私とグスタボ君が控え室に戻ると、ファッションショーが始まろうとしていました。
グスタボ君は急いで舞台にあがると、司会としてショーを進行し始めました。
お客さんの盛大な拍手でショーは始まりました。
皆んなショーの出場を立候補するだけあって、舞台上での立ち居振る舞いもドレスもメイクも、もちろん生まれ持った美貌も素晴らしいものでした。
沢山の参加者達が綺麗なドレスを着て、舞台上で優雅に歩いたり、くるりとまわってポーズをとって去っていく様子は、華やかで夢があって、お客さん側に座る女子達もキャーキャー言って興奮していました。
いよいよピエンさんの登場です。
ピエンさんは、私の用意した予備の服を着て登場しました。
薄い水色から白へのでグラデーションが美しい清楚なドレスに、サファイアの首飾りとピアス、それにラメの入った白いヒールで出て来ました。
ピエンさんの美しい金髪は、上の方で纏められて、とても清楚な雰囲気でした。
会場からは歓声が上がりました。
ピエンさんの登場により、ショーは一番の盛り上がりを見せました。
ですが、会場の一部の女子達が何やらヒソヒソと話し合い、企んでいる様子が見えました。
私は、マカロン先輩へ心の中で呼びかけてみました。
『マカロン先輩、聞こえますか?』
『チョコ、どうしたんだ。遠くから僕に話しかけてるのかい?凄いなぁ。』
『会場の一部の女子が何か企んでいるようです。ピエンさんに何かするかもしれません。ピエンさんが怒って、あの黒いオーラが魔力を暴走させたら大変です。
それに今日のピエンさんは少し情緒が不安定なのと、ピエンさんのクラスメイトの嫌がらせが激化していってるのが気になります。』
『分かった。気をつけて見ておくよ。』
私は胸騒ぎを覚えながらも、いよいよ自分の番を迎えました。
「では、次はチョコ・シリアルさんの登場です。拍手をお願いします。」
パチパチパチ
ふぅ、ヨシ!行きますか。
私はゆっくりと舞台に立ちました。
黒髪には椿油を塗り、所々ラメを入れました。長い髪は左側に全て流し、螺旋状に真珠の飾りを巻いています。
耳飾りもネックレスも真珠にしました。
ドレスは全体的に真珠のような光沢のあるクリーム色の、あまり裾の広がらないマーメイドラインのドレスです。所々ドレープを作り、ワンポイントで真珠を散らしてあります。
マリー自慢のメイクは、ガッチリメイクしているのに、とてもナチュラルに見えるという高度な技術が光る仕上がりになりました。
それにさりげない付け睫と、唇の輪郭をひと回り小さく誤魔化した別人メイクも施され、これは詐欺ではないか?というぐらいの変身を遂げました。
マリーの演出通りに、私はアルカイックスマイルを浮かべて静かに歩き出しました。
姿勢は真っ直ぐにして、神話の中の神々のように堂々とランウェイを歩きました。
最後にはカーテシーをして退場しました。
舞台袖から、会場がどうなってるのか、ドキドキしながら様子を見てみると、とてもシーンとしていました。
えっ、私そんなに残念な仕上がりだったかしら?と不安になりました。
けれど、すぐに割れんばかりの歓声と拍手が会場に響き渡りました。
「神秘的な美しさだ!今までに見た事がない!まさに神話だ!女神だ!」
会場内が大騒ぎです。
一方、会場でヒソヒソ話をしてた女子達の姿が消えていました。どこかへ行ったようです。
ピエンさんは、私を終始凝視して何やら呟きながら、背中の黒いオーラを大きくユラユラとさせていました。
私がピエンさんを見ていると、視線に気付いたピエンがこちらを睨みつけました。
黒いオーラの中の顔達も私を睨み付けています。
私は怖くて後退りしました。
舞台袖には、私とピエンさん以外にもたくさんの女子がいましたが、私以外の全員の女子がピエンさんを取り囲みました。
そして、持っていたジュースをピエンさんの服に投げつけて、ピエンさんの美しい金髪をあろう事か一房手に取り、ハサミで切り始めたのです。
するとピエンさんの背後の黒いオーラが徐々に大きさを増していって、舞台全体を覆うと、さらに広がっていき、学園全体を覆ってしまいました。
「なんか暗くない?」
「曇ってきたのかしら。」
皆んな不安そうにつぶやきます。
ピエンさんは、大丈夫でしょうか?
ピエンさんは‥‥ああ、どうしましょう、黒いオーラの中の顔と同じ顔をしてこちらを睨んでいます。
何かブツブツと呟きながら、フラフラと歩き、近くにいる女子達を手当たり次第、髪を引っ掴んでは投げ飛ばし、蹴り倒しながら、私の所へやって来ます。
私は心を鎮めて、ピエンさんの心を探りました。悲しみ、憎しみ、復讐心、殺意、疑念、ピエンさんの様々な感情が私に流れ込んで来ました。
私はピエンさんの心にいつの間にか同調していました。
私の中にも怒り、憎しみ、悲しみが溢れ出しました。
そして黒いオーラに私とピエンさんは完全に飲み込まれてしまいました。




