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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
いやこら拉致だよ!
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3話 頭のおかしい神様

 とりあえず状況がわからないので、詳しく説明を聞く事にした。



「この馬鹿はもう信用ならないので、儂から君の今の状況を説明させてもらおう。申し遅れたが儂の名前はダーナ。恥ずかしながらこの者の神としての振る舞いを教えていたものだ。」


「大室亨です」


 ダーナ様は向き合うだけでもこちらの身が引き締まるような感じのする、神様としてふさわしいオーラを放っている気がする。この人についていけば間違いない、と思わせるような雰囲気がすごい。

 こんな方が師匠だったというのに……



「ねえアキラくん考え直そうよ?君が行くって言ってくれれば全て丸くおさまるんだよ?」



 この馬鹿っぽい神様が生まれてしまうというのが信じられない…



「だから、行きませんって」


「なんでだよー!めっちゃ良い思いできるんだよ?君の好きなマンガやアニメみたいな技も使い放題!ラノベのようなハーレムだって…」


「お前は黙っとれ!!」

「ンブッ」



 ダーナ様のツッコミでルシャナの頭が地面にめり込んだ。やっぱりここ地面あんのか。



「すまんな、生意気ながら才能は申し分なかったので期待して修行をつけたんだが、精神面がびっくりするほど成長しなくってな……普通は修行をしてるうちに、心の有り様も自然と成長していくものなんだが……」


「あの程度の修行楽勝だったからね!ただただ効率良く神としてのステータスが上がっていくだけだったよ!」



 首を引っこ抜いたルシャナはもう元気だった。

 回復力はほんと無駄にすげえな。



「恥ずかしい限りだ……とりあえず、この馬鹿に神としてのありがたみは無いので大室くんもこの馬鹿には遠慮しなくて良いぞ。儂が許す」


「あ、本当ですか?正直もうコイツにはタメ口でいいかなって思ってました」


「なんでよ!もっと敬おうよ!」



 無視しよう。

 今は説明を聞かなければ。



「まず、君がなぜ選ばれたかを説明しよう。」


 条件がどうとか言ってたな。


「異世界に連れていく人選をするにあたって、今、神の間でこんなガイドラインがあってな…」


 えー、『ホイホイ異世界に行きたがる人間の特徴20選』………こんなの作ってんのかよ…………


「これに書いてある特徴にな、一応、君はいくつも当てはまっている訳だ……例えば、『マンガ、アニメ、ラノベ、ゲーム等が好き。要するにオタク』」


 ……まあ、好きだからなあ。


「『いじめられた経験有り』『引きこもり経験あり』『不登校経験あり』…」


 ああ、いじめられてた頃は学校休んで引きこもってたよ。わりとすぐに開き直って2週間くらいで学校行ったけど。


「『彼氏・彼女無し。いない歴が長いほど良し』」


 ああ、確かにいない歴=年齢だよ。

 ただし告白されて断ったことも何回もある。


「『ろくに仕事をしていない』」


 いや、普通に就職してるけど……

 職業上、月に仕事行く日が10日前後しかないから、仕事してないように見えたとでも言うのか……


「『中二病センスが好き』」


 うん。ネタ的にも好きだし、普通にかっこいいとも思うけど…


「…とまあこのように、他にもいろいろあるのだが、今言っただけでも7項目当てはまっている訳だ。」


「ふむふむ」


「ここで正規の手順の場合、初めに、神がその者の夢の中で語りかけ、まず異世界へ行きたいという意志があるかどうかを聞く。そこで行きたいと言った場合はこの次元の狭間に呼び寄せ、最終確認をして異世界への門を開くのだ」


「例外として、条件に当てはまるものが不慮の事故で死亡した場合、事前の意思確認なしでここに呼ぶこともある」



 …え、じゃあ俺は死んだってことか!?



「だが…君は死んでいない。健康体でスヤスヤ眠っていた」



 あ、なんだよかった。

 でも、じゃあなんで?



「君がここにいるのは……この馬鹿が質問を端折って勝手に連れてきたからだ」















 俺は無言で、金髪のアホを殴り飛ばした。






「…あ、アホすぎて思わず手が」



「何すんだよ!ちょっと悪いことしたと思ってるから甘んじて受けるけど、普通だったら神罰ものだよ!?神だから全然痛くないけどね!!」



ちょっとしか悪いと思ってないのかよ。



「つまり、俺がどうせ行きたがるだろうと思って、本来の手順を無視してこいつが勝手に俺を拉致したってことですね?」


ダーナ様に確認をする。


「その通り。本来なら本人の同意を得た後、直属の上司である神から順に決裁をもらい、最終的に神界長の決裁が下りて初めてここに連れてくることが許される」



そんな事務的な決裁作業があんのか……



「……俺がここに来た理由はわかりました。じゃあ、なんで帰れないか教えてください。」


「ああ、そのために、異世界の勇者召喚の仕組みについて説明せねばな……」 






話の内容はこうだった。





 神は大きく分けて3種類いて、神の世界である神界から複数の世界を見守る管理神、一つの世界に留まり民衆の信仰対象となる民族神、危機に貧した世界を救うために活動する救世神がいる。



 新たな魔王の誕生などによってある世界に危機が訪れた時、神界からその世界に救世神が新たに降臨する。



 その神の使いとして、勇者が誕生する。この勇者が、召喚された異世界人や、転生した異世界人、つまり俺たちの世界の人間だ。



 神の使いである勇者は、善行を積んだり偉業を成し遂げることで、自らのレベルアップと共に、救世神への信仰を増やしていく。

 救世神は信仰によって力を増し、勇者と協力をして共に魔王を倒すために戦う。



 最終目的を果たし、世界に救いをもたらした時に信仰は最大となり、救世神は管理神となって神界に戻るか、または民族神となってその世界で永遠の存在となる。

 この時に、勇者は英雄としての記憶を魂に刻み、戦闘用のスキルを除く便利な補助スキル等を身に付けたまま元の世界に戻るか、救った世界に英雄として定住し、異世界に魂を定着させるか選ぶらしい。

 今までの勇者は例外なく英雄として定住しているそうだ。

 ちなみに神様は、9割くらいは管理神となり、民族神となるのは残りの1割程度とのこと。



 ここまで聞いて、ものすごく嫌な予感がした。



「まさか、魔王を倒すレベルまで信仰を集めないと、世界を移動することはできないから…魔王を倒さないとここから帰れないって事ですか?」



 だとしたら、帰るまでに何ヵ月、何年かかるって言うんだ。冗談じゃない!



「いや、そうではない。」


「あ、そうなんですか」



 なんだ。魔王を倒すとかどんな長期事業になるんだよと思ってた。

 でも、ならなんで帰れないのだろう?



「本来、世界を繋ぐのには大きな信仰の力が必要なのだが、この次元の狭間は世界と繋がりやすくてな。ここから他の世界に行くのには少なめの力で済むのだ。だから、勇者が異世界に来るときはここを経由する。魔王を倒して帰る時は、大きくなった信仰の力を用いて、世界と世界を直結する」


「なるほど」


「…で、ここで重要なのは、『少なめの力で済む』というところだ」



 うん?



「力が『全く無い』場合は、他の世界に繋ぐ事はできん。他の世界からここに来るときには管理神が次元の狭間への道を開き、勇者をここに連れてくる。そして、勇者が神の使いとなる契約をここで待つ救世神と交わすことで、勇者が1人目の信者となり、勇者の信仰による力を使って世界への扉を開く。しかし、ここに来て考え直し、やはり異世界に行くのは断る、という者もいるのだ。実は儂らもわりと強引に別世界に干渉していてな、強制までする訳にはいかん。断られたら帰せるように、帰り道は開いたままにしておくのだ。」



 …………更に嫌な予感がしてきた。



「また、まだ信仰の無い神でも、なんとか一回くらいはここから世界を繋ぐ程度の力は持っているのだが……」




 だが?




「この馬鹿は、お前さんがどうせ喜んで引き受けるだろうと、勝手に帰り道を閉じて、既に異世界への門を開いとるのだ……」


「出来る男は仕事が早いからね!」
























 もう一度、さっきより強く金髪を殴り飛ばした。

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