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48話:トラップ爆弾と近接射撃トレーニング

2016/08/03 一部表現と誤字等を修正

2015/08/11 機種依存文字を修正しました


 朝食後、師匠にホルスターを作ってくれる職人を紹介してもらう。


 トヨダ式オート拳銃用のスマートなホルスターをオーダー。抜き撃ち用のパドルホルスター。ベルトではなくズボンと身体の間に板を挟んでひっかけるタイプだ。

 分厚い革とメタルクリップの併用でがっちり固定できるようにしてもらった。空の予備マガジンを渡しマガジンポーチも作成を依頼する。二つ保持できるタイプにしてもらおう。


 革職人さんは暇だったらしく今日の夕方には完成するらしい。どこの職人も仕事が早い。職人全員がそうなのか、俺の周りに凄腕がそろっているのか。


 師匠に頼んでおいた爆薬と雷管、導火線をいじる。弁当箱のような金属ケースを用意。固定用足と雷管差し込み用の穴をあける。固定足はボルトを内側から通しナット止め、先端をグラインダーで削り尖らせる。雷管穴は蝋を塗った薄い紙で仮蓋、米を練った糊で接着。爆薬を詰める。厚紙で蓋をしてショットガン用の散弾を並べる。少し薄い金属の蓋をしめて隙間にゴム接着剤を充填。


 対人地雷、試作第一号の完成である。爆薬量と散弾量、散弾種を変えたパターンを三つ作る。ついでに余ったゴム接着剤に粉末化させた爆薬を混ぜ込んだ偽プラスティック爆弾も試作。これもいくつか混合比を変えた物を用意。ついでに銃弾用の発射薬も混ぜてみる。


 ノートに混合比や爆薬量などをメモしてテストに向かう。もちろん西都市内でテストを行う訳にはいかない。ベックマンズシューティングレンジの一角に陣取り土嚢どのうを作る。ターゲット用の薄板を一メートル間隔で何重にも設置。散弾の散り具合を見るためだ。地雷のケース自体が破裂したときのことを考えて後ろにも土嚢を積みターゲット板を置いて破片が飛んでこないかの確認用とする。


 雷管に遅延燃焼タイプの導火線を挿してペンチでかしめる。太い釘で雷管穴に窪みを作り雷管を挿す。

 深呼吸。緊張する。念のため爆薬量が一番少ないタイプからテストだが……。数十メートル後ろの、安全な土嚢の影に身を隠し導火線に点火。さて、どうだ?


 30秒後。轟音ごうおん。しばらくの間、耳鳴りがとまらない。まさしく轟音だ。土嚢の影に隠れていてもこれだ。


 結果から言おう。鉱山発破用の爆薬は威力が大きすぎた。タバコ二箱くらいのサイズに収まる爆薬と散弾では多すぎたのだ。直径約一メートルのクレーターができ、数メートル先の散弾確認用の板は爆圧で跡も残らない。五枚目くらいまでズタズタ。10枚目まで見事に抜けている。散弾の開き具合はおよそ40度くらいか。いまいち広がらない。


 まあ最初から上手く行く訳がないのだ。トライ&エラー。


 危ないので爆薬量の多い対人地雷試作一号の二番機、三番機も爆破処理とする。クレーターの中心に二つ置いて周りに土嚢を積む。上の地雷に雷管を挿して背中合わせに配置、点火。一発の雷管で見事二つの地雷が起爆。先ほどの数倍の爆音。次からは耳栓を用意しよう、うん。これならフィルムケースくらいの太さがある鉄パイプに詰めるだけで十分な手榴弾になるんじゃないかな。


 偽プラスティック爆弾のほうは上手くいった。こっちのほうがよほど使いやすい。杭を地面に打ち込んで偽プラ爆弾に雷管を挿す。表面には鳥撃ち用の散弾をまぶす。かまぼこ状に成形し、表面に鳥撃ち散弾を埋め込んだ対人地雷は綺麗に散っておよそ120度の射角だ。シカ弾用散弾でも同じような結果が得られた。

 こちらは準備が多少めんどくさいが使い勝手は上だ。タール状のゴムを成形、散弾をまぶす、爆薬設置、雷管装着。これでやっと使える。設置時間は数倍かかるし手がゴム爆薬で汚れるが安全。これは安全性を重視すべきだな。成形済みの偽プラ爆弾に散弾をまぶして紙に包んでおけば設置に手間はかからないだろう。杭や木の幹にくっつけるのが手間だが荷物に貼り付くよりはマシだ。荷物にくっついたゴム爆薬が誘爆なんて願い下げ。シャレにならない。


 ついでに燃焼テスト。火中で爆発しないかの確認。クレーターの中で火を焚いてそれに偽プラ爆弾を少量だけ放り込む。練りが足りなかったか小爆発は起きたがまぁ安全と言えなくもない。ちなみに威力や燃焼具合は発射薬をまぜたやつのほうが安定している気がする。

 次の機会には発破用爆薬と発射薬、ゴムの比率テストをしたい。ToDoに追加、と。


 ミリーが作ってくれたお弁当を食べながらノートに結果を書いていく。今朝、出かけると言ったときに喜んでお弁当を作ってくれたのだ、二人分。ミリーはまだまだ除算があやしいので居残り勉強にしたけど。それに爆薬を使うのは危険だし、爆発音で耳を痛めたら大変だ。アヌビス種やウプワウト種、いわゆる犬系の亜人は耳と鼻が人より利く。後遺症が残ったら大事おおごと


 ミリーはちょっとふてくされていたようだが「ジョニーがそう言うなら」と最終的には納得してくれた。例のペンダントをつけてくれていたのに気づいたのは出かける直前だった。似合うと褒めておいた。これで機嫌を直してくれたらいいんだが。


 今度はオートマティック拳銃の練習だ。クレーターを埋め戻し、5、6、7メートルそれぞれにマンターゲットを設置。ズボンに挟んだトヨダ式オート拳銃を抜き撃ち練習。それぞれ腹に二発撃ち込み、戻すモーションで頭に一発づつ撃ち込んでいく。コートを払い、腰位置で最初の二発を発射。両手撃ちに移行して残り二人に二発づつ。最後の一人は頭にも一発。射線で相手グループを撫でながら頭部に一発づつとどめを刺していく。これの反復練習に残りの時間を費やした。


 帰り道。ショベルを背負ってコートを翻す姿はアンダーテイカーかグレイヴディガーか。シュールだ。精神年齢はともかく身体は15才だぞ。


 西都市に戻りホルスターを受け取る。何回か抜き撃ちのテスト。ずれることもなく格段に抜きやすくなった。予備マガジンホルダーも適度な抵抗で抜き取れる。


 予備マガジンを挿すためのポーチも追加でオーダーする。二つ横に並ぶマグホルダーが二つになる。左腰と背中側に一つづつ用意できれば十分な火力が保持できるだろう。ショルダーホルスターもオーダーしようか悩ましい。


 晩飯の後には地雷とホルスターの件を師匠に報告だ。


「というわけで試作品は使い物になりませんでしたが、副産物のほうは実用に耐えられます」


 ベック師匠は苦笑いだ。


「ジョニー、おまえ本当にガンスミスになる気があるのか? どっちかというと武器開発を専門にしたほうがよくねえか?」


 うん、俺もそう思う。しかしガンスミスをやりたいのも本当だ。


「やぁ、銃弄りもちゃんと覚えたいんですよ。トヨダ式オート拳銃を実用品にしたいですから。リボルバーは修理くらいが関の山だとは思いますけど、最終的にはオートマティック専門でやっていきたいです」


 師匠は思案顔。


「まぁそれもアリっちゃアリなんだがな」

「ジョニーはそんなにそのトヨダ式が気に入ったの?」


 ミリーは不思議そうだ。道具おもちゃにこだわる男の子の気分は分かってもらえそうにない。


「リボルバーより馴染むんだ。それに連射も楽だから。リボルバーの熟練者より早く連射できるし交換も早い。より安全により早くモンスターを制圧できると思うよ」

「そういうものなの?」

「そうさな、確かに素人でも連射が早いのは利点だ。だが一定以上の早さにはならない。これはリボルバーも一緒だけどな。でもリボルバーのほうが限界は上だ。まあ促成戦力を増やすにはリボルバーよりオートのほうが有利かもしれん」


 師匠はリボルバーとオートの利点、弱点をしっかり把握しているようだ。しかしそれはシングルアクションの場合だ、というのは黙っておこう。ダブルアクションのリボルバーが出てくるのはまだ時間がかかりそうだからね。


「そうだ師匠。10発か12発くらいのマガジンも作ってください。純正マガジンだと再装填のときに奥まで突っ込むのに手間取る可能性があります。最初に装填しておくマガジンは純正でもいいですが、予備はちょっと長めのほうが楽なんです」

「15発マガジンじゃダメか?」


 ちょっとめんどくさそうな師匠。


「ロングマグだと長いので取り回しや再装填のときに難が出る可能性がありますから。それに10発マガジンくらいなら0.5インチ程度の出っ張りです。そこまで邪魔になりません」

「なら作ってみるか。代わりに純正マガジンを返せ。テスト済みとして銃におまけでつけて売るから」


 さすがに商売人としても年季が違う。これで予備マガジン4つのうち二つが9発、片方は師匠謹製、もう一つが10発か12発か。ラストがロングマグ15発だ。10発マガジン三つにロングマグを予備にするのもいいかもしれない。


「なら純正マガジン全部返しますんで三つ新しく10発マグか12発マグをお願いします」

「ロングマグは一つもってるだけでいいのか?」

「よほどのことがない限りロングマグの出番はないかと」


 弾を装填しっぱなしだとバネがへたってしまう可能性もある。15発マガジンは14発に減らして保持しておこう。


「なら10発マグを二つと12発マグを一つ作ってやる。使い勝手によってどっちを量産するか決めよう」

「ロングマガジンも開拓村の非常用としては使えると思うのでそちらも販売用にお願いします」

「うん、任せとけ」


 と言った後、小声で俺に囁く。


「エミリーちゃんの機嫌をとっとけ。算術ばっかやらされてジョニーが相手してくれないってボヤいてたからな」

「あ、はい」


 と俺も小声で返す。


「まあなんだ、従業員の健康管理も俺の仕事だが、それの対応は慣れたヤツに任せるのが一番だ」


 師匠が笑う。つられた俺は苦笑いだ。


 一人不思議そうなミリーだけが小首をかしげていた。


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