41話:弾薬と潜在爆弾
2016/01/27 表現を一部修正。
翌朝。
「あ、そうだ。昼にジャックと話ってことになってたんだ。トヨダさんとの商談、昼にしちまった。早めに詫び入れてこねえとなぁ」
師匠がうっかりをかます。珍しいことだ。
「俺がジャックさんに伝えてきましょうか?」
「いやいい、俺が今から行ってくるわ。お前らは午前中好きにしとけ。ほれ、飯代と小遣い。デートでも行ってこい」
無造作にポケットから掴み出した銀貨を数枚渡され、師匠は頭をかきながら部屋を出て行く。
「……」
さてどうしたものか。デートと称して二人で買い出しに出かけてもいい。ノートのToDo整理も進んでいないからそっちを片付けるのもありだ。勢い余ってサブマシンガンの設計をしちゃうのもいいよね。と考えていて思い出すことがあった。サブマシンガンの基礎アイデアをジャックに教えてしまっていたことを。
これは問題だ。要素は北都市のエンジニア、トヨダ式オートハンドガンを開発中のジョン・トヨダと西都市のエンジニア、ギルド長の孫ジャック・ムラタの二人だ。
ジョンには開発中であるコルト1911タイプ拳銃の改良案を提示した。ジャックにはオープンボルト式のサブマシンガンに繋がる情報を渡している。
今後のつきあい方を考えないといけない。下手をすると競合製品になりかねないのだ。とはいえハンドガンとサブマシンガン、用途は違う。軍に売り込む、開拓民に売り込む、どちらにしろ弾薬の共通化を図らないといけない。少なくとも俺が知るこの世界ではハンドガンとカービン、どちらも弾薬は共通なのだ。オートマティック式だけ弾薬が機種によってバラバラというのは避けたい。
先に試作品ができているジョン・トヨダ式オート拳銃のほうが有利ではある。しかし9mmパラベラムに近い.38口径のオート弾でどれだけ顧客を納得させられるか。リボルバーでの主流は.44口径なのだ。ジョンの考え方だと小口径でもリボルバーより発射時のロスがないから.38口径で十分であり.44口径より多く装填できるほうが有利、というロジックだ。
個人的には俺も賛成している。開拓民向けにはこれで売れるだろう。問題はガンスリンガーだ。抜き撃ちで何発かのうち一発でも当たれば相手を殺せる、というのが.44口径を好む理由の一つだ。あとは弾薬の大量生産による安さ。新規生産の.38口径オート弾がどれだけ価格を落とせるだろうか。西都市でも生産できるようにしないとコストで勝てない。
あとはジャック・ムラタがいつごろフルオート式サブマシンガンを開発するか、だ。トヨダ式オート拳銃が普及したあとなら.38口径オート弾を採用する方向にいくだろう。なにせ祖父のサム・ムラタは西都市ギルド長。商売に目端が利く人だからこそ西都市ギルドのトップを仕切っているんだろう。
問題はオート拳銃が普及する前にサブマシンガンを開発してしまった場合だ。リボルバーの弾薬はその形状からオートマティックでの給弾には向かない。しかし流用できる.44口径の弾頭は自前の工場で量産している。となると.44口径のオリジナル弾薬を開発してしまう可能性がある。西都市では.44口径オート弾、北都市では.38口径オート弾が主流、となるとギルド間での火種になりかねない。
やばい。後先を考えずに技術話をするんじゃなかった。後の祭りとはまさにこのこと。しかもこの祭りは下手すると血祭りになりかねない。
昼の商談前に師匠に相談したい。しないと爆弾を抱え込むことになる。個人的にはトヨダ式のオート拳銃の量産と普及に発破を掛けられればいいのだが……




