第一話 宇宙旅行
取り敢えずは重力計算云々は全て抜きで書いています。地球と同じ重力と思ってください。都市の中は調整されていますので。後々その描写も入れていこうかとは考えています。
西暦XXXX年、人類は太陽系だけでなく、周辺惑星にも調査の手を延ばし始めていた。
その中でも、月や火星などの比較的地球から近い天体に至っては本格的な移住が始まっていた。
宇宙人が来たら蹴散らし、魔法攻撃が来たら科学の力を使って解析し、その威力の倍のエネルギーを敵に向け放射する。科学を最大限まで活用した人類は向かうとこと敵なし。という状況だった。どこかの小学生の作文だと思ったか?残念、これが現実だ。
ちなみに俺の時計もその科学力で出来たものの一つでそのせいで厄介な事に巻き込まれてたりする。
そんな中で俺は高校の修学旅行で火星に来ていたのだが。
現在の火星の状況を一言で表そう。
宇宙人が攻撃を仕掛けて来た。
うん。そうとしか言いようがない。
いや、誰も攻めてこないとは言ってないのだが、周辺惑星にさえ手をつけているのだから普通は火星に近づく前に撃破されるのが定礎だろう。何故今更攻めて来たのだろうか。
教師陣は宇宙人が無差別に攻撃されたのを見て殆どが逃げ出してしまったz。残った一部の教師も生徒を落ち着けるのに必死である。
一つ疑問なのだが、ここの防衛軍は何をしているんだ?
まず一番動かなければ行けないのは宇宙防衛軍火星支部の筈だ。未知の宇宙人等が攻撃を仕掛けて来た場合は政治的な云々よりも防衛作業が優先される。これは常識の筈だが。
おっと、色々と推測をして現実逃避をするのもこれぐらいにしないといけないな。防衛軍戦闘機が少し防衛に当たったのだ。だが、その数が圧倒的に少ない。それにどこからどう見ても無人戦闘機なのだ。恐らくは裏でこの都市を放棄するよう何かあったのだろう。そしてその言い訳作りの為に出しているのだ。悲観的だと思われるかもしれないが、昨今の政治事情等を考えた上での結論なのでどこか一部分は当たっているだろう。
そう考えていると、突如都市放送が入った。
都市放送とは緊急時に都市全員に知らせる為に行われる放送であり、まず基本的には使用されない。使用されるのはそう。今とか。
「こちらは都市放送、都市放送です。皆さん落ち着いて聞いてください。現在、謎の宇宙人が攻撃を仕掛けて来ましたがご安心下さい。我が軍の精鋭達の攻撃により敵は逃げ腰になって居ます。
どうやら今回の敵は火星に居座っていた者達の残党が小惑星から攻撃を仕掛けて来た模様です。直ぐに沈静化しますので皆さんは落ち着いて建物の中に入って下さい。繰り返します...」
そこで防衛軍の人員が現れ、それに従って怯える教師陣が生徒達を建物の中へ案内し始めた。俺もそれについていく。
しかし、そこで俺は防衛軍の一人に止められた。
「貴方、平石総長の息子さんですね?」
「そうですけど」
平石総長とは俺の父にして防衛軍総長である。
防衛軍にも位があるのだが、その中でも父は上位の位に属している。
だが、今はその事とは関係ない筈だ。
「ではこちらに来て下さい」
そう言って一人連れられていく俺をクラスメイトは不思議そうに見ていた。
「なんですか?いきなり」
何かよくわからない部屋-プレートは「予備室」と書いてあった。に連れてこられた俺は冒頭一番にこう告げられた。
「この都市はもうすぐ消去されます。避難を。」
「は?」
消去とは防衛軍が手に負えない時に都市を強制的に破壊する最終手段で、今までに使われた例はごく僅か。しかもその全てが宇宙人の攻撃ではなく、政治的策略で沈められた説が有力だ。-ニュースでは宇宙人の侵略とだけ放送されているが。
「は?ではありません。早く避難を」
「いやいや、何で消去するのさ」
「ですから宇宙人の」
「宇宙人ってうるさいなぁ。あの宇宙人と思われる飛行物体、あれ防衛軍のやつでしょ?」
「何故それを?」
「いや、軍オタだったらわかるからね。いや、軍オタじゃなくてもわかるか」
というか今頃ニコニコしてるサイトを開いたら特定班が機体ナンバーまで特定してるよ。
「それはさておき、とりあえず避難をお願いします。機密上避難可能なのは貴方のみです」
機密上て。
「いや、さすがにクラスメイトを見捨てるのは気が引けるんですが」
「仕方ありません。クリアされるんですから。政府の全員抹殺方針に異議を唱えてくださった平石総長に感謝してください」
そんな押しつけがましい感謝なんて誰も望んでないと思うが。
「そもそもどうせ父のことですからここで恩を売って俺を手駒にしようとしてるだけでしょうし。では、失礼します」
そう言って俺は部屋から出ようとした。正確にはドアノブを引くとことまではできた。だが、そこからが動かない。
「平石総長から従わなかった場合は監禁、拘束をしてでも捕まえろ。との指示でしたので、致し方なくこのような手段を取らせていただきました。申し訳ございません」
「いや、別にいいですけど」
どうせ一時間もすれば誰かが助けに来てくれるだろう。防衛軍の施設に俺がいる時点で完全に察しものだし。
そう、今更だが俺は父に追われていた。昔にいざこざがあったのが問題なのだが、そのせいで俺は裏ではただのお尋ね者扱いになっていたのだ。その時に俺についてきてくれた官僚などもいたのだが、ほとんどは父の力によって抹殺されてしまった。父はほぼ全ての防衛軍を動かすことができるので、正直ちょっと権力を持ったぐらいの人が逆らおうとしても一瞬のうちに抹殺されるのがオチだ。今こちら側についているので大きな勢力は世界的に大きな家門であるベルファスト家ぐらいである。というか何故ここまで政治的ないざこざに巻き込まなければならないのか俺にはわからない。いや、表だっての政治的思惑はわかるのだ。父が狙っているのは俺が持っている時計でそれを入手するためだけに常時防衛軍の一割を割いているということは分かるのだ。
誰かが助けに来るまで時間があるので、俺の時計についておさらいしよう。うん。自分でもわかってないことが多いし。
簡単にいうとこれは変身装置らしい。某ライダーのベルトみたいな感じ。こういうものの総称を「TE(tool evolution)」というらしい。なんだよ道具と進化の単語合わせ。進化のための道具なのか?別に進化はしてないと思うのだが。
それはさておき、そのTE機能自体は他のものにもあるのだが、これは他の機体よりもただ性能が格段に高い。ただそれだけである。
それを何故俺が持っているのかというと、たまたま父について軍の最高機密施設に入った時に時計があったのでつけてみたら外れなくなったのだ。そして時計の表面に触ると装甲のようなものが全身に纏わり付いた。と同時に俺は全ての機能が理解できたのだ。
それで舞い上がった幼い俺は様々な機能を試した。すると父が苦渋の決断をしたような顔でこう言ったのだ。
「殺せ」と。
その時の顔は今でも覚えている。
そして施設にいた防衛軍の人員が兵器で自分を攻撃し始めたのだが、目の前に展開されているシールドに当たるのみで自分はびくともしない。そして最後には何メートルもある兵器や、TEを使った兵士とかが現れた。さすがにその総攻撃には耐えきれなかったのか、俺のTEは破壊され、俺は放置された。死んだと思われたのかそこにはしばらく誰も来なかった。
まぁ、そういう過去があった訳だ。今でもだいぶトラウマになっている。
それでも何故ここにいれているのかというと、放置されて居た所をベルファスト家の一行がたまたま通りがかり、助けてくれたのだ。本当に感謝してる。
そこからは忙しい日々が続いた。
まず、事情を聞いたベルファスト家の者達には父を宇宙司法裁判所に提訴する事から始め、学校の手続きから生活保護まで何から何までやって貰った。別に提訴はやらなくても良かったのだが。
ちなみに宇宙司法裁判所第一法廷で行われたその裁判の結果は、それが本当に裁判の結果なのか?と言いたくなるような内容だった。
『確かに甚大な被害を被った事は認められるべきであるが、それを直ぐに抑えようとした判断も間違ってはなく、寧ろ息子を見捨ててまでして抑えようとした行動は世界的に評価されるべき事である。
よって宇宙司法裁判所の判断としては結論を出さず、こうしようと思う。
歴代、歴史とは勝者が作って来た。
なら今回も勝者が作ることにしようではないか。
条件はこうである。
これからの時効失効までの20年以内に平石総長....平石矢美津の息子である平石弓田を捕らえ、法廷へ連れてこれば防衛軍側の勝利。逆に20年間逃げ延びれればベルファスト家...平石弓田側の勝利とする。
これにて閉廷』
今から考えてもあの裁判長アニメに毒されてるよな。というかよくそれで何も言われないものだ。あのニコニコしてる百科事典とかアンサイクロなぺディアとかに100%中立な内容しか書かせなかったぐらいの裁判だからなぁ。逆に引かれてるとしか言えないんだが。いや、でも前裁判長の記事を見た時には『我らの味方』とか書いてあったんだがなぁ。可笑しいなぁ。
そう俺が首をひねっていると、椅子に座って居た防衛軍の人?が耐えきれないという風に声をかけて来た。さっきまで存在を忘れてたよ。
「さっきから急に頭を抱えたり急に頭を捻ったりして何なんですか!?そんなに気になることでもありましたか?というか自分の立場わかってます?このまま平石総長に会えば貴方の敗北なんですよ?」
「うん。知ってますよ」
そう言うと同時に扉が開いた。
そこから出て来たのは、まぁお察しといえばお察しのメンツだった。
「誰?一人でも捕まらないとか言った人?今の状況と共に釈明してもらいましょうか?」
「おお、怖いよお嬢さん」
「だ、誰がお嬢さんですって!?」
そう騒いでいるのはベルファスト家の御令嬢様であるテネシーである。品とは何だったのだろうか。というかいつも思うのだが何故毎回救出作戦について来るのだろうか。私服で。只々任務の邪魔になるだけだと思うのだが。
「あの、私を忘れてますね。平石総長からはここに来た者は何があっても生きて返すな。全員捕らえよ。との事ですので。失礼しますね」
何?この人。俺の父のファンなの?
「いや、そう言われてもって」
俺は周囲を見渡すとこう叫んだ。
「お前ら何捕まってんの!?」