14話:お代は身体で!?
2016/08/09 表現修正
2015/09/24 一部表現を修正
概算を出してもらい、細かい金額はあとで、ということになった。
ベックさんによると、完全な新造ではないので、バカみたいな値段にはならないとのことだ。10銀貨は切るだろうとのこと。レバーアクションライフルは12銀貨5大銅貨。レバーアクションカービンは12銀貨。これは値引き込みの値段だそうだ。
下取りはリボルバーで四銀貨、リボルバーカービンで六銀貨、弾薬200発で六大銅貨。
手持ちがおよそ銀貨換算で20枚ちょっと。うち数枚分は銅貨が混ざっている。
やはり銃は高級品だ。
まずはリボルバーの半額を入れて一ヶ月のうちに残額分を稼ぐか。それとも豆弾リボルバーとカービン、弾薬を買い取ってもらってレバーアクションを手に入れるか。それともこのままの装備で鳥撃ち、ウサギ撃ちをしつつ一気にレバーアクションとリボルバーを手に入れるか。
これは悩みどころだ。今の豆鉄砲だと外に稼ぎにいくのはよほど用心しないときつい。レバーアクションだと多少は安心だが大物を狙わないと対象がズタズタになって売り物にならない。ハンドガンだと当てるのも難しいだろう。
「おい、何を難しい顔をしてるんだ? 悩むことはないだろう」
ヘンリーさんは他人事だと思っているのかお気楽なことを言ってくれる。
「でも、手持ちがこころもとなくて一気に買いそろえるなんて無理ですよ?」
「お前、この街になんのために出てきたんだ。鍛冶屋になるためなんじゃないのか?」
すっかり忘れていた。銃を買うのが目的じゃなかった。それらはあくまで身の安全を確保するための手段にすぎない。この西都市で鍛冶屋をやっているだけならば、死ぬような目には遭わないはずだ。
「なんだったらうちでガンスミス目指すか? 寝床と飯に多少の給料は保証してやる。ちゃんと鍛冶屋ギルドを通した弟子入りならな」
「おいベック、こいつは俺が先に目をつけてたんだぞ!?」
「でもまだ約束したわけじゃないだろ。買ってくれるなら早い者勝ちってさっきも言ったじゃねえか。人だって同じだろう」
「でも俺、銃をいじったことはあんまりありませんよ?」
「嘘吐け。さっきの試射でもそれなりに使い慣れてるのは分かってんだよ。豆弾リボルバーやカービンも使い込んでたがきっちり整備されていた。それにその爪と革手の汚れは銃整備や射撃でついたもんだろ。それにヘンリーも言ってたが、ライカンスロープの胸に九発外さず当ててたそうじゃねえか」
「たしかにこいつは銃を撃ち慣れてる感じだが、本番度胸はどうか分かんねえぞ。あとでぶっ倒れてたからな」
とヘンリーさんが笑う。
「うちで必要なのはシューティングレンジで上手く撃てることと整備の腕、それに銃の悪い所を指摘できる勘の良さだあな。ありゃ素人の思いつきで言ってるってよりこういう銃が欲しいってのがきっちり分かってる指摘だったぜ」
すいません、素人なんです。バレルの良し悪しとかそういうのは知りません。現代と比べての工作精度とか、あとの時代にどういう銃が出てきたか、くらいしか知らないんです。
「ほかにこうして欲しい、みたいなのはねえのか? そういうのをうちで作ってみて他と差別化すりゃ、それこそガンスミスとして名が売れるってもんだろう」
「素人の思いつきでよければ……。新しいシリンダーを入れたときに位置が決まるようなカバーがリボルバーについていると一発でピンが入って便利じゃないかと。
あとレバーアクションに一気に弾を装填するチューブみたいなのがあれば。イジェクターロッドみたいなスライドするノブをつけて一気に押しこむような」
「お前、いいアイデア持ってるじゃねえか!
よし、うちに来い!
一丁前のガンスミスにしてやる!」
「俺が先に……
もういいや。ベック、おまえんとこなら心配はねえだろ」
なんだか泥沼にはまっていってる気がする。




