49話:ダイナマイトだと思っていた物はTNT爆薬だった
1901年には主要な爆薬としてTNTが使われていたと初めて知りました。
寝る前のノート整理の時間。いろいろと爆弾について考えていた。
工業用爆薬として購入してもらった物はダイナマイトではなかった。トリニトロトルエン、いわゆるTNTだ。TNT換算で10メガトンの水爆、などと言われるアレだ。黒色火薬の約二倍の威力。ダイナマイトと比較しても1.5~2倍。そりゃ少量でもクレーターができる訳だ。
いまさらながらに恐怖が襲ってくる。下手をしたら、運が良くて手が吹っ飛ぶ。悪けりゃ死ぬ。いや、運が良ければ一発で死ねる、悪けりゃ手や目を失うって感じか。ゴムに無煙火薬と一緒に混ぜて偽プラ爆弾もとい疑似プラスチック爆弾として使ったのはあながち間違いでもなかった訳だ。
ゴムが固まらないように可塑剤を混ぜればもっと使い物になるかもしれない。TNT爆薬の粒子を細かくしてゴムで燃焼効率が落ちないように無煙火薬の量を増やして。ワセリンあたりに変えるか? それとも可塑剤にヒマシ油を……
俺は何を作っているんだ。俺は爆弾屋じゃない。使いやすい小型のトラップ用手榴弾や対人地雷があればいいな、と思っただけだ。なんで自分で開発しているのか。
そりゃプラスチック爆弾があればいろいろ便利ですよ? ドアに穴をあけたり、ドリルと併用したら橋を壊したり。木を倒すのにも鉄道を破壊するのにもいけちゃいますよ。
しかしそれが目的ではない。あくまで敵モンスターの侵攻を遅らせるための手段だ。効率的に敵を磨り減らすのが目的なのだ。目的は破壊ではない。
効率良く足止めをするには何が良いのか。現代戦では地雷がもっとも効率が良いとされている。殺さずに戦力を削ぎ、救出に人数を使うことになるからだ。しかしモンスター相手ではそれも望めない。同族が殺されかけてもこちらを殺そうとやっきになるだけだろう。不利だと思ったら逃げ出すだけだ。
要は一気に数を減らして「手を出すとヤバい」と思わせないと。モンスターの種類によってはそれすら意味がないかもしれない。ライカンスロープはある程度の知性があった。しかしそれ以下の、たとえば虫のようなモンスターだったら。恐怖も損得もない。
忌避剤を作りたくてもモンスターの習性が分からないと無理だ。昆虫系なら煙で燻すだけでも効果はあるかもしれない。そうだ、スモークグレネードを作ろう。硝酸カリウムと砂糖を1:1だっけ、混ぜて溶かせばできあがり。硝酸カリウムって手に入るんだっけ? ToDoに追加だ。「師匠に硝酸カリウムの入手性を確認」っと。
ToDoばかりが増える。「済」項目はちっとも増えない。
フラググレネードも欲しい。ピンを抜いたら起爆するようなシンプルなヤツ。これはすぐにできそうではある。缶か鉄パイプに詰めた爆薬を用意。雷管に導火線を突っ込んで適当な長さに切る。マメ弾の弾頭を抜いて五センチくらいの導火線、その逆端にカシメる。適当なファイアリングピンをスプリングで打ち出せばほぼ完成だ。
太目のパイプと雷管が刺さるサイズのパイプ、スプリング、撃発用の鉄片。あとは固定ピンと安全ピンが作れれば問題ない。明日にでも試してみよう。撃発装置、いわゆるファイアリングピンの機構は安全のために直前にねじ込む方式にしたい。
空き缶にファイアリングピンをねじ込む蓋を接着してやればいいか。ファイアリングピン自体を太目のスティック状にしたらドイツ軍のポテトマッシャーモドキだ。投げやすくていいかもしれない。
寝る前はドンドンとアイデアが湧いて出る。そのうちいくつを実現できるだろうか。




