7話 初バトル(不本意)
「……おい兄ちゃん、こいつ、マジで心を病んでんじゃねえのか?もしかして治療の為の観光旅行なのか?」
「あはははは……」
いきなりとんでもない事言うから怒り通り越して本気で心配されちまったじゃねえか!
神のくせに煽り耐性無さすぎだろ!
「相手の発言が真実かどうかも見極められないのかい?これだから頭の悪い人間は……」
「ちょっとすいませんね!よく言って聞かせますんで!」
とっさに話を遮って、少し離れてアホ神の胸ぐらを掴む。
(てめえせっかく俺がこっちで良好な人間関係を構築しようとしてたのに……)
(だってアイツ失礼すぎるでしょ!僕だって怒るときは怒るよ!)
(そういうノリの人達なんだよ!だいたい、いきなり神とか言われて信じるやつなんかいるわけねえだろ!)
(さっきの教皇さん達はすぐに信じたじゃない!)
(あれはあの人達が呼んだからだろ!そもそも俺だってお前のこと神だなんてまだ認めたくないんだから!)
(それはひどくない!?)
ああ、なんでこのアホはこんなに幼稚なのか……
(それでも、いきなり波風立ててどうすんだよ!これじゃ余計な時間食うだろうが!)
(でもでも、この展開もテンプレ的でしょ?初めて来た新人が、ベテラン冒険者とひと悶着起こして喧嘩になって、倒しちゃって鮮烈デビュー!みたいな?)
(………あ?……もしかしてお前、それをわざと…?)
(その為にちょうどいいと思って利用した感はあるね。まあホントに腹が立ったってのもあるけ…)
ゴッ
アホを殴り飛ばして、周りで見てた冒険者たちも少しギョッとしてた。
俺はなるべくテンプレを回避しようとしてたのに、コイツは………
「なんでまた殴るんだよ!いいじゃんてっとり早く有名になれて!」
「うるせえ!もうお前ちょっと黙ってろ!」
本当に余計な事しかしないなコイツは。
心配してた荒くれ者さんが話しかけてくる。
「兄ちゃん、そっちの金髪もだいぶキテるみたいだし悪いことは言わねえ、一言謝ってくんな。そうすれば水に流してやる。」
……仕方ない、他人がやった事を謝るのは腑に落ちないが、それで終わるならさっさと……
「アキラくんは君みたいな量産型冒険者よりよっぽど強いんだ!謝るのは君の方だ!」
………この馬鹿、黙ってろって言ったのに……
「……へえ、勇者だとか色々言ってたが、そんなにやるのか兄ちゃん?量 産 型 冒 険 者 の俺よりも?」
あー…言っちゃいけないこと言ったみたい……確かに俺も量産型だなあとは思ってたけど!
ていうか俺がどんな能力か知らないくせによく自信満々に言えるな…
「そんなに言うなら、ちょっと痛い目見てもらおうか……兄ちゃんには恨みはないが、あの金髪を直接やるより、兄ちゃんを痛め付けた方があいつも思い知るだろうからな…」
そんな無茶苦茶な……
「やっちゃえアキラくん!勇者のスッゴいスキル見せてやれ!」
だからお前知らないだろ!
…と、荒くれ者さんは完全にやる気になってらっしゃる…
これ、もうリアルファイトは回避できないんだろうな……
仕方ない、俺から手を出さなければいいか……
ダーナ様に事前に確認した通りなら、負けることは無いはずだが……
「悪いな……ちょっと気絶してもらうぜ!」
相手が思いっきり振りかぶって殴りかかってくるので、まずは確認の為腕でガードする。
すると、予想より遥かに弱い衝撃。
うん、これならいけそうだ。
「ちっ、いい体つきしてるだけあって中々やるじゃねえか!それなら……」
相手の右腕が光り出す。あれがスキルを発動してるって事だろうか?
「出た!奴の腕力強化は普通のパンチでも両手持ちハンマー並みの威力にしちまう!あの兄ちゃん、骨折で済めばいいな!」
野次馬さん、非常に分かりやすい説明ありがとう。
「そういうこった!死にたくなければ頑張ってガードしな!!」
と、相手が渾身のストレートを放ってきたので、俺はそれを額で受けにいく。
「馬鹿が!死んでも知らねえぞ!!」
ドゴォッ!!!
「………いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
うん、思った通り。さっきよりさらに弱かった。
あれならスキル使わずに生身で本気で殴ってきた方が強い。それでも全然痛くないけど。
「てめえ!!何しやがった!?」
荒くれ者が顔を歪めて聞いてくる。見ると、拳を砕いて、腕まで折ってしまったようだ。右腕に力が入っていない。
周りも想像と違う結果にざわついている。
俺に賭けたらしい人達が特に騒がしい。喜ぶのはいいけどそれ俺にファイトマネー出ませんよね?
「いや~、何したかって言ったら、何もしてないんですけど……」
「そんな訳あるか!強化した俺の腕がこんなことに…防御スキルでも使ったのか!?冒険者になる気がないとか言っといて戦闘スキル持ちかよ!」
むう、本当に何もしてないんだけどな。
更に言えば、原因考えたら俺悪くないんだけどな。殴られるべきはそこのアホだ。
「やったね!さすがだよアキラくん!なんか勝ち方が地味でつまんないけど、力の差を見せつける的な意味ではグッドだよ!!」
いちいち勘に障る野郎だコイツは。自分のせいで俺に迷惑を掛けてる事を自覚してるのだろうか?
「てめえ……許さねえぞ、こうなったら左手一本でも、こいつで…」
…と、荒くれ者さんが残った左手に剣を構えてこちらを睨んでいる。
あ、目がヤバい。本気で殺す気の奴だこれ。
面倒だな……
「そこまでにしとけ、おっさん!」
「あぁ!?……あっ!!」
乱入してきた声に反応し、俺たちの目も野次馬の目も一斉に声のした方向を向く。
すると、荒くれ者と野次馬達がざわつき出した。
見ると、これまたいかにも強キャラって感じの、燃えるような赤い髪にオレンジのメッシュが入り、赤を基調とした動き易そうだが高級そうな軽鎧と服。身も蓋も無く言えば、見た目だけでモブキャラではないとわかるような感じの、ワイルドなイケメンがそこにいた。
この人、凄い人なんだろうか?
「こ、この国で最高ランク、全世界で見ても数人しかいない二つ名持ちSランク冒険者、フィックス・フィリップスじゃねえか!!」
「何!?あの『剣聖』のフィックスか!?」
………野次馬さん、非常に分かりやすい説明ありがとう。
そして、新たなテンプレの予感。どうなることやら……