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92話:運転の練習と帰還


 翌日の納車。ディーラーにやってきた。


 昨日と同じ、やたらといい笑顔の営業さんが対応してくれる。


「ばっちり組み上げておきました」


 動作とエンジン音を確認し、師匠が支払いを行う。燃料は満タンだ。


「それでは運転方法をご説明させていただきます」


 かんたんな運転講習が始まった。


 免許制度のないこの世界ではクルマを買った後はディーラーで練習して各自が乗って帰る。保険などもないので慎重に。


 もっともパワーもそこまでないし、道路もガタガタなのでそんなにスピードも出せないだろう。自然に安全運転になってしまう。


 さて、現物を見てみよう。


 ラダーのトラックフレームにエンジンが載ってカバーがついている。運転席はオマケのような椅子と背もたれ。それ以外はなにも、屋根どころかフロントガラスすらついていない。荷物を載せるはずの後ろのほうはフレームむき出し。ちなみに左ハンドル仕様。右手でシフト操作をすることになる。


 前の世界では普通車免許を持っていたのと、それに合わせた操作系に改造してもらったのでなんとか操作はできる。タイヤ性能やブレーキ性能が死ぬほど悪いので()に任せた運転はできない。


 感覚としては新車の高級セダンからタイヤが終わってる25年落ち中古の軽に乗り換えた感じか。実際はそれより(ひど)いのだが。運転は慎重にしないと。


 トラックフレームは通常のモデルよりリアタイヤ位置がタイヤ一個分くらい後ろに移動している。トラックというだけあって荷室を広く作れるようにフレームは長く、足回りは丈夫な板バネサスペンションだ。


 左右独立懸架ではないのがちょっと気になる。フロントも両輪懸架で左右のタイヤを一つの板バネで支えている。


「荷運び用ということで最終減速比は7:1となっております。最高速度は30マイル程度となってしまいました。

 念のため、基本仕様の4:1ギアも予備品としてつけております。こちらなら55マイル越えも可能です」


 前回の上位エンジンに関する説明通りとはいかなかったが、そこらへんは営業さんが勘違いしてたのだろう。ギアを交換すれば最高速度55マイルもいけるのであれば問題あるまい。


 そもそもそんな速度は求めていない。馬車自体が巡航速度10マイルにも届かないのだ。それの代替なのだから最高30マイル、余裕を見て平均15マイルでも上等だろう。

 それに最高速度を出せるのは整備された、平地の道路での話だ。なにもレースをしようってわけじゃない。


「予備部品は袋につめてフレームに縛っております。ご確認ください」


 師匠と俺が注文した部品が入っているかチェック。問題なし。


「確認した。注文よりタイヤが二つ多かったが、これはおまけか?」

基本型(ベースキット)に含まれております予備が一つとおまけでございます。

 昨日の説明に不備がございましたので」


 最高速度がらみの説明不足の件だろう。エンジンをハイパワー版に載せ替えたら「50馬力で最大時速が平地で55マイル」と言っていたが、実際はトラック用のギアに変更されているのでそんなに速度が出ない、というアレだ。


 元々馬車もどきをトレーラーのように()くつもりだったから、スピードよりトルク優先のトラック用ギアのほうが都合がいい。


 しばらく練習をした後、元の馬車に買い取った銃器を載せ、このトラックとともに西都市へ帰ることになった。街道は馬車がすれ違うこともできる幅があるのでこのトラックでも大丈夫だろう。


 帰りは馬車と違い、サスペンションがついているので尻は痛くなかったが、姿勢を変えられないこととスピードが出せないストレスが(ひど)かった。


 俺にアクセルを踏ませてくれ……。


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