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29話:風呂の話、飯の話


 風呂に入りたい。切実に願ったのは久しぶりだ。


 この世界に来てからこっち、濡らした手ぬぐいで身体を拭くくらいしかできていないのだ。熱い湯が恋しい。ここは空気が乾いた土地柄だからか、風呂に入るという習慣がないのだ。

 「僕」も川で水浴びをするか濡れタオルで身体を拭くくらいしか経験がない。師匠に聞いてみたら金持ちがシャワーを使っているくらいで、一般人は濡れタオルが普通だそうだ。


 じょうろでも作ってシャワーを自作してやろうか。そんな気の迷いに身を任せたくもなる。そもそもこの世界で石けんを見たことがない。油で酷く汚れたときは重曹や灰を手に付けて水で洗うくらいだ。水酸化ナトリウムがあれば石けんを作れるのに。

 トイレが穴を掘っただけの代物なのもいただけない。水洗にしろとは言わないが、せめて壁は欲しい。風雨の中で一人踏ん張りたくはない。


 師匠の家のトイレが穴だけなのは男しか住んでないから、と言っていたような気がする。ToDoに追加、優先案件と。


 中国の昔のえらい人は言いました。馬上ばじょう枕上ちんじょう厠上しじょう、と。アイデアを浮かべるには馬での移動中、寝る前、風呂やトイレが良いという意味合いだったはずだ。つまりリラックスできる場所と言い換えてもいい。寝る場所、風呂やトイレはリラックスできる場所なのだ。心の平安のためにもトイレと風呂はなんとかしたい。

 寝床は虫が出るので日干ししてから部屋を燻蒸くんじょうしたおかげかえらく快適になった。やはり風呂とトイレに改革を! まあ厠上ってのはトイレであって風呂を意味する言葉ではないけどね。

 ノートに増えるToDoを見ながら一服する。お茶もあるらしいが高級品だ。なので俺の一服はコーヒーとタバコだ。

 となりの空き部屋はエミリーの寝床になったらしい。布団を干してやったのは俺だ。感謝しやがれ。


 元日本人としては風呂やトイレだけでなく飯にもこだわりたい所だ。異世界転生モノではよく飯の酷さにぶち切れた日本人が米とみそ汁を作って、なんて話がごまんとある。でもこの世界にはすでに米があるんだよな。しかも主食。パンもあるけど米も食う文化なのはありがたい。いや、ほんと。


 ウェスタンな世界だと思ってたけど純粋なアメリカ開拓地ではないらしい。みそはないけどしょう油っぽいものもあるみたい。まだ口にしてないけどね。あと出汁だし。ちゃんと魚ベースで出汁を取ってる。すげえよこの世界。日干しにした魚を燻製にしてブイヨンやフォンのベースに使ってる。さすがに空気が乾燥しているからか本枯節は作れないようだけど。


 うむ、飯には不満はないな。みそ汁が飲めないのはいただけないが、ちゃんとした食事がしっかり三食食えている。師匠ありがとう。


 なんのかんの言っても基本的に不便はあっても不満はない。不便に関しては自分でなんとかできる範囲だ。あとはトレーニング環境を整えたいくらいか。


 射撃練習は店の裏の吹きさらし。撃った弾が他人ひと様の家に突入しないように土盛りをして区切っている。ここで7m20m50mの射撃練習ができるが、標的撃ちだけだ。お祭りの射的とあまり変わらない。対人でより実践的な「複数人を相手にすばやく撃ち込む練習」ができるようにターゲットを複数配置したり、ゆくゆくはキリングハウスを作りたい。

 しかしさすがに師匠にだまって勝手にやるわけにもいかない。それにエミリーのライフル練習に50mのシューティングレンジは近すぎるが、店の裏に100m単位の射撃場は作れない。西都市の外なら射撃練習場は作れるだろうか。師匠に相談してみよう。


 今日もToDoリストに項目が増えた。


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