79話:ついに登場、ダブルアクションリボルバー
前回、ジョン・トヨダさんの来訪時に北都市の新製品をいくつか持ち込んでくれていたそうだ。そしてその中には待望のダブルアクションリボルバーが含まれていた。
開発したのはニシ・ベツキ銃砲開発社。シラカベギルド長が経営難だったところを技術を買い上げて助けたのだとか。元々ライフル開発をしていたが儲からず、リボルバーの研究を専業にしたらしい。さすがに専業化しただけあってリボルバーの出来は非常に良いそうだ。
「で、こいつがその新製品ってやつだ」
と、ベック師匠がテーブルの上にリボルバーを置く。
「見ていいですか?」
「いいぞ」
おもむろに手を伸ばし、全体を確認。前の世界の時系列と外見からするとM10リボルバーの4インチあたりか。
銃口を人に向けないようにテーブル脇に向ける。サムノッチを押し、人差し指でシリンダーをスイングアウトさせる。ちょっと硬い。トイガンじゃないから当たり前だ。
シリンダーが空であることを確認し、銃を上に向けてエキストラクターをカシャカシャと2回ほど押して動きを確かめる。シリンダーを左手で戻し、ハンマーを起こす。
トリガーを引き、動作を確認。さらにそのままトリガーを引き、ダブルアクションすることを確認。おもむろに6回トリガーを引いて動作が引っかからない事をチェック。シリンダーをスイングアウトさせてテーブルに戻す。
「これはいい銃ですね」
ベック師匠とミリーが得体の知れない生き物を見るような目つきでこちらを眺めている。
「今回は説明も、設計図もなかったよな? なんで操作ができる?」
「カンです」
「なんで初めての鉄砲をそんなに扱えるの?」
「カンです!」
言い張るしかない。前世がどうとか言っても伝わらないだろう。頭がおかしくなったとしか思われない。
「で、これ、うちで扱うんですか?」
無理やり話をそらす。
「ん、ああ……。それなぁ。どうしようか迷ってんだよ。引金を引いただけでハンマーが起きて撃てるのは便利だけど、トリガーが重いし。信頼性も長く使ってみないと分からんからな」
「個人的には2インチくらいのショートモデルをミリーに持たせたいですね」
「え、うち?」
ミリーが驚いて目をパチクリさせている。耳もピコピコ。うむ、かわいい。
「なんでだ?」
師匠の当然の疑問。
「ミリー、今はボルトアクションしか持ってないじゃないですか。なにかあって至近距離に敵が来た時用です」
「ジョニーが守ってくれるんと違うん?」
方言出てるぞ、ミリー。
「常に俺と一緒に行動してるわけじゃないだろ。とっさに自衛できなくてどうすんだよ」
たしかに、と呟くミリー。
「トヨダ式オートじゃダメなのか?」
「グリップが太いし重すぎますからね。開拓村の男共ならトヨダ式オートのほうが良いでしょうけど」
それに、と付け足す。
「ライフルの取り回しに困る位置の敵に弾を撃ち込むための予備ですから片手で撃てて軽くて小さいこれがいいんです。
それに.38口径じゃないですか。普通のガンスリンガーには好まれないでしょ、売り物としてはちょっと。
でも抜き撃ち用に2インチバレルならギャンブラーや護身用には重宝されるかもしれません」
師匠がううむ、と唸る。
「たしかに.44口径に慣れちまった連中にゃ心許ないだろうな。片手で撃てる利点はあるが……」
悩む師匠。
「割り切って2インチモデルあたりの短めを護身用ってことで扱うくらいがいいんじゃないかと思いますよ。このグリップの太さなら女性でも十分扱えるでしょうし、ミリーなら片手で連射もいけますし」
「ちょ、それどういう意味よ! うち、そんなマッチョじゃないもん!」
全身で抗議するミリー。しかしドワーフ体型とは言わないまでも、同年代の女子と比べたら骨太だし筋肉あるほうだからね?
「ほら、ミリーは野良作業で鍛えられてるし、握力あるじゃん」
納得はしていないようだが、多少はクールダウンしてくれた。俺はミリーが女らしくないとか男勝りだとかそういったことは一切言ってないからな?
たしかに胸は多少控えめだけれど! メンズウェアを着てても違和感がないボーイッシュだけれども!
口に出すと殺されそうなので黙る。
いや、ミリーは愛想もいいし、ベック師匠の看板娘ってことで町の人には可愛がられてるんだよ。
結局、ミリーをなだめるのに小一時間ほど費やすこととなった。




