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38話:到着、北都市


 朝日を無事に拝んでから森の山道を馬車で半日。夜には無事に北都市に到着した。


 眼前には海に面した都市と、それを囲む石壁。西都市よりは低い石壁の城塞都市だ。海側からはモンスターに襲われる心配が無いのか、普通の交易港になっているようだ。都市自体は西都市よりよほど広く、何回も拡大を行ったようで、城壁が何重にも広がっているらしい。


「よーし、到着だ。壁の中に入ったらムラタ組はジャックの指示でよろしく。俺らベックマン組はギルドに顔出しに行ってくるから。商売の話は明日にしよう。宿はいつもの所だよな?」


 と師匠。それにジャックも答える。


「いつもの所ですね。じゃあ明日の昼に行きますから。おまえら、ハメ外すんじゃねーぞ!」


 ムラタさんの所の若い衆一同は口々にヒャッハーだのよっしゃあだのと歓声を上げている。おのおの盛り場にくりだすのが楽しみなのだろう。


「んじゃ、ゲートくぐったら俺たちは定宿に行く前にギルドに寄ってくからな。商売荷物を持ったまま宿に行くわけにもいかんし」


 都市への入国? は簡単な身分証のチェックですんだ。通常の出入り門以外に用意されていた大荷物の商隊向けのゲートを通過した。もちろんムラタ組も一緒だ。

 こちらのゲートは各種ギルドの息がかかっているとのことで、大手ギルドの商隊などが優先的に通れるんだそうだ。手続きより世間話のほうが長いくらい。特にベック師匠はほとんど顔パスのようで、門番をしている兵士は師匠の顔を見るなり最敬礼をしそうな勢いで姿勢を正すほどだ。


「おう、いつもすまんな隊長さんよ。ツレ二人はうちの門弟になったやつらだ。顔を覚えといてくれや」

「はっ! 毎度お疲れさまです!」


 他都市のお偉方を迎えたためなのか、北都市のギルドとつながりのあるギルド幹部だからか、通常門の兵士の対応とは雲泥の差だ。


「そういや、西都市とのあいだの交易路、ハグレじゃないライカンスロープどもがでてきた。なんか聞いてるか?」


 隊長と呼ばれた人の表情が一気に険しくなる。


「いえ、自分は聞いてません。上に報告しておきます。大規模ならば討伐隊を出すかどうか会議が開かれるかと」

「んー、規模は20かそこらだった。放置しておいていい数じゃなかったが皆殺しにしちまったからなぁ……」

「殲滅!? いつもの規模の商隊で!?」


 隊長は驚愕を通り越してあごが落ちそうな勢いだ。そんなにすごいことなのか?


「いつものメンツに門弟二人だ。特にジョニーのおかげだぞ? 自信持てや。普段だったらさっさと逃げてたレベルだ。それにエミリーちゃんもビビらずに撃ってくれてたからな。いつもよりかなり楽だった」

「マジっすか……」

「ほんまですかぁ」


 俺とエミリー、二人ともつい口癖やなまりがでるほどの驚き。そんな戦闘だとは思わなかった。初めての実戦ではあったが、FPSの感覚で爆薬を設置したり戦略シミュのノリで相手の行動を制限するトラップをしかけただけだ。命がかかってビビっていたのは事実だが、どこかリアリティを感じていなかったのもたしかだ。エミリーがどう感じていたかは分からない。


「ま、そんなわけでな。うちのこいつ、ジョニーって言うんだがな。こいつの機転でなんとか無傷で切り抜けたわけよ」


 ばんばんと師匠に肩を叩かれる。


「ライカンスロープを20も相手に、半数以下で殲滅ですか……」


 隊長の俺への視線、表情がころころ変わる。興味なしから期待、落胆。新人雇ったんだな、くらいの顔からこいつ、軍人に引き抜けねえかな、ギルド幹部の弟子だし無理か、という変化。

 俺は戦術とか戦略は分かんないんで軍人には向かないと思うんだけどな。得意技は嫌がらせとDIYとハッカー的な手を抜くための手間をかけることだけ。ハートマン軍曹のしごきには耐えられそうもありません。


「そうだ、いちおう証拠に全部の首を落として麻袋に入れてあるから。これ持ってってくれ。ジョニー、降ろすの手伝え」


 血がしみ出した麻袋を馬車から降ろすのは一苦労だ。


「なんにせよご無事でなによりでした。商売の幸運をお祈りしております」


 隊長さんの敬礼で無事に北都市への入場を果たした俺たちだった。


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