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113話:準備2

 あれがクマなら散弾銃でシカ弾を数発撃ち込まないと殺せない。


「ベック師匠!! クマみたいなシルエットが見えます!!」


 叫んでから荷台の荷物から買い付けたポンプ式ショットガンを数丁取り出す。

 ついでにショットシェルが詰まった箱もいくつか出す。特殊弾の箱を一つ開け、中身をポケットにつっこむ。わざわざ仕入れた特別な弾だ。叱られたらその時はその時。大人しく受け入れよう。生き延びなければ叱られることすらできない。


 荷台の上で簡易コンロに火をつけ、手鍋にロウを放り込む。直火は危険だが今はそれどころではない。トリ弾の先端をナイフで切り、中身の鉛粒も手鍋にサラサラと流し込む。


「エミリー、ムラタ組!! 変更だ!! 75ヤード以上離れた場所には鉄条網はいらん!!

 その分、近くの鉄条網を増やせ!!」


 師匠の指示が飛ぶ。


「ジョニー!! 双眼鏡を貸せ!!」


 走って戻ってきた師匠に双眼鏡を渡し、作業を続ける。


「クソ。なんで南のモンスターがこっちに出ばってきてやがるんだ……。

 全員、ライフルかショットガンを装備!! 拳銃弾なんぞ効かねえぞ!!」


 師匠が経験からか武装の指示を出す。

 俺は車を始点に90度の範囲をロープで囲む。火にかけた手鍋の状態は、と。いいかんじに溶けている。手鍋を下ろし、コンロの火を止める。

 先ほど開封したトリ弾。厚紙のショットシェルに手鍋の中身をそそいでいく。軽く揺すって密度を上げる。スプーンでトリ弾散弾を追加して出来上がり。20発ほど作ってそのまま冷ます。インスタントなスラッグ弾だ。通常のトリ弾、3mm程度の鉛粒がつまった散弾では歯がたたない獣の皮でも十分に貫通する威力を発揮するはずだ。鉛とロウが肉に食い込んで食べられなくなるけれど。

 熊肉なら煮込み料理が美味いよな、と余計なことに思いをはせる。多少の現実逃避は許して欲しい。この世界で数ヶ月しか暮らしていない俺の意識は猛獣狩りに慣れていない。鹿を狩ることはあっても狩られる側には慣れてないんだ。


 クマらしきモンスターの先頭はもう半マイル、800メートルを切っている。ハンティングライフルなら交戦準備をする距離だ。と思い始めた矢先。発砲音が響く。誰かが緊張に耐えられなくなって撃ったのか。


「まだ当たらねえだろ、もっと引きつけてから撃て!!」


 師匠が吠え、発砲音が止まる。


「緊張しすぎるとよくねえぞ。もうちょい待て」


 うっす、と誰かの返事。


「いつもより数はいる(・・)けどハンティングは初めてじゃねえんだ、いつも通りでいけ」


 ムラタ組のサブリーダーが声をかける。

 それで緊張は多少ほどけたらしい。


「それともお前は初めてだったか? ジョニーに笑われるぞ? こないだの遠征の時だって初めてのジョニーはそんなにビビってなかったぞ!!」


 笑い声。いや、ビビりまくってましたけど。動かなきゃ死ぬと思ってたんで動いてただけで。今も緊張しまくってますけど。本当は逃げ出したいんですけど。逃げ切れないだろうから逃げないだけで。

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