表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/35

夢追い人の跳躍 11


「結構喋れるんだな」

「……え?」

「いつも言葉に困ってる印象だった」

「……」

 それは間違いではない。この世界でも現実でも、いつもサヤは言葉に困る。

「……その通りだよ。私、人付き合いに向いてない」

「ふうん」

「喋るのも苦手。説明が大嫌いなの」

「確かに説明は下手そうだ」

「下手だよ。だから嫌いなわけじゃないけど。……きっと嫌いだから上手くならないんだね」

 小さく苦笑する。本当に、苦い笑みだった。

「……『黒』は人攫いなんだね。口減らしだ……昔からきっと、こんな風にこの村は動いていたんだ」

 仕方なしかもしれない。やむにやまれずなのかもしれない。

 けれど、『黒』は確かに存在した。

「……マルクは、寝た?」

「泣き疲れて、そのまま」

「……そっか」

 そう、か。

「……」

 辛い現実を。

「吞み込め」

「え?」

「吞み込め、って、私は言ったんだね」

 吞み込め、吞み干せ。

 絶望に打ちひしがれる少年に、サヤはそう言ったのだ。


「――――――――――――なんて、ひどい」


 ぼろりと涙が伝って―――サヤは膝を折った。

「ひどい。ひどい。ひどい。ひどい。ひどい。ひどい。ひどい。ひどい。―――こんなにひどいこと、ない」

 そんなにひどいことなのに、サヤは言った。

「こんなの、誰が見た夢でもない。世界じゃない。誰も望んでない。なのに―――どうして私は、こんな世界しか繋げられないの」

 混乱しつつもきっとどこかで期待していた。

 編集で映画は変えられるのだと。―――結末さえも、変えられるのだと。

 自分の描いた夢通りに出来るのではないかと思った。―――そんなわけ、ないのに。

「幸せにしたかった。幸せな世界にしたかった。そんな世界を、作りたかった―――」

 なのに。―――なのに。

「―――そう?」

 しかし。―――ドーリは短くそう言うと。

 サヤの目の前に膝を折った。

 暗い夜の下でもわかる、澄んだ眼がサヤを見る。

「サヤが早く気付いたおかげで出来たことがある」

「は……」

「これでも旅人なんでね。村の様子はぐるっと回って何度も見てる。うしろ暗い奴らがたむろする辺りだって知ってる」

「……」

「ここから先は、誰にも言えないことだな」

 そう言うと、ドーリは小さく笑った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ