1話 触手始まりました。改!
いらっしゃいませー。
このお話に出てくる登場人物は基本的に名前を付けていません。どうしても必要な場合はつきますが、それ以外は愛称がほとんどになります。そして容姿についても同じで細かい描写はなるべく避けています。これは、読む人のイメージで小説を楽しんでもらいたいからです。
べ、別に考えるのがめんどくさい訳じゃないんだからね。
そんなわけで容姿は好きに想像して楽しんでください。読む人によって登場人物のイメージが違う。それが小説の面白いところだと思います。
では、いってらっしゃいませー。
ジャンヌの森 森の広場
べんべん べんべん ぼんべんべん べんべんべん!
べんべん べんべん ぼんべんべん ぽこべんべん!
「ふはははー! もっと! もっとだー! ビートを熱く! なのだー!」
森に生まれた小さな広場に踊り狂う一匹の魔物がいた。
べけべけべけぼん べけべけべけぼん べけべけべけぼん。
「ポォウ! ワタシのリズムにフォロミー! なのだー! ターリホー!」
べんべけべけべけ、べんべけべけべけ、べんべけべけべけ。
「うにゃははははー。ぬるい! なまあたたか~い! 人肌!」
てけてけてけてけてけてけてけてけてけてけ、ててん!
「へい! ……ふぅー。いい演奏でしたー。触手にも大分慣れてきたかなー」
切り株の上で木の枝に皮が張られた物(多分太鼓?)を猛打していた魔物は自分の体を確かめながら演奏を振り返る。
「嗚呼! 触手にー生まれて~五十年~ボクのーほね~」
骨無いからね? それにまだ生後二十日位だよ! しかもなんで急に歌い出すの?
「このー骨無し~チキーン~?」
なんでチキンなの!? もう嫌! 何なのこの触手さん自由すぎです!
「チッキン! チッキン! オレサマ、チッキン!」
何なの! 急にテンポアップ!?
「チッキン! チッキン! ミンナ、チッキン!」
「あの子はチッキン! この子もチッキン!」
「その子もチッキン! どの子もチッキンー!」
「エビバディ! セイッ! クックドゥルドゥルー!」
何故アメリカン? はっ! 駄目だわ。呑まれている場合じゃない! オッホン。
森の広場で太鼓……モドキを叩いて、チッキンなソングを歌っているのは、スライムのような体に幾つもの触手が生えたローパーと呼ばれる種族の魔物です。
温泉マークがすごく近いですね。あんな感じ。
私はそのローパーの監視をしています。ええ、仕事ですから。観察対象の触手な魔物さんは最近太鼓に嵌まってます。森で落ちてる皮を見つけてから太鼓を自作して演奏しています。
必死に触手を振る姿は少しかわいいと思っている自分が怖い。
子供が抱えられる位の大きさの体は紅く透けていて宝石みたいだけど、動く度にぷるぷると震えている。触手も同じように紅く透けていて、うねうねとよく動いています。
……何度か触りたくなったのは内緒だ。バレたら同僚になんて言われるか。そんなぷるぷるな触手さんを監視していくこと、はや、半日。
今度は猪に襲われています。なんで?
猪の鼻先でつんつんされてぷるぷるボディーがコロコロされています。くっ、かわいい!
広場をあちこちコロコロされ続けています。時折、触手が猪に当たりますが気にもしていません。猪にとってはボール感覚ですか。
ここはジャンヌの領域ですから凶暴な魔物や動物はいません。ですがこの触手さんには猪が天敵になりそうですね。
夜になり猪コロコロから解放された触手さんは地面に項垂れしょんぼりしています。くっ、撫でたい! 慰めてあげたい!
「ううっ、ヒドイ目にあった。なんて凶暴な猪なんだ。きっとこの森の主だね。はふぅ。夕方は気を付けないと」
なんとも不思議な転生者ですね。自由に生きることに関しては他の転生者をぶっちぎる癖に転生者特有の支配欲や欲望の気配がない。本当に自由に気ままに生きている。
こんな人がいるのですね。今はローパーですが。
「もう寝るの、猪なんて嫌いなの。ぐすん。……すやぁ」
……眠りましたか。……………はっ! いけません! 見とれてる場合では! 早く報告書を書かないと。
「にゃへー」
寝言ですか? 寝息なんでしょうか。それにしても大変な事になりそうですね。この触手さんの日々を綴っていくのは。
長い付き合いになりそうですね。お手柔らかに頼みますよ、触手さん。
「ぬろー、きみの瞳が~こけこっこ~」
どんな夢見てるんですか!?
ありがとうございましたー。しばらくは説明だらけです。ふぁいとー!
ふはははー! 一から作り直したのだー! あんなに説明要らんよね? と言うことでざっくり消しました。話は繋がると思いますがなんかあればまた、直します。それでは引き続き触手さんの日々をお楽しみください。