84話:ダークエルフ登場
2018/02/24 表現の一部修正
薬屋への買い出しをした翌日。
ダークエルフと呼ぶに似つかわしいお客が店頭に立って、ベック師匠と話し込んでいた。色黒の肌、尖った耳、短く切りそろえられてはいるが美しい銀髪。ダークエルフとしか言いようがない。うむ、やはりこの世界はファンタジーだ。
そのダークエルフはガンベルトにかかるかかからないか、というくらい短めの二重マントを着込み、左腰に刀、右腰にリボルバーを下げていた。ずいぶん奇妙な格好だが、旅で急に襲われた時などは動きやすいのかもしれない。ショート丈コートみたいなものか。
ホームズのトレードマークのような正統派インバネスや、大正バンカラなとんびマントではないのは肩や腕の動きを阻害しないためなのだろうか。日本刀らしき刀を振り回す都合に合わせたスタイルなのだろう。
マントの下は学ランのような詰め襟軍服スタイルにパンツルック。舐められないように、という配慮か。それとも埃避けの旅装束か。なんにせよただものではない気配を纏っている。眼光も鋭い。ヘタに後ろに立ったらバッサリ切り捨てられそうだ。
そのダークエルフとベック師匠が話をしている。
「む、ご主人はハティ・プタハ系の御方でしたか。失礼、山妖精とお呼びした方がよろしいか?」
「祖父がそっち混じりと聞いている。俺はどっちかというと岩妖精とかドワーフと読んで欲しい所だがな」
驚愕の事実! 師匠はドワーフだった。見た目はガタイのいいおっさんやぞ。180cm、95kgはあるぞ。ちっこくないぞ。髭は濃いが。
「開拓していた南都市群より、さらに南から来たのか。あっちはアメミトだかアマムトだか呼ばれてる、やたらでかいトカゲとかが出るって聞いたけどどうなんだ?」
「アメミットですね。繁殖期でもない限り問題はありません。里のものは腕自慢、兵ぞろいですから」
会釈をし、会話に参加する。
「どうも、ここの従業員のジョニーです。ダークエルフさんのお名前は……」
「ダークエルフと呼ぶな!! 差別用語だぞ!! 私は色黒なだけの森妖精だ!!」
「あ、はい。ごめんなさい」
怒られた。いや、マジでビビった。ここまで激高するとは。言葉には気をつけなきゃなぁ。
「で、エルフさんは南からいらっしゃったんですよね? ここまで歩きか馬ですか?」
「東商都市までは鉄道、そこからは定期馬車で王都、そして西都市だ。ふぅ……。私の名前はエイブリー・マルメ。エイブリーと呼ぶが良い」
鉄道網あったのかよ。なのに農業が盛んな王都と繋がってないってどういうことなんだ? 訳が分からん。南方は食文化が違って輸出じゃ儲からないのか?
後から師匠に聞いたところ、鉄道網は東商業都市が鉄道網のハブになっているようだ。電信ギルドも拠点がそこにあり、敷設のコストが安い電信のほうが先に普及しているらしい。
鉄道はどうしてもレールや車両の初期投資、ランニングコストがかかってしまう。それに対し、初期投資は電線と交換所でなんとかなる電信のほうが先に王都や西都市に接続されたようだ。
西都市に続く電信柱なんて見たことなかったけど、道に沿って埋設されているらしい。銅ケーブル泥棒でも出るのだろうか?
ダークエルフ、じゃなかったエイブリーさんは見聞を広める旅に出た若手のエルフらしい。里の生活に飽きて見聞を広め、役に立つ知識を里に持ち帰る(こともある)、旅に出るエルフはたまにいるとのこと。
「私はしばらく西都市に住むことにするよ。南は銃が旧式ばかりでね。こっちは新しい銃が発達してきているらしいじゃないか。北都市と迷ったんだが……」
なにか言いよどんでいるエイブリー。
「どうも海は苦手でな。森妖精は海も嫌わない者が多いが。私は、その、変わり者なのだ」
それが理由で里に居づらくなったんだろうか。
それにしても海を嫌わない森妖精って違和感がすごいな。




