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103話:T.A.R.

2018/06/02 一話からこの話まで改行位置などを改善しました。


「やぁやぁやぁ!! 元気に発明してるっ!?」


 ジョン・トヨダさんが現れた。


 いつも通りのハイテンションである。


 それにしても相変わらず突然現れるよな。今日は設計図やスケッチのたぐいではなく、やたらと大きな木箱を抱えている。


「いらっしゃい。なにか良いものでも持ってきてくれたのか?」


 とベック師匠。


「新製品でございます。とうとうできちゃいましたよ。ごめんジョニー。テーブルをあけて貰えるかな?」

「あ、気づきませんで。片付けました、大丈夫ですよ」


 テーブルにそっと木箱を降ろすジョン・トヨダ。ふう、と一息ついて。


「コーヒーをお出ししますね」


 と、ミリーが奥に走っていった。気が利くいい子だよ、本当に。成長してるんだなぁ。ちなみに揺れ具合はたゆんたゆんとかぷるんぷるんとかどたぷんほどではない。ふるふる、くらいだ。


 しっぽだよ?


 俺と師匠は新製品に興味津々でそれどころではない。


「はい、できました、軽機関銃。……それとそちらの要望を取り入れた、さらに軽いカービン型」

「「おお!!」」


 ベック師匠と俺の声が重なる。

 それにしても相変わらず仕事が速いな。


「さすがに二丁と予備部品を一気に運ぶと重たいねぇ。馬で運ばないと辛いよ」

「見せてください!!」


 はしゃぐ俺。


「まあまあ。焦らなくてもちゃんと見せるし、カービン型はジョニー君にプレゼントだ」

「いいんですか!?」

「いいのか? 試作とはいえ元手がかかってるだろうに」

「これからの主力商品になるでしょうから。先行投資みたいなもんです。使ってみて意見をくださいよ。実地試験をやれる人間がうちにはいないもんで」


 おもむろに木箱をあけて銃を取り出す。


 取り出した一丁は短く、アルミナムの名前で知られる軽金属でストックを仕立ててある。以前の提案を反映させた上で多少の改善案を盛り込んだのか。ライフルスタイルの木製ストックではなくプレスか曲げ加工で作られた、見た目にも軽そうなものに仕上がっている。グリップはストックと独立してピストルタイプだ。


 これ、B.A.R.のA2がいきなり完成したかと思ったが、予想の上を行く、H.C.A.R.になっちゃってるぞ。いきなり近代改修版B.A.R.カービンだ。丈夫な合成樹脂があればさらに軽量化ができるのではないだろうか。ナイロン樹脂とかガラス繊維とかそのあたりの材料さえあれば。


 もう一丁はスタンダードなB.A.R.スタイルになっている。


「カービン型のほうはギリギリ13ポンドを切って12.8ポンド強。標準版は本体だけで16.5ポンドくらいですね。キャリングハンドルや二脚、スリング、弾倉弾薬含まずの重さです」


 5.8kgのカービン版と7.5kgのスタンダード版か。分隊支援火器が出てきちゃったぞ。


 それにカービンと言っても前世の現代版フルサイズライフルと同じくらい。16インチバレルを装備して全長で一メートルをギリギリ切る程度。据え置きや車に積む機銃なら十分使えるサイズなんだろうけれど。スタンダード版はそれよりさらに長い24インチバレル。全長で1.2メートルを超える。7.5kgは担いで走り回ると辛い重さだ。


「ところで、これの名前は決まってるんですか?」

「まだだね。拳銃のトヨダ・ポケットディフェンダーと(つい)になるようにトヨダ・ディフェンダーとでも呼ぼうか?」

防衛者(ディフェンダー)にしちゃ物騒な火力だがな」


 と師匠。ベック師匠は100年前のモンスター防衛戦争に参加したのだろうか? その時にこれがあったら大活躍間違いなしだ。


「この銃は言われたとおりに小改良を加えました。カービン型は16インチでマズルブレーキ付き。スリングで吊って持ち歩けるようになってます。軽量化に苦心しましたよ」

「ピストルグリップにしたのは?」

「ジョニー君がうちのポケットディフェンダーをカービン化してたでしょ。ピストルグリップのほうが好みなのかなと思いましてね」


 好みというか、ピストルからカービンに改造したからそうなっただけだ。グリップのほうが構えた時に手首が楽、というのは個人の癖だろうか。好みと言われれば好みなのかもしれないが。


「スリングで吊って弾幕を張るならピストルグリップのほうが都合はいいだろうな」

「標準版のほうは木製のライフルグリップにしてあります。据え置きで使うでしょうから軽さには拘らず、安く短時間で仕上げられるようにしました」

「木製のほうが短時間でできるのか。人手が足りなきゃ家具職人にでも任せられるから量産前提なら都合がいいのかぁ」


 と師匠。ベック師匠だと金属加工が専門の小売り、ガンスミスなので量産時のことは念頭になかったようだ。このあたりは鍛冶ギルド長のほうが得意そうだ。


 フォアグリップは大きめだったので、後から削って手に馴染む形にしよう。ついでにアルミ板に穴をあけた遮熱板をくっつけようか。連射して銃身から陽炎が立ち上る中、狙うのは大変だからね。狙撃に使うつもりはないけれど、あって困るものでもないし大して重量増にもならない。


 垂直のフォアグリップをつけてもいいかも。下から握って支えるより縦棒を握った状態のほうが左右に振り回しやすそうだし。伸縮できるように二重の金属パイプと固定ネジにしたら非常用の一脚になるかもしれない。


 バレルも軽量化のためにフルートと呼ばれる溝を掘るか。すこしでも軽くして取り回しを良くしたい。


 などと妄想を膨らませていると。


「あと、予備部品一式、バレルもあるよ。あと20連のマガジンも複数用意してあるからそれもどうぞ」


 と、こっちをみて苦笑しつつも予備部品一式を提供してくれた。


「ありがとうございます。そして、師匠!!」

「なんだ?」

「ロングマガジンの制作をお願いします!!」

「お、おう。まあ欲しがるとは思ってた」


 これでランボーかなにかのように連射しまくれる環境が整った。

 考えが表情に出ていたのか、師匠が一言。


「趣味で撃つ分の弾代は自分で出せよ。卸値で分けてやるから」


 ライフル弾ってそこそこいいお値段するんですよね……。


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