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アンチヴレイブ  作者: 出壊鉄屑
第三章 屍山血河
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第三話

 ミッシェルは醜悪な魔物の大群に飲まれようとしているファウンドを見ながら、彼に少なからず哀れみの念を抱いていた。

 フロイラ様に気に入られたのが運の尽き。彼女は森羅万象、全てを快楽の道具としか見ていない。彼は骨の髄まで性欲を満たす道具として使われるだろう。

 ミッシェルはしかし、猟犬には相応しい最後だとも考えていた。彼にとって主人の元を離れた野良犬など、家畜の餌にも劣る。彼は機関に尽くすこと、勇者に尽くすことこそが至上だと考えている。だから、機関に牙を向いた時点でファウンドに大した情などわくはずもなかった。

 そうした思いをもって彼はファウンドが魔物に襲われていく様を見ていた。

 その時、魔物の群の中から一際激しく深紅の光りが瞬いた。それを発端に、魔物の断末魔がミシェルの元まで届く。続けて、ファウンドが魔物の上を疾走している姿が目に映った。それは見知った山地を駆けるガゼルのように、危なげなく魔物の群を足場にしている。彼は魔物を諸ともせず、血飛沫を舞い上げながらこちらに向かっていた。


「あはっ!」


 隣に立つ主人が喜んでいる。どうやら、あの猟犬はこの大群を前にしてもなお、フロイラ様を殺せると思い上がっているようだ。精々、フロイラ様を楽しませてくれる事を願おう。こちらには、犬を殺す方法など、いくらでもあるのだから。

 魔物を蹴散らすファウンドの姿を睥睨しながら、ミシェルは内心ほくそ笑んだ。

 

ΨΨΨ


 ファウンドは化け物の頭や肩を足場にして、ローブを翻しながら駆け抜ける。転移を繰り返し、魔物を退けながら着実にフロイラへと近づいていた。

 ここにいる魔物の全ては元は人間だった物達。それぞれが、フロイラの遊戯の副産物だ。さきほど見せられた醜悪な儀式から想像するに、死ぬ間際に感じた痛みが、魔物の身体を形成するときに大きく影響するのだろう。

 奇妙に肥大した腕や、体の全体までに及ぶ巨大な口。それらを駆使して、彼らは襲いかかる。

 ファウンドに雑念がよぎる。彼らをあの魔女から解放してやりたい。その最も簡単な手だてをファウンドは持っている。

 聖剣を持つ手に力が入る。シールの能力を使えば、彼らを奴隷から解き放てる。しかし、あと三回程度しかファウンドには聖剣を使う余力がない。

 聖剣を使い始めてから、魔核の周囲にまとわりつく異様な感覚をファウンドは味わっていた。徐々に魔核が蝕まれているのが実感できる。それはゾフィアによる副作用。機関に頼らずともアニムを使用できる破格の能力は、命というそれ相応の対価が必要になる。

 だからこそ無闇には使えない。少なくとも復讐を果たすまでは。

 強固に宿る決意を瞳に湛えて、ファウンドの視線がフロイラを射抜く。

 フロイラは勇者であると同時にエリムスだ。エリムスは、魔法を魔導具なしで発動できる人間だ。エリムスはそれぞれ一種類の魔法を行使できる。彼女が魔女と揶揄されているのは、あながち間違いではないのだ。

 フロイラは魔導具を生み出す魔法を、使用できると言われていた。実際、その能力を買われて、今の魔導工房のトップに君臨しているという話だ。

 魔導具を生み出す魔法というのが、何かは分からない。だが、戦闘に利用できる類の物ではないだろうというのが、ファウンドの見解だった。

 ファウンドはむしろ、フロイラの持つアニムの方に意識が向いていた。魔剣キマイラは注意しなければならない。あれで刺されれば魔導石で置換されたこの身体でも、一溜まりもないだろう。

 魔剣キマイラにさえ注意すれば、後は奴隷頼みの物量作戦。それなら、どうにかなる。

 ファウンドは愚劣な魔女を殺すべく、進む足に力を入れた。

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