さようなら
エピローグ
私の青春は、ラヴェールと一緒に。
覚えてる?高校受験で、第一志望に落ちたあの日。
ラヴェールはそんな事気にするな、なんて慰めてくれた。
今でも気にしてます。東大に現役合格した今でも。
覚えてる?好きな人に告白して、見事に撃沈したあの日。
ラヴェールはこんな可愛い女の子を振るなんて!って怒ってくれた。
でもラヴェール、私はそんなに可愛くない。買い被りすぎよ。
覚えてる?めぐみさんがインターハイで優勝したあの日。
めぐみさんにラヴェールを一晩預けたよね。
どんな話をしたの?めぐみさんに聞いても答えてくれないし。
覚えてる?私が今度こそは、と奮起して東大を目指す事を決めたあの日。
高い目標を持つことはいいことだ、って言ってくれたけど。
ごめんなさい、ラヴェールにはもう出来ない事だった。
そんな私も、高校生の時間はもうおしまい。
春からキャンパスライフが待ってる。卒業証書を誇らしげに掲げ、部屋に戻ると……
ラヴェール?ラヴェール?
もう喋らない。
そっか、お別れ。最初からその約束だったね。
もう泣かないと決めたけど、卒業式の最中も泣かなかったけど。
なんでだろう、涙が止まりません。
ありがとう、ありがとう。ありがとう……
いつか、私もラヴェールのところに行くでしょう。
ああ違うの。人はいつか死ぬ、っていう意味でね。
私も、ラヴェールのところに、いつか行くことになります。その時は――
――同じ時間を、刻みましょう。
それまで、しばらくの間。
さようなら。