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過ぎた春を思ひて


幼い頃は可愛い可愛いと言われてきた顔は、成長するにつれて変容し、極々普通の男の顔つきに変わった。

思春期に入り、直毛だった髪質は変わり、ひどいくせ毛に悩まされるようになった。ポツリポツリとニキビ肌が悪化し、赤ら顔に近い状態になるまで然程時間は掛からなかったように思う。


たまらなく嫌だった。

当時流行っていたビジュアル系バンドの写真を見るたびに強烈な憧れと嫉妬が湧いて、どうしてこのような顔になったのかと親に散々恨み言を吐いたこともあった。母が気軽に言った「パーマをかけなくてもいいから羨ましい。」と言う一言は本当に余計な一言であり、やり場のない苦痛と苛立ちが募っていった。


性格的にも余り社交的ではなかったが友人が数人いたのが幸いだったが、その友人たちも僕以上に対人スキルは高く、どのような人とも平気で話しており、その輪の中に入っていく勇気は残念なことながら持ち合わせてはいなかった。だから、余り自己主張はせず、黙ってノートの端に落書きをしたりして時間を過ごすのが中学校時代の日課だった。クラブ活動はバスケットボール部に入部したが、あいにくの性格だった為、馴染めずに幽霊部員となってしまい、それを気に入らなかった同級生からは不評を買ってしまった。まぁ、元々買っていたのかもしれないが。


灰色ーーー


白く晴れやかでもなければ、どうしようもなく暗い漆黒の生活でもなかったかと思う。いじめと言うか嫌がらせは日常茶飯事だったりもするが、壮絶を極める類ではなかった。中学生にありがちな運動神経がいい、頭がいい、喧嘩が強いという武器を持っていなかった為、完全に上位ヒエラルキーからは脱落。中途半端な薄い存在。せいぜい他人の憂さを晴らす為に出席しているようなものだ。昨今のような過激ないじめのようなものではなかったが、ストレスからか、自律神経失調症と三叉神経痛と診断され、二週間ほど学校を休む事もあった。


そうしたちょっと健全とは言い難い青春を謳歌しながら、中学に入り、二度目の誕生日に転機が訪れる事になった。


以前より、興味のあったベースを頼み込んで買い与えてもらったのだ。

それは憧れだったアーティストの持っている色とは全くの別物ながら、僕は興奮を抑えられずに‥すぐに壊してしまた。単純にチューニングのやり方がわからずにネックが反ってしまったのだが、無知な僕はそれがそういうものなのだろうと妙に納得して、そのすぐに破壊してしまったベースを必死に練習をしていた。だが、すぐに様々な違和感に気がつく。


アンプがないと全く練習にならないと!!

アンプを持っていないので、ちゃんと弾けているのか他の人には聞こえていない。


ので、家族に弾いてみてとせがまれ、弾いたところで「聞こえんわ」で終わってしまった。ただ家族もギターを触ったこともない人ばかりだったので、そういうものだという認識だ。


「これあんまり聞こえんね」「ようわからんわ」


とまぁ、これが家族の反応だった。そんな念願叶って買ったベースですらこんな状況でどこが転機なのかと疑問を抱かれるのは当然かと思う。だが、ここが転機だったと僕は今でも思っている。


軽く友人にベースを買ってもらったことなどを話したことによって周りにそれが伝わり、若干僕の位置するヒエラルキーが上位(と言ってもまだまだ下層なのだが)へと移行したのだ。ちょっと悪ぶっている同級生からの目が変わり、興味を示されることも多くなり、多少親切な対応をして頂くことになったりもした。(まぁ、大方の方はギターにまず惹かれるのが普通なので、ベースをやっているのは残念ながら僕だけだったということも起因していると思う。)


ギターとベースの違いをあまりわかってないということではない!!

あえてベースを始めたのだ!!


で、ギターに強烈な嫉妬を抱きつつも、ベースを好きになるように練習を重ねていくのだが、あいにくすぐにバンドを始めましたという話ではない。せいぜい友人とスコアをコピーしあって一緒に練習する程度の遊び感覚だ。中学生にはスタジオに通うようなお小遣いはなく、当時流行ってもいなかったカードゲームに浪費していた。(あの頃の自分を殴ってやりたい。)


それが転機で少しずつではあるが、多少は社交的になれたような気がした15歳。

これから受験に突入していくというのに気楽に物事を考えていたそんな時期だった。





僕は受験に失敗したーーーー







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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分ではあらすじでボロカス言ってますが(笑) 普通に面白かったですよ? 読みやすいし主人公にすんなり感情移入できる。 自分でボロカス言いながらもちゃんと推敲されてるのがわかって好感が持てま…
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