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アンチヴレイブ  作者: 出壊鉄屑
第九章 真の勇者
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第八話

 エターナルだった残骸の上で、二人は戦う。不安定な地面に足をとられながらも、彼らの剣筋に衰えの兆しはない。

 レイドは目を血走らせ歯噛みする。何故だ。何故、奴を捉えられない。

 レイドはファウンドの思考をしっかり読んでいた。奴の仕草も思考も全て理解していた。にも関わらず、ファウンドの行動をレイドはまるで、予想できないでいた。

 ファウンドの思考がレイドに伝わってくる。


『脇から斬り伏せる!』


 ファウンドは足場の悪い事を利用し、ふんばりの効かない方向から、攻撃を繰り出そうとしていた。ならレイドは一歩前に出て、ファウンドの出鼻を挫こうとする。

 そしてレイドは脇に飛び出した。しかし、ファウンドは唐突に転移する。


「またか!」


 前兆のまるでない意味の分からない転移。戦略もない無意味な行動だ。魔力の乏しい人間のする判断では到底ない。

 その時、レイドの左肩に鈍痛が走る。踵落としだ。レイドの体が左に傾き、足が滑った。レイドは咄嗟に側転をすると、体勢を立て直す。

 ファウンドも何故か、顔面から地面に落ちたのか、つんのめるように瓦礫に頭を埋めていた。

 レイドの刀がかたかたと音を立てる。なんだこの醜い戦いは。剣術も戦略もない。まるで、野猿の喧嘩だ。

 レイドは、立ち上がるファウンドを蔑むように見つめる。奴の魔力は完全に尽きたはずだ。にも関わらず、何度もアニムの力を使っている。脈絡のない転移はそれと何か関係があるのだろうか。不快極まりないが、その脈絡のなさにレイドが困惑しているのは確かだった。

 ファウンドの意志の籠もった瞳が、レイドを見据える。自分が負けるとは微塵も思っていない。むしろ奴は勝利を確信してさえいる。


「死に損ないの分際で!」


 レイドは怒声を上げた。地面に紅刀を叩つけ、彼はファウンドへと詰め寄る。

 気に入らなかった。奴が余裕ぶっているのが、無性に我慢ならなかった。動くのも難しいはずだ。精神力も枯渇しているはずだ。その証拠に、ファウンドの足腰に力は入っておらず、ゆらゆらと揺れている。倒れた衝撃で死にそうなほどに弱々しい。

 だからこそ、レイドはいつも以上に、深く踏み込む。ファウンドをつなぎ止めている、最後の希望を打ち砕くために。


『このまま奴の刀を受ける』


 レイドはファウンドの思考を頭の片隅で意識しながら、紅刀で一閃を放った。しかし、レイドの刀は届かない。寸前の所でファウンドは消えた。そして、レイドの予想も、ファウンドから伝わってくる思考をも覆し、ファウンドは異様な場所から攻撃を放った。

 今度は瓦礫の下だ。瓦礫の一つ一つは大きい。巨大なものは人一人くらいなら入り込める隙間がある。かといって、そんなところに転移する利点がどこにあるのか。

 だが、実際にその無軌道さがレイドへ着実にダメージを与える。ファウンドの魔剣が、レイドのつま先を貫く。


「っく!」


 レイドは苦痛に顔を歪めながら、その場から飛去ると、息を荒げファウンドを睨む。

 さきほどから、同じ事の繰り返しだ。ファウンドへの攻撃はことごとく空振りし、逆に彼からの反撃は殆ど受けていた。

 ファウンドは一撃が軽い。おかげで受ける傷はどれも浅いが、その一つ一つの攻撃を軽んじた結果、いつの間にかレイドは消耗していた。レイドの鎧はファウンドによって切り刻まれ、使い物にならなくなっている。そのため、今、レイドの身を守る装甲はなにもない。例え、ファウンドの斬撃が軽くとも、胸を貫くことはできるかもしれない。


 レイドは深く息を吐く。精神の高ぶりを落ち着かせようと、必死に深呼吸を繰り返す。

 頭が冷えた所で再度状況を確認する。目の前には死にかけの男が一人。男は自分の思考とは無関係にアニムを使用する。そして、アニムに魔力を送らずとも魔法を発動出来ているようだった。

 それらの要素を踏まえた上で、ファウンドから流れてくる思考を吟味する。そうすれば、自然と見えてくる。やはり、誰かがファウンドに助力している。ファウンドに味方し、魔力を送っている者がいる。

 苛立ちで我を見失っていた。だが、冷静になればどうということはない。奴は魔力を援助してもらっているだけだ。力を増したわけではない。瀕死な事に変わりはない。

 そしてレイドは腰に刺している鏡心剣エルダへの魔力供給を止めた。思考を読むことが無意味なら、もはやそれは雑音でしかない。アニムはむしろ邪魔だろう。

 レイドは紅刀を己の眼前に掲げ、目を閉じた。聞こえるのは空気の揺らぎと、ファウンドの息づかい。そしてレイドの鼓動のみ。

 瞼を上げると、瞳孔がまるで竜の如く開かれた。深紅の魔力が翼のように広がる。レイドの紅刀が魔力の波濤を受けて、喜ぶように甲高い振動を発する。


「一瞬で終わらせる」


 レイドはそれだけ呟いて、瓦礫の上を飛翔するように駆け抜けた。

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